第3章
1
近付いてくるにつれて、封魔の状態が見えてくる。
(まただ……)
彼の状態を見て、神蘭は内心呟く。
その姿は昨日の朝、見たのと同じように服は紅く染まっている。
神蘭がそれを見たのは二度目だったが、初めて見た光鳳と光蘭は少し慌てたようだった。
「ちょっ、大丈夫!?」
「……何がだ?」
声を掛けた光蘭に封魔がそう返す。
「何がって、怪我してるんじゃないの!?」
「怪我?……ああ、これか。全部俺のじゃない」
無表情のまま抑揚のない声で言う封魔に、それまで黙っていた光鳳が近付いた。
彼はそのまま封魔の腕を掴み、捻じり上げる。
「え、ええ?」
「ちょっと、光鳳!」
「……これは痛くないのか?」
思わず声を上げた神蘭と光蘭を気にせず、光鳳は問い掛ける。
少なくとも捻じり上げられている分の痛みはあるはずなのに、封魔の表情に変化はなかった。
「…………」
それを見ていた光鳳は黙ったまま手を離す。
すると封魔は彼を一瞥してから、本部の中に入っていってしまった。
「……あいつ」
その姿が見えなくなり、光鳳は呟くと踵を返し本部の中に入って行こうとする。
それに光蘭が慌てて声を上げた。
「ちょっと、何処に行くの!?もうすぐ、訓練の時間よ」
「……急用が出来た。悪いが間に合わなかったら、先に始めていてくれ」
そう言い、光鳳も本部へと戻っていってしまう。
それに溜め息をついて光蘭は神蘭を見た。
「仕方ないわ。とにかく、訓練場に行きましょう」
「……はい」
封魔と話をするつもりだったが、今は諦めるしかないと思い神蘭は光蘭と訓練場に向かうことにした。
2
「へぇ、なかなか筋がいいみたいね」
訓練場に着いたものの、まだ訓練開始まで少し時間があった為、光蘭に相手をしてもらう。
その際中、神蘭の太刀筋を見て光蘭が言った。
「本当ですか!?」
「ええ、ついこの間まで訓練生だった事を考えれば余計にね。……これから経験を積んでいけば、もっと強くなれるはずよ」
微笑を浮かべる光蘭に神蘭は嬉しくなる。
元とはいえ闘神だった人物に認めてもらえることはとても嬉しかった。
「おはよう、神蘭」
「随分早いな。一体、何時に起きたんだよ?」
その時そう声が聞こえてきて、鈴麗と龍牙、白夜、白鬼が近付いてきた。
「えっと、二時間は前かな」
「はぁ?何でそんなに早く起きたんだよ?」
「封魔、さんと話をしようと思ってたんだけどね」
「話せなかったのか?」
「…………」
白夜の言葉に、神蘭は封魔の様子を思い出す。
今朝会った封魔は昨日の朝会った時よりも様子がおかしく、話をするどころではなかった。
だが、その時感じた違和感を今話していいのかわからなかった。
「神蘭、どうかしたの?」
「えっと……」
何も言わない神蘭を疑問に思ったのか、鈴麗が声を掛けてくる。
その時、不意に光蘭に軽く手を引かれた。
(えっ?)
「ほら、そろそろ他の兵達も集まってくるから、準備してきなさい。……あなたはこっちに来て」
鈴麗達を促した後、光蘭に訓練場の隅の方へ連れて行かれる。
兵達から距離を置いたところで、光蘭は神蘭の手を離し、向き直った。
「今朝の封魔のことだけど」
「……はい」
「今はまだ他の者には話さないで。勿論、あなたと仲の良いあの四人や、封魔の部下二人にも」
「えっ……?」
「今朝の封魔の様子は確かにおかしかった。……でも今はそれを伝えて、余計な混乱を与えるのは得策じゃないわ。彼に何があったのかは光鳳が調べるはず。……今は任せておきましょう」
「……はい」
そう言った光蘭に神蘭は頷くしかなかった。
近付いてくるにつれて、封魔の状態が見えてくる。
(まただ……)
彼の状態を見て、神蘭は内心呟く。
その姿は昨日の朝、見たのと同じように服は紅く染まっている。
神蘭がそれを見たのは二度目だったが、初めて見た光鳳と光蘭は少し慌てたようだった。
「ちょっ、大丈夫!?」
「……何がだ?」
声を掛けた光蘭に封魔がそう返す。
「何がって、怪我してるんじゃないの!?」
「怪我?……ああ、これか。全部俺のじゃない」
無表情のまま抑揚のない声で言う封魔に、それまで黙っていた光鳳が近付いた。
彼はそのまま封魔の腕を掴み、捻じり上げる。
「え、ええ?」
「ちょっと、光鳳!」
「……これは痛くないのか?」
思わず声を上げた神蘭と光蘭を気にせず、光鳳は問い掛ける。
少なくとも捻じり上げられている分の痛みはあるはずなのに、封魔の表情に変化はなかった。
「…………」
それを見ていた光鳳は黙ったまま手を離す。
すると封魔は彼を一瞥してから、本部の中に入っていってしまった。
「……あいつ」
その姿が見えなくなり、光鳳は呟くと踵を返し本部の中に入って行こうとする。
それに光蘭が慌てて声を上げた。
「ちょっと、何処に行くの!?もうすぐ、訓練の時間よ」
「……急用が出来た。悪いが間に合わなかったら、先に始めていてくれ」
そう言い、光鳳も本部へと戻っていってしまう。
それに溜め息をついて光蘭は神蘭を見た。
「仕方ないわ。とにかく、訓練場に行きましょう」
「……はい」
封魔と話をするつもりだったが、今は諦めるしかないと思い神蘭は光蘭と訓練場に向かうことにした。
2
「へぇ、なかなか筋がいいみたいね」
訓練場に着いたものの、まだ訓練開始まで少し時間があった為、光蘭に相手をしてもらう。
その際中、神蘭の太刀筋を見て光蘭が言った。
「本当ですか!?」
「ええ、ついこの間まで訓練生だった事を考えれば余計にね。……これから経験を積んでいけば、もっと強くなれるはずよ」
微笑を浮かべる光蘭に神蘭は嬉しくなる。
元とはいえ闘神だった人物に認めてもらえることはとても嬉しかった。
「おはよう、神蘭」
「随分早いな。一体、何時に起きたんだよ?」
その時そう声が聞こえてきて、鈴麗と龍牙、白夜、白鬼が近付いてきた。
「えっと、二時間は前かな」
「はぁ?何でそんなに早く起きたんだよ?」
「封魔、さんと話をしようと思ってたんだけどね」
「話せなかったのか?」
「…………」
白夜の言葉に、神蘭は封魔の様子を思い出す。
今朝会った封魔は昨日の朝会った時よりも様子がおかしく、話をするどころではなかった。
だが、その時感じた違和感を今話していいのかわからなかった。
「神蘭、どうかしたの?」
「えっと……」
何も言わない神蘭を疑問に思ったのか、鈴麗が声を掛けてくる。
その時、不意に光蘭に軽く手を引かれた。
(えっ?)
「ほら、そろそろ他の兵達も集まってくるから、準備してきなさい。……あなたはこっちに来て」
鈴麗達を促した後、光蘭に訓練場の隅の方へ連れて行かれる。
兵達から距離を置いたところで、光蘭は神蘭の手を離し、向き直った。
「今朝の封魔のことだけど」
「……はい」
「今はまだ他の者には話さないで。勿論、あなたと仲の良いあの四人や、封魔の部下二人にも」
「えっ……?」
「今朝の封魔の様子は確かにおかしかった。……でも今はそれを伝えて、余計な混乱を与えるのは得策じゃないわ。彼に何があったのかは光鳳が調べるはず。……今は任せておきましょう」
「……はい」
そう言った光蘭に神蘭は頷くしかなかった。