立ち塞がる壁
1
兵器を壊してから数日後、花音と光輝は神蘭達に呼び出されていた。
彼女達が待っていた部屋に入ったところで、思わず動きを止める。
そこには、神界にいる筈の総長と副総長の姿があった。
「どうして?」
「兵器が壊されたことで、取り敢えずの危機は去った。今のうちに総攻撃を仕掛けるのだ」
「その為の軍は、配置済みよ。手始めにこの街から」
「ちょっと待て!」
副総長の言葉に、光輝が声を上げた。
「手始めにこの街っていうのはどういうことだ?この街は……」
「味方と言いたいの?この間のことを忘れた訳ではないでしょう?」
「あれは、黒蘭に操られていたから!」
聖羅の言葉に、花音は反論する。
「確かに、彼等の意思ではなかったかもしれない。だが、また同じことが起きるかもしれないだろう」
「だからって」
「それに今は同じ目的を持っていたとしても、その目的を果たした後、どうなるかわからないでしょう」
「これは決定事項だ。攻撃開始は、今から八時間後」
異議は認めないというように総長が言い放つ。
「心配しなくても、他のあなた達の仲間に危害は加えないわ」
聖羅が言ったが、その言葉を聞いても安心など出来なかった。
「「…………」」
部屋を出て、花音と光輝は無言のまま歩く。
二人の手には、薬の入ったカプセルの入った瓶があり、それを見つめる。
それは、神麗から渡されたものだった。
ー「ごめんなさいね。神帝からの命令には逆らえないの。だから、せめて苦しまずに」ー
即効性の毒だと渡されたものは、二人合わせて四錠。
風夜、風牙、夜天、沙羅に使えと神麗に言われたものだった。
「……くそっ……」
瓶を握り締めて、光輝が呟く。
「こんなものを渡されたって、出来るわけないだろ」
「何が出来ないって?」
「「!!」」
聞こえてきた声に視線を向ける。
そこには、冷たい視線を向けている紫狼がいた。
「紫狼さん……」
「その手に持っているものを渡してもらおうか。それと」
その言葉と共に、二人は何人かの魔族に囲まれた。
「神族が何かを企んでいるのはわかっている。それについて、知っていることを教えてもらおうか」
紫狼はそう言ったが、その目や雰囲気は既に花音達のことも敵と認識しているようだった。
2
「「「…………」」」
現れた紫狼と魔族達に紫狼の部屋へと連れて来られる。
そこに風夜達の姿はない。
そのことに少し安堵していると、紫狼が口を開いた。
「それで、神族に何を吹きこまれた?」
そう聞かれ、何と返せばいいのか返答に困る。
神族の言葉をそのまま伝える訳にはいかないのだ。
だが、それをよく思わなかったのか紫狼が顔を顰めた。
「どうした、言えないのか……お前達は、他の神族共とは違うと思っていたが、やはり他の奴等と変わらんか」
「「…………」」
「……なら、質問を変えよう。お前達が持っているカプセル、誰に飲ませるつもりだ?」
「「…………」」
その質問にも答えられずにいると、紫狼が溜息をついた。
「これも答えられないか。ならば、仕方ない」
そう呟いて、部屋の中にいた魔族達に視線を向ける。
すると、彼等は再び花音と光輝を拘束した。
「地下に連れて行け」
その言葉で二人は乱暴に引っ張られた。
「……一体、どうすればいいんだろう?」
連れて来られ、入れられた地下牢で花音は呟く。
花音にとっては、風夜と夜天は勿論、神蘭達や沙羅達も仲間なのだ。
どちらかを選び、どちらかを見捨てることなどできない。
「見つかったのが、風夜か夜天ならよかったんだろうけどな」
ぼそりと呟いた光輝の声に、花音も内心で賛同する。
(確かに、その二人ならもっときちんと話を聞いてくれたかもしれない。どうしたらいいか、相談も出来たはずなのに)
そう思っても、実際に見つかったのは紫狼だったのだから仕方ない。
だが、このままでいるわけにはいかなかった。
兵器を壊してから数日後、花音と光輝は神蘭達に呼び出されていた。
彼女達が待っていた部屋に入ったところで、思わず動きを止める。
そこには、神界にいる筈の総長と副総長の姿があった。
「どうして?」
「兵器が壊されたことで、取り敢えずの危機は去った。今のうちに総攻撃を仕掛けるのだ」
「その為の軍は、配置済みよ。手始めにこの街から」
「ちょっと待て!」
副総長の言葉に、光輝が声を上げた。
「手始めにこの街っていうのはどういうことだ?この街は……」
「味方と言いたいの?この間のことを忘れた訳ではないでしょう?」
「あれは、黒蘭に操られていたから!」
聖羅の言葉に、花音は反論する。
「確かに、彼等の意思ではなかったかもしれない。だが、また同じことが起きるかもしれないだろう」
「だからって」
「それに今は同じ目的を持っていたとしても、その目的を果たした後、どうなるかわからないでしょう」
「これは決定事項だ。攻撃開始は、今から八時間後」
異議は認めないというように総長が言い放つ。
「心配しなくても、他のあなた達の仲間に危害は加えないわ」
聖羅が言ったが、その言葉を聞いても安心など出来なかった。
「「…………」」
部屋を出て、花音と光輝は無言のまま歩く。
二人の手には、薬の入ったカプセルの入った瓶があり、それを見つめる。
それは、神麗から渡されたものだった。
ー「ごめんなさいね。神帝からの命令には逆らえないの。だから、せめて苦しまずに」ー
即効性の毒だと渡されたものは、二人合わせて四錠。
風夜、風牙、夜天、沙羅に使えと神麗に言われたものだった。
「……くそっ……」
瓶を握り締めて、光輝が呟く。
「こんなものを渡されたって、出来るわけないだろ」
「何が出来ないって?」
「「!!」」
聞こえてきた声に視線を向ける。
そこには、冷たい視線を向けている紫狼がいた。
「紫狼さん……」
「その手に持っているものを渡してもらおうか。それと」
その言葉と共に、二人は何人かの魔族に囲まれた。
「神族が何かを企んでいるのはわかっている。それについて、知っていることを教えてもらおうか」
紫狼はそう言ったが、その目や雰囲気は既に花音達のことも敵と認識しているようだった。
2
「「「…………」」」
現れた紫狼と魔族達に紫狼の部屋へと連れて来られる。
そこに風夜達の姿はない。
そのことに少し安堵していると、紫狼が口を開いた。
「それで、神族に何を吹きこまれた?」
そう聞かれ、何と返せばいいのか返答に困る。
神族の言葉をそのまま伝える訳にはいかないのだ。
だが、それをよく思わなかったのか紫狼が顔を顰めた。
「どうした、言えないのか……お前達は、他の神族共とは違うと思っていたが、やはり他の奴等と変わらんか」
「「…………」」
「……なら、質問を変えよう。お前達が持っているカプセル、誰に飲ませるつもりだ?」
「「…………」」
その質問にも答えられずにいると、紫狼が溜息をついた。
「これも答えられないか。ならば、仕方ない」
そう呟いて、部屋の中にいた魔族達に視線を向ける。
すると、彼等は再び花音と光輝を拘束した。
「地下に連れて行け」
その言葉で二人は乱暴に引っ張られた。
「……一体、どうすればいいんだろう?」
連れて来られ、入れられた地下牢で花音は呟く。
花音にとっては、風夜と夜天は勿論、神蘭達や沙羅達も仲間なのだ。
どちらかを選び、どちらかを見捨てることなどできない。
「見つかったのが、風夜か夜天ならよかったんだろうけどな」
ぼそりと呟いた光輝の声に、花音も内心で賛同する。
(確かに、その二人ならもっときちんと話を聞いてくれたかもしれない。どうしたらいいか、相談も出来たはずなのに)
そう思っても、実際に見つかったのは紫狼だったのだから仕方ない。
だが、このままでいるわけにはいかなかった。