繋がる絆
1
「なっ?……水蓮ちゃん!大樹くん!聖ちゃん!」
「一体、何のつもりだ!」
地へと叩き付けられた四人を見て、花音は駆け寄る。
四人の内一人は、会話らしい会話もしたことがない男だったが、紫影が兄だと言っていたことを思い出し、他の三人と同じように息があるのかを確かめる。
四人共、息があることを確認し、ほっと息をついていると、風夜の鋭い声が聞こえた。
「届け《者》だと言ったでしょう。もう不要だから、返してあげるわ。それじゃあね」
「待てっ!」
風夜が声を上げるが、窮姫は姿を消す。
残されたのは、花音、風夜と意識のない四人だった。
「で、一体何があって、こいつらがいるんだ?」
意識がないため、並べて寝かせている四人を見て、雷牙が言う。
「……さあな。もう不要だとか言って、置いていった。だから、何があってこうなったのかまでは、わからないんだよ」
「誰か一人でも気が付けば、話を聞けるんだろうけどな」
夜天がそう呟いた時、四人が僅かに動いたような気がした。
「姉上!兄上!」
気を失っている聖と男を気にしているようだった紫影も、そのことに気付いたのか声を上げる。
その声で意識が浮上したのか、ゆっくりと四人の目が開かれた。
「……ここは?……紫影!?」
目を開けて、見えた姿に驚いたのか、聖が声を上げて起き上がる。
「姉上!」
だが、その身体はすぐにふらついて、紫影が伸ばした腕に受け止められた。
「……大丈夫か?」
「え、ええ……」
「それより、何があったんだ?」
「……もう用済みだそうだ。……まあ、あんな化け物が何体もいたら、そうなるんだろうがな」
そう言って、聖の横で起き上がっていた男がくくっと笑った。
「そういえば……」
男の言葉を聞き、四人を連れてきた時の窮姫の言葉も思い出し、花音は声を上げる。
「確かに不要とか言っていたけど、四人だけなの?他の人達は?」
「「「「…………」」」」
そう問い掛けると、四人は少し俯き気味で黙りこんだ。
「……父上達は、まだあいつらといるよ。俺達は、父上達に逃がされたんだ」
沈黙の後、大樹が口を開き、それに続くように水蓮も口を開いた。
「とは言っても」
言いつつ、水蓮は誰もいない方へ手を伸ばし、能力を使うような素振りをする。
しかし、何の変化もなければ、彼女の力が高まるような感覚も感じなかった。
「この通り、今は力を奪われてるの。どうやら、新たな戦力を手に入れたことと、火焔……、あなたが裏切ったことが、関係しているみたいよ。おかげで、私達はぎりぎりまで、力を抜き取られたというわけ。……でも、力だけで済んだのは、運がよかったのかもしれないけど」
「運がよかった……?」
「ええ。何人かは力を抜かれ過ぎて、消滅したしね」
「……それで、その力はどうなったんだ?」
やはりそこが気になったのだろう、神蘭が問い掛ける。
「よくは、わからなかったけど、何か珠の中へいれていたわ。それをどうするのかまではわからないけど」
「ともかく此処にいることがばれたなら、何か仕掛けてくるのも時間の問題だろうな」
そう答えた聖に、封魔が言った。
2
力を奪われたせいか、あまり体調がよくなさそうだった四人を休ませた後、風華と話していた花音の所に来たのは、火焔だった。
「花音」
「火焔くん?どうしたの?」
「いや……、お前、本当にいいのか?」
問い掛けたつもりが、逆に問い返され、花音は首を傾げる。
「いいのかって、何のこと?」
「このまま、俺達のことを受け入れていいのかってことだ。……俺達は、お前等を裏切って、今まで色々とやってきたのに、本当に信用出来るのか?」
「…….うん。皆にも其々の事情があったんだし、火焔くんも水蓮ちゃん達も、危険な思いをして、今、戻ってきてくれたんだもの。……前は振りでも、今回は違うって思ってるから」
「……お人好しだな、お前。……風夜の奴も、なんだかんだ言って、俺達のことを受け入れているみたいで、夜天達のように警戒してる様子もないし」
「ふふ、風夜も火焔くんが危険を犯して、キメラの資料を取ってきてくれたことを知ってるからね」
「……でもな」
言いつつ、火焔は彼が来てから花音の背後にいる風華に視線を移す。
花音も同じように見ると、風華は怯えているようにも、警戒しているようにも見える目で、火焔のことを見ていた。
そんな風華から花音の方へ視線を移し、少し俯いて、火焔が口を開く。
「本当のことを言うと、今は拒絶されるより、受け入れられる方が辛いんだ。だから、夜天達よりお前と風夜が向けてくる視線の方が辛い。多分、水蓮達も同じはずだ」
「……でも、私と風夜も、全てを許してる訳じゃないよ。私にとっては、光の街への襲撃は許せないと思ってる。……だから」
「だから?」
「やり直そう。最初から」
「……やり直す?」
火焔ではなく、背後にいる風華が聞き返してくる。
「そうやり直すの。一度壊れてしまったものは元通りには出来ない。だから、また最初からつくりなおすの」
そう言って、花音は笑った。
「…………」
「つくり、なおす……、風兄さま……」
花音の言葉に、火焔が沈黙し、風華が呟く。
花音は火焔達のことで言ったつもりだったが、風華の呟きを聞いて、風夜の暴走以降、兄妹の関係も崩れていたのを思い出す。
「私も。私もまたやり直せるかな?風兄さまと」
「うん、大丈夫だよ」
不安そうな風華に、花音は安心させる為、もう一度笑った。
「なっ?……水蓮ちゃん!大樹くん!聖ちゃん!」
「一体、何のつもりだ!」
地へと叩き付けられた四人を見て、花音は駆け寄る。
四人の内一人は、会話らしい会話もしたことがない男だったが、紫影が兄だと言っていたことを思い出し、他の三人と同じように息があるのかを確かめる。
四人共、息があることを確認し、ほっと息をついていると、風夜の鋭い声が聞こえた。
「届け《者》だと言ったでしょう。もう不要だから、返してあげるわ。それじゃあね」
「待てっ!」
風夜が声を上げるが、窮姫は姿を消す。
残されたのは、花音、風夜と意識のない四人だった。
「で、一体何があって、こいつらがいるんだ?」
意識がないため、並べて寝かせている四人を見て、雷牙が言う。
「……さあな。もう不要だとか言って、置いていった。だから、何があってこうなったのかまでは、わからないんだよ」
「誰か一人でも気が付けば、話を聞けるんだろうけどな」
夜天がそう呟いた時、四人が僅かに動いたような気がした。
「姉上!兄上!」
気を失っている聖と男を気にしているようだった紫影も、そのことに気付いたのか声を上げる。
その声で意識が浮上したのか、ゆっくりと四人の目が開かれた。
「……ここは?……紫影!?」
目を開けて、見えた姿に驚いたのか、聖が声を上げて起き上がる。
「姉上!」
だが、その身体はすぐにふらついて、紫影が伸ばした腕に受け止められた。
「……大丈夫か?」
「え、ええ……」
「それより、何があったんだ?」
「……もう用済みだそうだ。……まあ、あんな化け物が何体もいたら、そうなるんだろうがな」
そう言って、聖の横で起き上がっていた男がくくっと笑った。
「そういえば……」
男の言葉を聞き、四人を連れてきた時の窮姫の言葉も思い出し、花音は声を上げる。
「確かに不要とか言っていたけど、四人だけなの?他の人達は?」
「「「「…………」」」」
そう問い掛けると、四人は少し俯き気味で黙りこんだ。
「……父上達は、まだあいつらといるよ。俺達は、父上達に逃がされたんだ」
沈黙の後、大樹が口を開き、それに続くように水蓮も口を開いた。
「とは言っても」
言いつつ、水蓮は誰もいない方へ手を伸ばし、能力を使うような素振りをする。
しかし、何の変化もなければ、彼女の力が高まるような感覚も感じなかった。
「この通り、今は力を奪われてるの。どうやら、新たな戦力を手に入れたことと、火焔……、あなたが裏切ったことが、関係しているみたいよ。おかげで、私達はぎりぎりまで、力を抜き取られたというわけ。……でも、力だけで済んだのは、運がよかったのかもしれないけど」
「運がよかった……?」
「ええ。何人かは力を抜かれ過ぎて、消滅したしね」
「……それで、その力はどうなったんだ?」
やはりそこが気になったのだろう、神蘭が問い掛ける。
「よくは、わからなかったけど、何か珠の中へいれていたわ。それをどうするのかまではわからないけど」
「ともかく此処にいることがばれたなら、何か仕掛けてくるのも時間の問題だろうな」
そう答えた聖に、封魔が言った。
2
力を奪われたせいか、あまり体調がよくなさそうだった四人を休ませた後、風華と話していた花音の所に来たのは、火焔だった。
「花音」
「火焔くん?どうしたの?」
「いや……、お前、本当にいいのか?」
問い掛けたつもりが、逆に問い返され、花音は首を傾げる。
「いいのかって、何のこと?」
「このまま、俺達のことを受け入れていいのかってことだ。……俺達は、お前等を裏切って、今まで色々とやってきたのに、本当に信用出来るのか?」
「…….うん。皆にも其々の事情があったんだし、火焔くんも水蓮ちゃん達も、危険な思いをして、今、戻ってきてくれたんだもの。……前は振りでも、今回は違うって思ってるから」
「……お人好しだな、お前。……風夜の奴も、なんだかんだ言って、俺達のことを受け入れているみたいで、夜天達のように警戒してる様子もないし」
「ふふ、風夜も火焔くんが危険を犯して、キメラの資料を取ってきてくれたことを知ってるからね」
「……でもな」
言いつつ、火焔は彼が来てから花音の背後にいる風華に視線を移す。
花音も同じように見ると、風華は怯えているようにも、警戒しているようにも見える目で、火焔のことを見ていた。
そんな風華から花音の方へ視線を移し、少し俯いて、火焔が口を開く。
「本当のことを言うと、今は拒絶されるより、受け入れられる方が辛いんだ。だから、夜天達よりお前と風夜が向けてくる視線の方が辛い。多分、水蓮達も同じはずだ」
「……でも、私と風夜も、全てを許してる訳じゃないよ。私にとっては、光の街への襲撃は許せないと思ってる。……だから」
「だから?」
「やり直そう。最初から」
「……やり直す?」
火焔ではなく、背後にいる風華が聞き返してくる。
「そうやり直すの。一度壊れてしまったものは元通りには出来ない。だから、また最初からつくりなおすの」
そう言って、花音は笑った。
「…………」
「つくり、なおす……、風兄さま……」
花音の言葉に、火焔が沈黙し、風華が呟く。
花音は火焔達のことで言ったつもりだったが、風華の呟きを聞いて、風夜の暴走以降、兄妹の関係も崩れていたのを思い出す。
「私も。私もまたやり直せるかな?風兄さまと」
「うん、大丈夫だよ」
不安そうな風華に、花音は安心させる為、もう一度笑った。