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魔界のレジスタンス

1
魔界へ来て数日後、花音は朝目が覚めて、大きく伸びをしていた。
日が経つにつれ、少しずつ体調が回復している気がする。
(これってやっぱり、この世界に身体が慣れてきたってことかな?私がこうなってきたってことは、神蘭さん達も……)
魔界では、光の一族と神族は本来の力を出せないということで、この街で身体が慣れるのを待っていたのだ。
慣れてきたのだとすれば、本格的に動くことになるだろう。
そんなことを思っていると、少し様子の可笑しい夜天の姿が目に入った。
頭が痛むのか、ずっと押さえている。
それだけでなく、たまに何かを振り払うかのように、頭を横に振っている時もあった。
(夜天くん、どうしたんだろう?)
魔界に来た時はなんともなさそうだったが、今は具合が悪そうに見えて、花音は彼の方へ足を向けた。
「夜天くん!」
「…………」
近付いて声を掛けたが、夜天は気付かない。
「夜天くん!夜天くんってば!!」
「っ!」
さっきより大きな声で呼び掛ければ、漸く気付いたのか花音を見る。
「花音?どうしたんだ?」
「それはこっちが聞きたいよ。……具合悪いの?」
「……いや、大丈夫だ」
「……そう。もし何かあったら、すぐに言ってね」
首を振った夜天に、花音はそれだけ返した。
2
夜天の様子がおかしいと思い始めてから二日。
様子がおかしいと思うようになったのは、彼だけではなくなっていた。
街にいる魔族達の様子も花音達が来た時に比べて、様子がおかしい。
それだけでなく、沙羅や風牙、梨亜、夜月も時々何かを振り切るように頭を振っている。
そして、そんな彼等を難しい表情で見ている風夜にも気付いた。
「風夜、どうしたの?それとも、風夜もどこか……」
「いや、俺は大丈夫だ」
そう返しつつも、風夜が表情を変えることはなかった。
「黄兄、早く、早く!」
「ああ、わかってるから、そんなに引っ張るな」
その時、賑やかな声が聞こえてきて、紅牙が黄牙を何処かに引っ張っていこうとしているのが目に入った。
「花音お姉ちゃん、僕達ちょっと街の中、探検してくるね」
「蒼牙、お前も押すんじゃない!」
騒ぎながら出ていく三人を花音は苦笑しながら見送る。
「……黄牙くんは、大丈夫みたいだね」
「……ああ。あいつは大丈夫だろ。半分入ってる神族の血があいつを守る。……問題は、俺と黄牙、紫狼以外の奴等だ」
その言葉から風夜は、今何が起きているのかわかっているようだった。
3
「…………」
次の日、花音は昼食の席にいる人数が少ない気がして、メンバーを見回していた。
(いないのは、夜天くんと沙羅さん、梨亜ちゃんと夜月くん、風牙……、どうしたんだろう?)
「なんだ?夜天の奴、いないのか?」
「朝もいなかったけど、気分でも悪いのか?」
花音の近くにいた光輝と雷牙の声が聞こえてくる。
「……そういえば、何日か前から調子が悪そうだったが」
「……私、様子を見てくるよ」
「待て」
花音が席から立ち上がると、直ぐに風夜が声を上げた。
「何?」
「いや、俺が見てくる。……お前達は、夜天達に近付かない方がいい」
「どういう意味だ?」
風夜が言った言葉を聞いて、凍夜が眉を潜める。
「言ったままだ。……今はな」
言いつつ、紫狼、黄牙と何か意味ありげな視線を交わした後、風夜は夜天達の様子を見に出ていった。
「……お前達、何か隠してないか?」
それを見送って、神蘭が口を開き、紫狼を見る。
「ああ、そうだな。だが、まだ早い」
「何?」
「今、話したところで出来ることはない。もう少ししたら、動くだろうさ。この状況も、奴もな」
「奴?」
「そうだ」
そう言うと、紫狼は何処か楽しげに笑った。
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