立ち塞がる壁
1
「えっ!?きゃあああっ!」
支えていたものが全てなくなって、宙に浮いていた花音の身体は落下を始める。
だが、直ぐに翼が羽ばたくような音がして、誰かに受け止められたように落下が止まった。
「あれ?」
それに閉じていた目を開けると、風夜と目があった。
「……風夜?」
「ああ。遅くなって、悪かった」
「ううん。それより、光輝は?」
聞くと、彼は視線を少し動かした。
視線の先には風夜と同じように翼を出した風牙がいて、光輝が抱えられている。
それを確認した花音はホッと息をついたが、すぐにまだ安心出来る状況ではないことを思い出し、捕まっている凍矢達のことを思い出した。
「そうだ。凍矢君達が……」
「ああ。それなら、心配ない」
「えっ?」
捕まっている仲間達を助けなくてはと下ろしてもらおうと声を掛けたところで、風夜に返され、彼を見上げる。
風夜は何も心配することはないというように、風牙とも顔を見合わせる。
その直後、耳が痛くなる位の大きな悲鳴が響き渡った。
『ぎゃああああ!』
「っ……!な、何?」
耳を塞ぎたくなるような叫びに、花音は少し顔を顰めながらも、魔物を見る。
すると、身動き出来ないせいで思いっきり悲鳴を聞いてしまったらしい凍矢達が表情を顰めているのがわかったが、魔物は更に悲鳴を上げた。
『ぎゃあああ!熱い、熱いぃ!』
一体何が起きているのかと思っていると、まだ花音達がいる場所からは少し離れていたが、火の手が上がったのが見えた。
『やめろー、やめてくれー』
「「「「うわっ!?」」」」
「「「「きゃあああっ!?」」」」
迫ってくる炎に木の魔物は、捕まえている凍矢達を振り回す。
「皆が!」
「大丈夫だ」
「風夜?」
「大丈夫って、あれで本当に大丈夫なのかよ?」
「……まぁ、見てろ」
声を上げた光輝に、風牙がそう返す。
少しも慌てる様子のない二人に花音と光輝が顔を見合わせた時、風の唸るような音が聞こえてくる。
そうかと思うと、風は刃のようになり、木の魔物へと降り注いだ。
『うぎゃあああ!痛い、痛いぞぉ!』
そう声を上げている間にも、風の刃は枝を切り裂き、凍矢達を自由にしていく。
(これって、もしかして)
「風兄様ー、これでいいんでしょー?」
聞こえた声に視線を向けると、自由の身になった凍矢達のところに風華と空夜の姿があった。
「やっぱり、今の……」
「ああ、そうだ。……火焔!」
頷いた風夜が叫ぶように言った瞬間、先ほどよりも勢いを増した炎が広がった。
『熱いー、やめろー!助けてくれ!ぎゃあああ!』
凍矢達を解放したこともあり、容赦無く広がっていく炎に焼かれ、悲鳴を上げていた魔物の声が大きく響いた後、小さくなっていく。
そして、完全に聞こえなくなると、炎も跡形もなく消えた。
森が焼かれたせいで、炎が広がってきた方は平地になっていて、その先に少し疲れているように見える火焔と、風夜についていった夜天達の姿があった。
「……なんか一人だけ、やけに疲れてるみたいだが」
呟いた光輝に、事情を知っているのだろう風牙が笑う。
「本当、あいつには無茶振りするな、お前」
「適材適所ってやつだ」
言いながら、風夜は着地して、ずっと抱えていた花音のことを下ろした。
すると、直ぐに火焔が風夜のことを睨み付ける。
「お前なぁ、人使い荒いぞ。こんな、神経使うなんて初めてだ」
「いい経験だろ?それとも、ばててもう動けないか?」
「あのなぁ!」
「まあまあ、二人共!」
「まだ安心している場合じゃないでしょ!」
終わらなさそうなやり取りに、大樹と水蓮が止めに入る。
(そうだった!まだ……)
そう内心で呟くと、花音は封魔達を牽制する以外動きを見せていない闇王の方へ視線を移した。
「えっ!?きゃあああっ!」
支えていたものが全てなくなって、宙に浮いていた花音の身体は落下を始める。
だが、直ぐに翼が羽ばたくような音がして、誰かに受け止められたように落下が止まった。
「あれ?」
それに閉じていた目を開けると、風夜と目があった。
「……風夜?」
「ああ。遅くなって、悪かった」
「ううん。それより、光輝は?」
聞くと、彼は視線を少し動かした。
視線の先には風夜と同じように翼を出した風牙がいて、光輝が抱えられている。
それを確認した花音はホッと息をついたが、すぐにまだ安心出来る状況ではないことを思い出し、捕まっている凍矢達のことを思い出した。
「そうだ。凍矢君達が……」
「ああ。それなら、心配ない」
「えっ?」
捕まっている仲間達を助けなくてはと下ろしてもらおうと声を掛けたところで、風夜に返され、彼を見上げる。
風夜は何も心配することはないというように、風牙とも顔を見合わせる。
その直後、耳が痛くなる位の大きな悲鳴が響き渡った。
『ぎゃああああ!』
「っ……!な、何?」
耳を塞ぎたくなるような叫びに、花音は少し顔を顰めながらも、魔物を見る。
すると、身動き出来ないせいで思いっきり悲鳴を聞いてしまったらしい凍矢達が表情を顰めているのがわかったが、魔物は更に悲鳴を上げた。
『ぎゃあああ!熱い、熱いぃ!』
一体何が起きているのかと思っていると、まだ花音達がいる場所からは少し離れていたが、火の手が上がったのが見えた。
『やめろー、やめてくれー』
「「「「うわっ!?」」」」
「「「「きゃあああっ!?」」」」
迫ってくる炎に木の魔物は、捕まえている凍矢達を振り回す。
「皆が!」
「大丈夫だ」
「風夜?」
「大丈夫って、あれで本当に大丈夫なのかよ?」
「……まぁ、見てろ」
声を上げた光輝に、風牙がそう返す。
少しも慌てる様子のない二人に花音と光輝が顔を見合わせた時、風の唸るような音が聞こえてくる。
そうかと思うと、風は刃のようになり、木の魔物へと降り注いだ。
『うぎゃあああ!痛い、痛いぞぉ!』
そう声を上げている間にも、風の刃は枝を切り裂き、凍矢達を自由にしていく。
(これって、もしかして)
「風兄様ー、これでいいんでしょー?」
聞こえた声に視線を向けると、自由の身になった凍矢達のところに風華と空夜の姿があった。
「やっぱり、今の……」
「ああ、そうだ。……火焔!」
頷いた風夜が叫ぶように言った瞬間、先ほどよりも勢いを増した炎が広がった。
『熱いー、やめろー!助けてくれ!ぎゃあああ!』
凍矢達を解放したこともあり、容赦無く広がっていく炎に焼かれ、悲鳴を上げていた魔物の声が大きく響いた後、小さくなっていく。
そして、完全に聞こえなくなると、炎も跡形もなく消えた。
森が焼かれたせいで、炎が広がってきた方は平地になっていて、その先に少し疲れているように見える火焔と、風夜についていった夜天達の姿があった。
「……なんか一人だけ、やけに疲れてるみたいだが」
呟いた光輝に、事情を知っているのだろう風牙が笑う。
「本当、あいつには無茶振りするな、お前」
「適材適所ってやつだ」
言いながら、風夜は着地して、ずっと抱えていた花音のことを下ろした。
すると、直ぐに火焔が風夜のことを睨み付ける。
「お前なぁ、人使い荒いぞ。こんな、神経使うなんて初めてだ」
「いい経験だろ?それとも、ばててもう動けないか?」
「あのなぁ!」
「まあまあ、二人共!」
「まだ安心している場合じゃないでしょ!」
終わらなさそうなやり取りに、大樹と水蓮が止めに入る。
(そうだった!まだ……)
そう内心で呟くと、花音は封魔達を牽制する以外動きを見せていない闇王の方へ視線を移した。