繋がる絆
1
「…………」
すっかり主を変えてしまった風の国の城。
火焔は窮姫に呼び出され、軍の施設を訪れていた。
「ああ、来たわね」
「今度は一体何の用だ?」
「ふふ、貴方にやってきてほしいことがあってね」
「俺一人でか?」
「後の二人は、今国へ戻ってるでしょう。平気よ。ただ貴方は見ていて、データをとってくるだけでいいの」
「?」
「ふふ、こっちよ」
言って、窮姫が歩き出す。
それについていくと、そこは軍の牢だった。
「「「ヴアアア!」」」
「こいつらは……!」
牢の中を覗いた火焔は、中にいた様々な姿をした者達を見て、窮姫を振り返った。
「この前、光の街を襲撃する時に使った……」
「そうよ。その時に貴方達がとってきてくれたデータをもとに、改良したの。そこで、もう一度データをとってきてほしいのよ」
「…………」
「彼等ではなく、《彼》のデータをね」
窮姫が言って、牢の中にいる者達から視線を外し、更に奥へと続く通路へ移す。
その先から、此方に近付いてくる足音が聞こえてくる。
現れたのは、竜と鬼のような腕を持ち、色の異なる翼を生やした男だった。
その異様な姿に、火焔は思わず息をのむ。
「ふふ、大丈夫よ。彼には意識がきちんとある。味方である貴方に、害を及ぼすことはないわ」
そう言って窮姫は笑ったが、火焔は警戒を完全に解くことは出来なかった。
2
「二人が光輝達と離れたのって、この辺りか?」
「ああ、この辺りだ」
「となると、身を隠すなら、あの森辺りかしら?」
呟いて、琴音が少し離れたところに見える森を指す。
「だろうな。白夜が一緒にいるとはいえ、二人では動くより身を隠している可能性の方が高いだろう」
「とにかく、二人はまず無事を知らせないとですね」
白鬼と鈴麗が言い、彼等と合流していた夜天と雷牙は頷く。
そして彼等が歩き出そうとした時、ふと白鬼と鈴麗が空を見上げた。
「どうした?」
「……来る」
「「「「!!」」」」
白鬼が呟いた時、空から一つの影が下りてきた。
「見付けたぞ。お前らだな。あいつらが言っていたのは……」
そう言った男の放つ異様な雰囲気に、夜天達は身構える。
「……鈴麗。ここは、俺が引き受ける。お前は、そいつらを連れて、あの森に……」
「わかったわ。……行きましょう」
身構えたものの男から放たれている雰囲気と殺気に声を出すことが出来なかった夜天達と違い、白鬼と鈴麗はそう話し合い、鈴麗が振り返って声を掛けてくる。
「行くって、大丈夫なのか?」
「ああ。大丈夫だから、言っている」
刹那の声に、男から視線を逸らさず、白鬼が答えた。
「さあ、行きましょう」
再び声を掛けられ、鈴麗が夜天達を森に誘導しようとする。
彼女についていこうとして、上空から視線を感じ、夜天は視線を向ける。
その先には、一頭の飛竜がいて、その背にいた火焔と目があった。
「……火焔」
「夜天、どうし……、あいつ……」
動かないでいる夜天を不思議に思ったのか、雷牙が声を掛けてきて、すぐに気付き、同じように見上げる。
それに気付いて、刹那と琴音も近くに来た。
「何してる!?早く行け!」
「今は彼に関わっている状況ではありません。さあ!」
「……そうだな。行こう」
聞こえてきた白鬼と鈴麗の声に、夜天は火焔から視線を外すと、三人に声を掛けた。
3
夜天達が白鬼と別れ、森に向かい始める少し前、花音達は光輝と白夜に別行動中のことを話していた。
「……成る程な。向こうの世界で、お前達が戦った奴がつくったキメラ……、そいつらが街を襲撃してきた奴等か」
「正確には、その男の研究所にあったデータを基にして、窮姫がつくったキメラでしょうけどね」
話を聞き、呟いた白夜に、神麗がそう返す。
「でも、一体いつの間にキメラのデータを……」
「……考えられるのは、あの研究者を倒した後でしょうけど。あの研究所はすぐに閉鎖された筈、誰かが侵入したという話も聞かなかったけど……」
沙羅がそう言った時、蒼牙がふとある方向へと視線を向ける。
「……また誰か来た」
「えっ?」
その言葉に、花音達もその方向を見ると、数人の人影が見えた。
「……鈴麗か」
「その声は……、白夜!」
近くに来て気配でわかったのか、白夜が声を掛けると、鈴麗が駆け寄ってきた。
「光輝!それに……」
彼女の後ろからやって来た夜天、雷牙、琴音、刹那が花音と風夜に気付いて、足を止める。
「……もう用事は済んだのか?」
「……ああ」
「詳しい話を聞きたいところだけど、そんな状況じゃなくてな」
夜天に頷いた風夜に、雷牙がそう返した。
「何かあったの?」
「また化け物に襲われたんだ。それも街を襲ってきた奴等とは、比べられないくらい、異常な雰囲気の奴がな」
「ええ、鬼と龍、それ以外にも幾つかの種族が混じっているみたいだった。……たった一人の男だったんけど……」
「!!」
夜天と鈴麗の言葉に、花音は沙羅達を見る。
彼女達も同じ人物が思い浮かんだようだった。
「それって……」
「あいつ、生きてるのか?」
「知ってるのか?」
声を上げた花音と風夜に、白夜が問い掛けてきた。
「うん。でも、あの時、倒したはずじゃ……」
「……やっぱり、ちゃんと確認しておいたほうがよかったかしらね」
信じられないと呟いた花音に、沙羅が溜め息をついて言った。
「でも、よくここまで逃げて来られたな。あいつ、スピードも並の速さじゃなかったのに」
黄牙がそう言う。
「ええ、白鬼が足止めしてる間に……」
「!!足止めって、白ちゃんだけで!?……場所は?」
「この森のすぐ近くです」
「そう、なら行きましょう。一人で相手にするには、少々厄介な相手よ」
真剣な表情で言った神麗に、白夜と鈴麗も状況があまりよくないことを感じとったのか、表情を引き締めていた。
「…………」
すっかり主を変えてしまった風の国の城。
火焔は窮姫に呼び出され、軍の施設を訪れていた。
「ああ、来たわね」
「今度は一体何の用だ?」
「ふふ、貴方にやってきてほしいことがあってね」
「俺一人でか?」
「後の二人は、今国へ戻ってるでしょう。平気よ。ただ貴方は見ていて、データをとってくるだけでいいの」
「?」
「ふふ、こっちよ」
言って、窮姫が歩き出す。
それについていくと、そこは軍の牢だった。
「「「ヴアアア!」」」
「こいつらは……!」
牢の中を覗いた火焔は、中にいた様々な姿をした者達を見て、窮姫を振り返った。
「この前、光の街を襲撃する時に使った……」
「そうよ。その時に貴方達がとってきてくれたデータをもとに、改良したの。そこで、もう一度データをとってきてほしいのよ」
「…………」
「彼等ではなく、《彼》のデータをね」
窮姫が言って、牢の中にいる者達から視線を外し、更に奥へと続く通路へ移す。
その先から、此方に近付いてくる足音が聞こえてくる。
現れたのは、竜と鬼のような腕を持ち、色の異なる翼を生やした男だった。
その異様な姿に、火焔は思わず息をのむ。
「ふふ、大丈夫よ。彼には意識がきちんとある。味方である貴方に、害を及ぼすことはないわ」
そう言って窮姫は笑ったが、火焔は警戒を完全に解くことは出来なかった。
2
「二人が光輝達と離れたのって、この辺りか?」
「ああ、この辺りだ」
「となると、身を隠すなら、あの森辺りかしら?」
呟いて、琴音が少し離れたところに見える森を指す。
「だろうな。白夜が一緒にいるとはいえ、二人では動くより身を隠している可能性の方が高いだろう」
「とにかく、二人はまず無事を知らせないとですね」
白鬼と鈴麗が言い、彼等と合流していた夜天と雷牙は頷く。
そして彼等が歩き出そうとした時、ふと白鬼と鈴麗が空を見上げた。
「どうした?」
「……来る」
「「「「!!」」」」
白鬼が呟いた時、空から一つの影が下りてきた。
「見付けたぞ。お前らだな。あいつらが言っていたのは……」
そう言った男の放つ異様な雰囲気に、夜天達は身構える。
「……鈴麗。ここは、俺が引き受ける。お前は、そいつらを連れて、あの森に……」
「わかったわ。……行きましょう」
身構えたものの男から放たれている雰囲気と殺気に声を出すことが出来なかった夜天達と違い、白鬼と鈴麗はそう話し合い、鈴麗が振り返って声を掛けてくる。
「行くって、大丈夫なのか?」
「ああ。大丈夫だから、言っている」
刹那の声に、男から視線を逸らさず、白鬼が答えた。
「さあ、行きましょう」
再び声を掛けられ、鈴麗が夜天達を森に誘導しようとする。
彼女についていこうとして、上空から視線を感じ、夜天は視線を向ける。
その先には、一頭の飛竜がいて、その背にいた火焔と目があった。
「……火焔」
「夜天、どうし……、あいつ……」
動かないでいる夜天を不思議に思ったのか、雷牙が声を掛けてきて、すぐに気付き、同じように見上げる。
それに気付いて、刹那と琴音も近くに来た。
「何してる!?早く行け!」
「今は彼に関わっている状況ではありません。さあ!」
「……そうだな。行こう」
聞こえてきた白鬼と鈴麗の声に、夜天は火焔から視線を外すと、三人に声を掛けた。
3
夜天達が白鬼と別れ、森に向かい始める少し前、花音達は光輝と白夜に別行動中のことを話していた。
「……成る程な。向こうの世界で、お前達が戦った奴がつくったキメラ……、そいつらが街を襲撃してきた奴等か」
「正確には、その男の研究所にあったデータを基にして、窮姫がつくったキメラでしょうけどね」
話を聞き、呟いた白夜に、神麗がそう返す。
「でも、一体いつの間にキメラのデータを……」
「……考えられるのは、あの研究者を倒した後でしょうけど。あの研究所はすぐに閉鎖された筈、誰かが侵入したという話も聞かなかったけど……」
沙羅がそう言った時、蒼牙がふとある方向へと視線を向ける。
「……また誰か来た」
「えっ?」
その言葉に、花音達もその方向を見ると、数人の人影が見えた。
「……鈴麗か」
「その声は……、白夜!」
近くに来て気配でわかったのか、白夜が声を掛けると、鈴麗が駆け寄ってきた。
「光輝!それに……」
彼女の後ろからやって来た夜天、雷牙、琴音、刹那が花音と風夜に気付いて、足を止める。
「……もう用事は済んだのか?」
「……ああ」
「詳しい話を聞きたいところだけど、そんな状況じゃなくてな」
夜天に頷いた風夜に、雷牙がそう返した。
「何かあったの?」
「また化け物に襲われたんだ。それも街を襲ってきた奴等とは、比べられないくらい、異常な雰囲気の奴がな」
「ええ、鬼と龍、それ以外にも幾つかの種族が混じっているみたいだった。……たった一人の男だったんけど……」
「!!」
夜天と鈴麗の言葉に、花音は沙羅達を見る。
彼女達も同じ人物が思い浮かんだようだった。
「それって……」
「あいつ、生きてるのか?」
「知ってるのか?」
声を上げた花音と風夜に、白夜が問い掛けてきた。
「うん。でも、あの時、倒したはずじゃ……」
「……やっぱり、ちゃんと確認しておいたほうがよかったかしらね」
信じられないと呟いた花音に、沙羅が溜め息をついて言った。
「でも、よくここまで逃げて来られたな。あいつ、スピードも並の速さじゃなかったのに」
黄牙がそう言う。
「ええ、白鬼が足止めしてる間に……」
「!!足止めって、白ちゃんだけで!?……場所は?」
「この森のすぐ近くです」
「そう、なら行きましょう。一人で相手にするには、少々厄介な相手よ」
真剣な表情で言った神麗に、白夜と鈴麗も状況があまりよくないことを感じとったのか、表情を引き締めていた。