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其々の路

1
軍本部に来てから数十分後、花音達は元の世界へ戻ることが出来る門まで神蘭達と共に来ていた。
神蘭が送ってくれると言ってくれた為、見送りに来てくれていた封魔達に向き直る。
「今までお世話になりました」
「いや、こっちもなんだかんだで助けられることもあったからな。お互い様だ」
頭を下げて言った花音に、封魔がそう返してくる。
「先に帰った皆にもよろしくね」
「色々と落ち着いたら、そっちの世界に顔を出すから」
鈴麗、聖羅に言われて頷く。
「さぁ、そろそろ行こう」
門の準備が出来たらしく、神蘭に声を掛けられる。
それに花音はもう一度封魔達を見て、軽く頭を下げた後、門へと入った。
門を潜って数秒後、花音達は何処かの森の中にいた。
「……ここは、雷の国の外れみたいだな」
「ああ。雷の国に寄っていくようなことを言っていたから、此処に繋がせてもらった」
そう言った神蘭がすぐに踵を返す。
「もう行っちゃうんですか?」
「ああ。色々片付けなければならないこともあるからな。鈴麗も言ったが、お互いが落ち着いた頃、また来るよ」
「そうですね。その時はもっとゆっくり色々話ができたらいいですね」
「ああ。次はゆっくり出来ることを願ってるよ」
そう言うと、神蘭は門の中に消えていき、門も消えた。
「姉上、俺たちもそろそろ……」
「そうだね。雷牙君のところに顔を出さないと」
光輝に言われ、花音も歩き出した。

雷の国、城内。
雷牙や王、王妃に挨拶をした後、花音達は雷牙と共に、蒼牙達の待つ部屋へ向かっていた。
「っと、そうだ。お前達に伝えておくことがあったんだ」
歩きながら何かを思い出したらしい雷牙が言う。
「何だよ、伝えることって」
「まだ詳しい事は決まっていないけど、近々空夜さんの王位継承式を行うらしい。王の位をあまり不在には出来ないしな」
「空夜さんが王に?」
「ああ。風夜がいなくなった今、正式に継承権を持っているのは一人だけだからな」
「…………」
それを聞きながら別れの時、国のことを託していた風夜のことを思い出す。
(風夜が知ったら、どう思うかな?)
花音がそう思っていると、雷牙が立ち止まった。
「さぁ、ここだ」
そう言い、雷牙が扉を開けると、中にいた蒼牙、紅牙、黄牙、朔耶の姿が見えた。
「あ、やっと戻ってきたー」
「待ちくたびれたぞ」
言いながら、紅牙と蒼牙が駆け寄ってくる。
「あはは、ごめんね。遅くなって。雷牙君もありがとう」
「いや、黄牙と朔耶には手伝ってもらったりもしたからな。俺の方も助かった」
そう言って、雷牙は笑う。
そして、花音達は夜になっていたこともあり、雷の城に一晩泊まってから光の街に戻ることにした。

次の日、花音達は雷牙に別れを告げ、光の街に向かう為、飛竜に乗っていた。
「あ、見えてきた」
光輝の背後に乗っていた花音は、段々と近付いていく街に声を上げる。
風夜の暴走もあって、彼と共に仲間達から離れた後、合成獣の襲撃もあり、まともに街に戻ったことはない。
そのせいか、やっと戻れるのかと思うと、嬉しさが込み上げてきた。
「花音、光輝」
その時、二人の飛竜と並ぶように飛んでいる飛竜の上から夜天が声を掛けてきた。
「俺も此処で別れる。ただでさえ他の奴等より帰りが遅くなってるからな。早く報告しないと」
「……そっか。そうだよね」
「まぁ、俺とは何時でも会えるだろ。同じ国なんだしな」
思ったより寂しげな声になってしまっていたのか、呟いた花音に夜天がそう返して小さく笑う。
そして、彼は光輝を見た。
「じゃ、そろそろ俺は行くよ。何かあれば、連絡してくれ」
「ああ」
「じゃあな」
光輝が頷くと夜天はそう言い、飛竜の方向を変えて行ってしまった。

「花音様!光輝様!」
街の広場に飛竜を着地させると、それに気付いた人々が近付いてくる。
「お二人共、無事だったんですね。よかった」
「ああ。とりあえず、戦いは終わったからな。これからは街にいる。あと」
そこまで言った光輝が振り返り、背後にいる蒼牙達を見る。
「この四人もこの街に住むことになった。俺の屋敷で暮らすことになるが、街の中で会うこともあるだろう。仲良くしてやってくれ」
光輝が言ったのに合わせて、黄牙と朔耶が軽く頭を下げる。
そんな彼等を見た後、街の人々の様子を伺うと突然のことに戸惑っている様子はあったが、彼等四人を拒絶する様子はなく、花音は安堵した。
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