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繋がる絆

1
「ウガアアア」
身体の動きを封じられ、思い通りにいかないことに苛ついたのか、声を上げて拘束から逃れようと暴れだす。
その拘束を解かれないようにか、其々の拘束が強まるのが見えたが、暴れる力の方が強いようで抑えきれていないようだった。
「「「「「っ!!」」」」」
それどころか、神蘭達の方が引っ張られ、引き摺られかける。
「……あまりもちそうにないわね。急いで!」
神蘭達の様子を見て、神麗が言う。
それにまず動いたのは、火焔と空夜だった。
火焔が放った炎が、空夜の放った風を受けて、激しく燃え上がり、元研究者の男に直撃する。
「水蓮!」
「ええ!」
「光輝!」
「ああ!」
続けて電流を帯びた水の渦が、最後に合わさってお互いの威力を高めあった光と闇の渦が当たり、元研究者の身体は爆発に巻き込まれる。
「……やったか!?」
「これは、流石に効いただろ」
手応えを感じたのか、声が上がる。
だが煙が晴れた時に見えたのは、ふらつきながらもまだ立っている姿だった。
「っ……、これでも駄目なのか?」
「もう一度だ!次で……」
「フフ、ハーハハハッ」
その時、傷付きながらも立っていた化け物から笑い声が聞こえてくる。
「フハハハ、お前達には礼を言うぞ。今ので、意識を取り戻せたのだからな。……これはその礼だ」
そう言ったかと思うと、化け物化した男の口にエネルギーが溜まり、花音達の方へ放たれる。
だがそのエネルギーは、突如現れた空間の歪みの中へ消え、また別の方向から元研究者へと直撃した。
「グゥ……、何?」
「悪いな。俺の力は、こういう使い方も出来るんだ。術を仕込むのに、少し時間が掛かるけどな」
「元々私と刹那の力は戦闘用ではないけど、使いようによっては何も出来ないわけじゃないのよ」
思いもしなかっただろう攻撃に、声を上げた元研究者を見て、刹那と星夢が言った。
刹那が時間が掛かると言った術も、星夢の力で元研究者がまだ動け、攻撃してくることがわかったから、間に合ったのだ。
「ならば……」
そう言い、再び動こうとした男を神蘭達が再び封じた。
2
「ぬおおおっ!」
「「「ぐっ……」」」
「「っ……!」」
拘束を逃れようとする男と、それを封じようとする神蘭達の間で、力が拮抗していりように見える。
それでも、段々男の力の方が上回っていくのがわかった。
だが、男が自由を取り戻す前に、男の身体に蔓と伸びた陰が巻き付き、更にその二つごと凍りつかせる。
それらをしたのは、美咲、凍矢、紫影達で、彼等が神蘭達に協力し、動きを封じるのにまわったことで、再び拮抗状態に陥っていた。
動きを封じられている男を見て、夜天達が再び力を集中させ始める。
その力が高まるにつれ、彼等の持っている宝珠の光も強くなっていく。
そのことに気付いた男も、攻撃をくらったらまずいとでも思ったのか、抵抗が激しくなった。
「私は……、私はまだ……、こんなところで……、死ぬわけにはいくかぁ!!」
バキィッ
男が叫んだかと思うと、何かが壊れるような大きな音がする。
それは、拘束が解ける音だったようで、その巨体が飛び上がった。
「しまった……!!」
「ふはは、残念だったな。逃げるのは癪だが、この場は……」
そう言って、何処かへ飛び去ろうとするのを見て、花音は咄嗟に矢を放った。
矢は化け物化した男の顔をかすり、僅かに動きを止める。
その間に、背に翼を出した風夜が飛び上がり、男の前を塞いだ。
「……逃がすと思うか。……お前は、此処で俺達に倒されるんだ」
言うと同時に、風夜が風の刃を放つ。
それに合わせて、花音が火の矢を放つと、風の刃と合わさり、男の身体を容赦なく切り裂き、焼いていった。
翼を焼かれた男の巨体がそのまま落下していくのを見て、花音は叫ぶ。
「今だよ!!」
その声に、夜天達が落ちていく男に向けて、其々溜めていた力を放つ。
それらは、男の身体へと命中する。
宝珠の力と相性の関係で強まったそれらの攻撃を防ぐことも出来ず、全て受けた男の身体は強化してあるとはいえ、耐えきることは出来なかったようだった。
「そんな、馬鹿な……、この私が……、最強の存在になったはずの、私がぁ……」
その言葉を最後に動かなくなり、消滅していく。
それが実験を繰り返し、何人もの命を弄んできた研究者の最期だった。
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