決戦の時
1
刹那の協力を得て、捕まっていた神蘭、封魔、聖羅を助け出すことに成功して花音はほっと息をつく。
助けた三人は電流を浴び続けていたせいか、少し辛そうには見える。
だが、美咲と星華の治療を受け、直ぐに態勢を立て直す。
「もう大丈夫か?」
「「ああ」」
龍牙に聞かれた神蘭と封魔が頷く。
「聖羅様も大丈夫ですか?」
「ええ。二人共、ありがとう」
その横から鈴麗に問いかけられた聖羅が、治療した二人に礼を言い、その後黒姫を見上げた。
「それにしても、一体あの姿は?それに今の姿になってから、少し力の性質も変わったような気がするわ」
「…….そうですね。今の力の質はまるで……」
言いながら、聖羅と神蘭が意味有り気な視線を交わし合った。
「私の記憶が正しければ、この力は嘗ての《魔神族》に似ているわ。そして、もしその予想が正しければ、私達の力はあまり通用しない。……魔族である貴方達の力もね」
そう言った聖羅が風夜達を見た。
「って、それじゃあどうするんだ?」
と夜天。
「……攻撃は貴方達に任せるしかないわ」
「だろうな。それを考えたら、火焔達も随分良いタイミングで合流してきたな」
「おいおい、まじかよ」
聖羅と風夜の言葉に、雷牙が顔を引き攣らせる。
「まあ、冗談を言っているような状況でもないし、それが妥当なところでしょうね」
「心配しなくても、宝珠の力を上手く使えば、十分通用するはずよ」
付け加えるように言った沙羅と神麗の言葉に、雷牙だけでなく火焔達の表情も引き攣った。
「何も私達が何もしない訳じゃない。お前達が攻撃の為、力を溜めている間、囮になって時間を稼ぐ」
「……お前達もそれでいいな?」
神蘭の言葉を受け、風夜が風牙、沙羅、紫狼、黄牙、梨亜、夜月に視線を向ける。
六人が頷いたのを確認して、彼は神蘭達に向けて大きく頷く。
「よし、行くぞ!」
「花音、夜天、光輝!フォローは任せた!」
そう言って、先に地を蹴っていた神蘭達を風夜が追っていく。
「フォローって、あれを如何にかしろってか?」
「そういうことだろうな」
いつの間にかまた数が増えていた触手を見て、光輝、夜天が言って花音が頷いた時、紅牙、蒼牙、朔耶、風華、紫影、紫姫が横に並んできた。
「僕達もこっちを手伝うよ!」
「俺と蒼牙は宝珠を持ってないしな」
それぞれ手を鬼と龍のものに変形させている蒼牙と紅牙が言う。
「宝珠の方は兄上に任せてきた」
剣を抜き放った紫影が言い、風華と紫姫が視線を向けてくる。
「花音ちゃん、私も頑張るからね!」
「さぁ、来るよ!!」
紫姫が言ったと同時に触手の何本かが向かって来た。
2
風夜達が囮になって、黒姫の相手をしている中、花音は彼等を掻い潜って襲って来る触手に向けて、立て続けに矢を放っていく。
花音の近くには風華、紅牙、蒼牙がいて、前者は風の刃で触手を切り裂き、後者の二人は変形させた腕で薙ぎ払っている。
少し離れたところに夜天や光輝達はいて、彼等は花音達以上の触手を捌いてくれている。
花音達の背後では雷牙達の力が高まっているのがわかったが、まだ少し時間が掛かりそうだ。
だが、時間が掛かれば掛かる程、囮になってくれている風夜達や、花音達以上に触手を捌いてくれている夜天達の負担が大きくなるだろう。
それに花音自身、いつまで力が続くかわからないというのが本音だった。
(みんな、急いで!)
内心で呟きながら、雷属性の矢を連射する。
「……そろそろ大丈夫そうよ」
能力的に攻撃力が無い為、タイミングを測ってくれていたらしい星夢のそんな声が聞こえてきたのは、少し経ってからのことだった。
花音が確認しようと振り返ると、意識を集中させている雷牙達の宝珠の光が今までにない程強まっている。
それを見て、視線を戻すと、素早く火、水、風、氷の珠を弓にはめ込んだ。
「風夜!神蘭さん!」
「「!!」」
弓を構え叫べば、何を言おうとしたのか分かったらしい二人が其々の近くにいた者達に目配せして、黒姫から距離を取ろうとする。
花音は彼等が離れる隙をつくるのと、雷牙達から気を逸らせる為に、様々な属性の矢を放つ。
そして、それに気を取られた黒姫から風夜達が十分に距離をとったのと同時に、最大まで高まっていた雷牙達の力が巨大化していたその身体を包み込んだ。
3
「……っ、この私が、こんな……」
ダメージを受け、元の姿に戻ったのだろう黒姫の声が聞こえてくる。
その姿はもうぼろぼろで、反撃する力は残っていないように見えた。
「さてと、これでもう終わりよ」
倒れた状態で顔だけやっと上げているといった様子の黒姫の元へ聖羅が近づいて行く。
「最期に何か言い残すことは?」
聖羅がそう言った時、黒姫は何がおかしいのか、「ふふ」と笑った。
「此処で私を倒しても、何も終わりはしないわ。寧ろ、これからよ。…….すべてはね」
「それはどういう……」
そう問い掛けた聖羅に隙が出来る。
その隙に黒姫が小さな錠剤のような物を飲み込んだ。
「あは、あははは……、私は誰にも殺されない。私の命は……、私だけのものよ。……あはは、あははははは……」
狂ったように笑う黒姫の声が段々と小さくなっていく。
その身体が動かなくなり、やがて消滅したのを見て、聖羅が溜息をついて振り返った。
「……何だか後味が悪い気もするけど、とりあえず終わったわね」
「そうですね」
聖羅と神蘭の声を聞きながら、花音が周りを見れば、風華と紅牙、蒼牙が座り込んでいた。
「大丈夫?」
「もう駄目……」
「限界だよ」
「早く、ゆっくり休みたいよぉ」
声を掛けると口々に言った三人に思わず苦笑する。
「ふふ、三人も頑張ってくれたもんね」
「それなら、そろそろ戻るか。黒姫がいなくなった今、奴がつくった空間がいつまで保つかもわからないしな」
「そうだね」
風夜に頷いて、刹那を見る。
「刹那くん、いいかな?」
「ああ。言われるのはわかってたからな。その分の余力は残してある」
そう言った刹那の力が高まり、花音達の身体を包み込んだ。
刹那の協力を得て、捕まっていた神蘭、封魔、聖羅を助け出すことに成功して花音はほっと息をつく。
助けた三人は電流を浴び続けていたせいか、少し辛そうには見える。
だが、美咲と星華の治療を受け、直ぐに態勢を立て直す。
「もう大丈夫か?」
「「ああ」」
龍牙に聞かれた神蘭と封魔が頷く。
「聖羅様も大丈夫ですか?」
「ええ。二人共、ありがとう」
その横から鈴麗に問いかけられた聖羅が、治療した二人に礼を言い、その後黒姫を見上げた。
「それにしても、一体あの姿は?それに今の姿になってから、少し力の性質も変わったような気がするわ」
「…….そうですね。今の力の質はまるで……」
言いながら、聖羅と神蘭が意味有り気な視線を交わし合った。
「私の記憶が正しければ、この力は嘗ての《魔神族》に似ているわ。そして、もしその予想が正しければ、私達の力はあまり通用しない。……魔族である貴方達の力もね」
そう言った聖羅が風夜達を見た。
「って、それじゃあどうするんだ?」
と夜天。
「……攻撃は貴方達に任せるしかないわ」
「だろうな。それを考えたら、火焔達も随分良いタイミングで合流してきたな」
「おいおい、まじかよ」
聖羅と風夜の言葉に、雷牙が顔を引き攣らせる。
「まあ、冗談を言っているような状況でもないし、それが妥当なところでしょうね」
「心配しなくても、宝珠の力を上手く使えば、十分通用するはずよ」
付け加えるように言った沙羅と神麗の言葉に、雷牙だけでなく火焔達の表情も引き攣った。
「何も私達が何もしない訳じゃない。お前達が攻撃の為、力を溜めている間、囮になって時間を稼ぐ」
「……お前達もそれでいいな?」
神蘭の言葉を受け、風夜が風牙、沙羅、紫狼、黄牙、梨亜、夜月に視線を向ける。
六人が頷いたのを確認して、彼は神蘭達に向けて大きく頷く。
「よし、行くぞ!」
「花音、夜天、光輝!フォローは任せた!」
そう言って、先に地を蹴っていた神蘭達を風夜が追っていく。
「フォローって、あれを如何にかしろってか?」
「そういうことだろうな」
いつの間にかまた数が増えていた触手を見て、光輝、夜天が言って花音が頷いた時、紅牙、蒼牙、朔耶、風華、紫影、紫姫が横に並んできた。
「僕達もこっちを手伝うよ!」
「俺と蒼牙は宝珠を持ってないしな」
それぞれ手を鬼と龍のものに変形させている蒼牙と紅牙が言う。
「宝珠の方は兄上に任せてきた」
剣を抜き放った紫影が言い、風華と紫姫が視線を向けてくる。
「花音ちゃん、私も頑張るからね!」
「さぁ、来るよ!!」
紫姫が言ったと同時に触手の何本かが向かって来た。
2
風夜達が囮になって、黒姫の相手をしている中、花音は彼等を掻い潜って襲って来る触手に向けて、立て続けに矢を放っていく。
花音の近くには風華、紅牙、蒼牙がいて、前者は風の刃で触手を切り裂き、後者の二人は変形させた腕で薙ぎ払っている。
少し離れたところに夜天や光輝達はいて、彼等は花音達以上の触手を捌いてくれている。
花音達の背後では雷牙達の力が高まっているのがわかったが、まだ少し時間が掛かりそうだ。
だが、時間が掛かれば掛かる程、囮になってくれている風夜達や、花音達以上に触手を捌いてくれている夜天達の負担が大きくなるだろう。
それに花音自身、いつまで力が続くかわからないというのが本音だった。
(みんな、急いで!)
内心で呟きながら、雷属性の矢を連射する。
「……そろそろ大丈夫そうよ」
能力的に攻撃力が無い為、タイミングを測ってくれていたらしい星夢のそんな声が聞こえてきたのは、少し経ってからのことだった。
花音が確認しようと振り返ると、意識を集中させている雷牙達の宝珠の光が今までにない程強まっている。
それを見て、視線を戻すと、素早く火、水、風、氷の珠を弓にはめ込んだ。
「風夜!神蘭さん!」
「「!!」」
弓を構え叫べば、何を言おうとしたのか分かったらしい二人が其々の近くにいた者達に目配せして、黒姫から距離を取ろうとする。
花音は彼等が離れる隙をつくるのと、雷牙達から気を逸らせる為に、様々な属性の矢を放つ。
そして、それに気を取られた黒姫から風夜達が十分に距離をとったのと同時に、最大まで高まっていた雷牙達の力が巨大化していたその身体を包み込んだ。
3
「……っ、この私が、こんな……」
ダメージを受け、元の姿に戻ったのだろう黒姫の声が聞こえてくる。
その姿はもうぼろぼろで、反撃する力は残っていないように見えた。
「さてと、これでもう終わりよ」
倒れた状態で顔だけやっと上げているといった様子の黒姫の元へ聖羅が近づいて行く。
「最期に何か言い残すことは?」
聖羅がそう言った時、黒姫は何がおかしいのか、「ふふ」と笑った。
「此処で私を倒しても、何も終わりはしないわ。寧ろ、これからよ。…….すべてはね」
「それはどういう……」
そう問い掛けた聖羅に隙が出来る。
その隙に黒姫が小さな錠剤のような物を飲み込んだ。
「あは、あははは……、私は誰にも殺されない。私の命は……、私だけのものよ。……あはは、あははははは……」
狂ったように笑う黒姫の声が段々と小さくなっていく。
その身体が動かなくなり、やがて消滅したのを見て、聖羅が溜息をついて振り返った。
「……何だか後味が悪い気もするけど、とりあえず終わったわね」
「そうですね」
聖羅と神蘭の声を聞きながら、花音が周りを見れば、風華と紅牙、蒼牙が座り込んでいた。
「大丈夫?」
「もう駄目……」
「限界だよ」
「早く、ゆっくり休みたいよぉ」
声を掛けると口々に言った三人に思わず苦笑する。
「ふふ、三人も頑張ってくれたもんね」
「それなら、そろそろ戻るか。黒姫がいなくなった今、奴がつくった空間がいつまで保つかもわからないしな」
「そうだね」
風夜に頷いて、刹那を見る。
「刹那くん、いいかな?」
「ああ。言われるのはわかってたからな。その分の余力は残してある」
そう言った刹那の力が高まり、花音達の身体を包み込んだ。