このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

決戦の時

1
「ったぁ……」
地に叩きつけられ、花音はゆっくり起き上がると辺りを見回す。
そこに先程合流したばかりの三人の姿はない。
(ま、また一人……?)
そう思いながら、改めて辺りを見回す。
辺りには霧が立ち込めていて視界が悪く、何だか空気も重い。
それでも誰かいないかと花音は、警戒しながら歩き出す。
そして少し歩いたところで、不意に誰かに腕を掴まれた。
「やっ……!」
反射的にその手を払い、両手に力を込める。
「待てっ、俺だ!」
両手の光球を放とうとした所で、聞こえてきた声に力を四散させる。
「封魔さん?」
「ああ」
さっきは咄嗟に攻撃しようとしてしまったが、相手をよく見れば、確かに封魔だった。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、俺の方こそ驚かせたみたいですまない。それより、一人か?」
「うん。封魔さんも?」
「ああ。後の二人も此処にいるのは間違いないだ
ろうけど」
「この霧だと、なかなか見つからないかも」
「かといって、此処にいる訳にもいかないしな」
そう言って、封魔は花音の腕を引いて歩き出す。
「えっと、あの……」
「悪いが、このまま行くぞ。後の二人も、お前のことを一番気にしてるだろうからな。一度会ったのにまた逸れたりしたら、文句を言われそうだ」
「あははっ……」
その時の事を想像したのか、苦虫を潰したような表情をした封魔に花音は苦笑した。
2
封魔と合流し、濃い霧の中を進んで行く中、花音は強大な魔力を感じ取っていた。
それは段々と近付いて、それに連れて霧も薄くなっていく。
(何?急に霧が……)
そう思っている間にも、霧は無くなっていき、完全に消えた時、花音達の目の前には巨大な城門があった。
「城?」
「此処は、まさか……」
「そう。此処があなた達の《今》の敵の本拠地、黒姫の城」
「誰だ!?」
聞こえた声に封魔が鋭い声と視線を向ける。
そこには仮面とマントで姿を隠している人物が一人いた。
「……何者だ?お前」
「ふふ、今はまだ知る必要はないわ」
「何?」
「いずれわかる。まだ時じゃないのよ。……でも」
そう言い一瞬で距離を詰めてくる。
それに封魔は剣に手を掛け、花音も警戒を強くしたが、その女は何故か楽しげな口調で続けた。
「あなた達はいずれ私達の所へ来るわ。絶対にね。……今はお近付きの印に、少しだけ手助けしてあげる」
そう言って手を上空に向け、その手からエネルギー弾を放つ。
「これで他の二人も此処に来るはず。それと此処から出るには、この城の南に力の弱い所があるから、そこから出られるわ。……ふふ、じゃあまた会いましょう。また会えるのを楽しみにしているわ、封魔」
「!!待て!」
封魔は声を上げたが、女はそれに構わず姿を消してしまった。
「今の人、知ってるの?」
名乗っていないのに封魔の名を呼んだ女に、花音は問い掛けたが、封魔は首を横に振った。
「いや……、だが、今の奴の仮面は……」
それでも何か心当たりがありそうな様子に、花音が再び聞こうとした時、風夜と神蘭が駆けてくるのが見えた。
「花音!」
「封魔!」
「風夜!神蘭さん!」
怪我した様子もない二人の姿にホッとする。
駆け寄ってきた二人も花音達の様子を見て安堵していたようだったが、すぐ近くにある城門に気付き、表情を険しくした。
「この城は、まさか」
「ああ。黒姫のいる城らしい」
呟いた神蘭に、封魔が言う。
「まさか、敵に飛ばされた先で見付けるとはな」
「だが、今は此処から脱出するのが先決だ。何か刹那が此処を特定出来る物だけ持ち帰って、脱出の方法を探さないと」
言いつつ、風夜が地面の土を少し取り、何故持っていたのか分からないが小さめの袋に入れる。
それを見ながら、花音は口を開いた。
「そ、それなら、此処から南に力の弱い場所があるんだって。そこから出られるみたいだよ」
「……お前ら、此処で誰かにあったのか?」
突然そんなことを言い出した風夜に、内心ドキリとする。
「な、どうしてそう思うの?」
「何故って、さっきから聞いてたら《らしい》とか《みたい》って誰かから聞いたとしか思えない」
「それに私達が此処に来る前に見たエネルギー弾、あれはお前達の放ったものじゃないだろう。一体誰がいたんだ?」
風夜と神蘭の言葉に、花音は困ったように封魔を見た。
「…….いや、此処に居たのは見張りの魔族だ。倒す前に、情報を聞き出したんだよ。お前達が見たのは、俺が弾いた奴の攻撃だ」
「「…………」」
本当のことを言う気はないのか、そう答えた封魔に風夜と神蘭が探るような視線を向け、少しの間睨み合いのようになる。
だがすぐに諦めたのか、二人は視線を外した。
「まぁ、いい。とにかく、南の方へ行ってみよう」
その言葉に、花音達は取り敢えず女が行っていた場所へ向かうことにした。
「えっと、この辺りかな?」
謎の人物に言われた通り、南に向かって数分、花音達は足を止めた。
よくはわからないが、少しだけ雰囲気が違う気がする。
「刹那くんだったら、もっときちんとわかるんだろうけど……」
そう呟きながら、空間属性の矢を数本用意する。
それを何もない空間に向けて放てば、空間の歪みが出来た。
「よし、行こう」
三人に声を掛けて、その中へ足を踏み入れる。
そして、飛ばされる前にいた空間へと戻って来ると、そこにいたのは窮姫ではなく、高笑いしている魔族の男だった。
2/8ページ
スキ