其々の路
1
黒姫との戦いから数日後、花音達は反勢力の街にいた。
傷も癒え、疲れも回復した花音は街中を散策しながら、辺りの様子を見る。
街から人々が離れていた期間もあり、少し荒れていたが、今は少しずつ元に戻りつつあるようだった。
(本当にもう終わったんだよね?)
幾つか気になることはあるが、取り敢えず一度は落ち着けるだろうと思っていると、背後に誰かが来た気配がした。
「花音」
名を呼ばれて振り返ると、風夜の姿があり、彼はそのまま花音の横に来た。
「どうしたの?」
「そろそろ傷も癒えたし、疲れもとれたからな。これからのことで全員が集まってるんだよ」
「えっ?じゃあ、もしかして私だけいなかったの?」
「ああ」
頷かれて、自分を探しに来てくれたのだろう風夜に申し訳なくなる。
そして、急いで戻ろうと踵を返そうとしたが、何故か呼びに来た筈の風夜は急ぐ様子も見せず、花音と同じように街中を見回していた。
「風夜?」
「こうして見てると、何の変わりもないだろ?普通の人間とも、神族達とも」
「えっ?」
不意に言われ驚いた様に彼を見るが、花音は直ぐに頷く。
「そうだね。ただ生活している様子だけ見ていれば、何も変わらない。私達と一緒だよ」
「俺も初めて来た時はそう思った。……此処に来て、魔族が悪い奴だけじゃないってこともわかった。……神蘭達も紫狼達も古くからの敵対で頑なな所はあるが、此れから時間を掛けていけば、いつかは魔族と神族が分かり合える時が来る筈だ」
そこまで言って、風夜は花音を見る。
「……だから、俺は此処に残ろうと思う。俺一人で何が出来るかわからないが、もう魔族と神族の争いが起きないように、少しでもお互いが分かり合えるよう働きかけていこうと思ってる」
「そう……」
彼が選んだ道を否定はしない。
だが、別れを思うと寂しかった。
2
少しして紫狼の屋敷へと戻ってくると、花音と風夜以外の全員が待っていた。
「やっと来たか。遅いぞ。なかなか見つからなかったのか?」
「悪い、悪い」
待ちくたびれたような風牙に、風夜が苦笑しながらそう返す。
「これて集まったわね。それでこれからのことなんだけど」
そう切り出したのは神麗で、彼女は花音と光輝、夜天を見た。
「私達は勿論神界に戻らないといけないんだけど、あなた達三人には付いてきてほしいの。【例の件】のことでね」
神麗の言葉に花音は、光輝、夜天と顔を見合わせた。
「簡単な検査をしてから調整に入るから、神界に暫く滞在してもらわないといけないんだけど」
「なら、俺たちは先に元の世界に戻ってるか」
「そうね。やらなければ、ならないことも沢山あるし」
雷牙の言葉に、水蓮が頷く。
「俺たちは一度、【向こうの世界】へ行ってくる。取り敢えず、終わったことを知らせておかないとな」
「花音ちゃんのお父さん、お母さんにも話しておくよ。心配してると思うし」
「うん。お願い」
凍矢と美咲にそう返して、花音は蒼牙、紅牙、黄牙、朔耶が複雑そうにしているのに気付いた。
「俺たち、どうしよう?」
「行く場所ないよ……」
「どちらにしても、半端者だしな」
「俺も正式には魔族じゃないからな」
花音と風夜に付いて、別世界から来た四人には自分達の世界に帰らない限り、居場所はない。
だが、蒼牙と紅牙の言葉から戻るつもりはないのだろうと思い、花音は四人に近付いた。
「だったら、四人共光の街においでよ」
「「「えっ?」」」
「いいのか?」
「うん。いいよね、光輝」
「言うと思ったよ」
「でも、俺たちは一度神界へ行くんだろ?その間はどうするんだ?」
肩を竦める光輝の横にいた夜天が言う。
「それなら、その間は俺の城で預かるよ」
「いいの?」
「ああ。戻って来たら、寄っていってもらえばいいさ」
「ありがとう、雷牙くん。ね、そうしよう?」
そう言って、蒼牙達を見ると、四人は少し戸惑いがちに頷いた。
黒姫との戦いから数日後、花音達は反勢力の街にいた。
傷も癒え、疲れも回復した花音は街中を散策しながら、辺りの様子を見る。
街から人々が離れていた期間もあり、少し荒れていたが、今は少しずつ元に戻りつつあるようだった。
(本当にもう終わったんだよね?)
幾つか気になることはあるが、取り敢えず一度は落ち着けるだろうと思っていると、背後に誰かが来た気配がした。
「花音」
名を呼ばれて振り返ると、風夜の姿があり、彼はそのまま花音の横に来た。
「どうしたの?」
「そろそろ傷も癒えたし、疲れもとれたからな。これからのことで全員が集まってるんだよ」
「えっ?じゃあ、もしかして私だけいなかったの?」
「ああ」
頷かれて、自分を探しに来てくれたのだろう風夜に申し訳なくなる。
そして、急いで戻ろうと踵を返そうとしたが、何故か呼びに来た筈の風夜は急ぐ様子も見せず、花音と同じように街中を見回していた。
「風夜?」
「こうして見てると、何の変わりもないだろ?普通の人間とも、神族達とも」
「えっ?」
不意に言われ驚いた様に彼を見るが、花音は直ぐに頷く。
「そうだね。ただ生活している様子だけ見ていれば、何も変わらない。私達と一緒だよ」
「俺も初めて来た時はそう思った。……此処に来て、魔族が悪い奴だけじゃないってこともわかった。……神蘭達も紫狼達も古くからの敵対で頑なな所はあるが、此れから時間を掛けていけば、いつかは魔族と神族が分かり合える時が来る筈だ」
そこまで言って、風夜は花音を見る。
「……だから、俺は此処に残ろうと思う。俺一人で何が出来るかわからないが、もう魔族と神族の争いが起きないように、少しでもお互いが分かり合えるよう働きかけていこうと思ってる」
「そう……」
彼が選んだ道を否定はしない。
だが、別れを思うと寂しかった。
2
少しして紫狼の屋敷へと戻ってくると、花音と風夜以外の全員が待っていた。
「やっと来たか。遅いぞ。なかなか見つからなかったのか?」
「悪い、悪い」
待ちくたびれたような風牙に、風夜が苦笑しながらそう返す。
「これて集まったわね。それでこれからのことなんだけど」
そう切り出したのは神麗で、彼女は花音と光輝、夜天を見た。
「私達は勿論神界に戻らないといけないんだけど、あなた達三人には付いてきてほしいの。【例の件】のことでね」
神麗の言葉に花音は、光輝、夜天と顔を見合わせた。
「簡単な検査をしてから調整に入るから、神界に暫く滞在してもらわないといけないんだけど」
「なら、俺たちは先に元の世界に戻ってるか」
「そうね。やらなければ、ならないことも沢山あるし」
雷牙の言葉に、水蓮が頷く。
「俺たちは一度、【向こうの世界】へ行ってくる。取り敢えず、終わったことを知らせておかないとな」
「花音ちゃんのお父さん、お母さんにも話しておくよ。心配してると思うし」
「うん。お願い」
凍矢と美咲にそう返して、花音は蒼牙、紅牙、黄牙、朔耶が複雑そうにしているのに気付いた。
「俺たち、どうしよう?」
「行く場所ないよ……」
「どちらにしても、半端者だしな」
「俺も正式には魔族じゃないからな」
花音と風夜に付いて、別世界から来た四人には自分達の世界に帰らない限り、居場所はない。
だが、蒼牙と紅牙の言葉から戻るつもりはないのだろうと思い、花音は四人に近付いた。
「だったら、四人共光の街においでよ」
「「「えっ?」」」
「いいのか?」
「うん。いいよね、光輝」
「言うと思ったよ」
「でも、俺たちは一度神界へ行くんだろ?その間はどうするんだ?」
肩を竦める光輝の横にいた夜天が言う。
「それなら、その間は俺の城で預かるよ」
「いいの?」
「ああ。戻って来たら、寄っていってもらえばいいさ」
「ありがとう、雷牙くん。ね、そうしよう?」
そう言って、蒼牙達を見ると、四人は少し戸惑いがちに頷いた。