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繋がる絆

1
「…………」
花音と風夜が話をしていた頃、風の国に戻ってきていた火焔は、誰に会うこともなく、与えられている部屋にいた。
ピリッとした痛みがたまにある首を鏡で確かめると、そこには一本の紅い線が走っていた。
(あの時のか……)
その部分に触れながら、風夜に剣を突き付けられた時のことを思い出す。
『もう一度、自分たちのしていることを考えてみるんだな』
『これ以上の醜態を晒すなら、その命、なくなると思え』
「…………」
言われた言葉を思いだしながら、火焔はベットに横になった。
(俺は間違ってないはずだ。火の国を守るには、この方法しか……)
そう思いながら、視線を動かし、ふと棚の上に置いてあった宝珠に止まる。
「ん?」
いつもは鮮やかな紅い色をしているのに、今はくすんで見える。
気のせいではないかと思い、近付いてみたが、見間違いではなかった。
「これは、一体……」
そう呟いた時、部屋の扉が叩かれる音がした。
「何だ?」
「あぁ、やっぱり帰ってきてたんじゃないですか」
扉を開けると、外に立っていた聖が言う。
「火焔様、何か頼まれていませんでした?……駄目ですよ。頼まれていたことは、きちんと最後までやらなくては」
「……行くさ。今からな」
(ちょうどいい。データを渡すついでに、色々と聞いてみるか)
そう思い、火焔は聖の横を通り抜けて、部屋を出た。

「…………」
部屋を出た火焔は、窮姫の部屋の前に来て、中から聞こえてきた声に扉を叩こうとした手を止めた。
「……ね。……ないと」
「次は……。……はどう……」
「?」
話している内容が気になり、中の声を聞こうと、気配を消し、意識を集中させる。
そして聞こえてきた声は、窮姫と自分がデータをとった男の声だった。
「そう。なら、また実験を行いましょうか?」
「ふん。次はもっと頑丈に頼むぞ」
そう言って、此方に近付いてくる足音が聞こえ、火焔は一度扉の前から離れ、柱の影へ身を隠した。
その後、すぐに男が出てきて、逆方向へと姿を消す。
それを確認して、再び扉の前に来ると、今度は窮姫とその仲間である四人の会話が聞こえてきた。
「ふっ、我々に利用されていることにも気付かないとはな」
「まあ、いいじゃない。どんどん改良して、強くなってもらえば、私達は何もしなくても、闘神達を倒してくれるかもしれないし」
馬鹿にしたような男の声の後、愉しそうな女の声がする。
「ああ。奴等がいなくなれば、一気に我等の計画を進められる。《あの方》を迎える準備ができる」
「ふふ、そうね」
「でもさ、窮姫。このまま、あの男を強くしていったら、他の奴等は必要ないんじゃない?」
「いえ、まだ利用価値はあるわ」
「そうだな。存分に利用させてもらおうじゃないか。……最後までな」
「ふふ、そう。実験の最後に、ね」
「!!」
その言葉に火焔は息をのむ。
「!誰だ?」
気配がもれてしまったのか、中から声がする。
今見付かってはいけない気がして、火焔は再び気配を消すと、素早くその場を離れた。
(これを渡す訳にはいかないよな)
部屋に戻ってきてから、窮姫に渡さなかった紙の束を見る。
そのまま、手の方に意識を集中させると、紙の束は一瞬の内に燃えて消えた。
その滓を手から払い、火焔は部屋の中にあったものを纏め始める。
暫くして、部屋の中を片付けると、最小限の荷物を持って、火焔は部屋を出た。
もう、ここへ戻ってくるつもりはなかった。
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