造られた命
1
神麗の家で一日休んだ後、沙羅の家で待っていた朔耶、瑠璃、紅牙、蒼牙と合流し、花音達は再び研究所を訪れていた。
前に来た時と同じように研究所の中を進んでいく。
すると、前に来た時と同じように大広間には、巨大キメラの姿があった。
だが、前回とは異なり、檻に入っていなければ、近くに男の姿もない。
「……どうやら、向こうも少しは改良されているみたいね」
襲いかかってはこないが、その獰猛な目は花音達を見下ろしていた。
「……牢は確かあいつの後ろの扉から行けるんだったな」
「……うん。そうだよ」
小声で問い掛けた風夜に、蒼牙が頷く。
「なら、俺が隙をつくる。その間に行け」
「っていいのかよ?一人だけ残していって」
「ああ……」
そう返した風夜の目が金から紅に変わる。
その直後、そこから風夜の姿は消え、K-01の巨体が地響きを上げて倒れた。
「行けっ!」
風夜の声がして、紅牙と蒼牙が弾かれたように走り出し、朔耶が続く。
花音もその後を追いかけようとして、風夜のことも気になり、すぐに止まる。すると、沙羅に軽く肩を叩かれた。
「残りたかったら、残っててもいいのよ?」
「えっ?」
「ふふ、あの子達のことは、私と沙羅さんに任せて。……一人で残していくのは、気が引けるんでしょ?」
続けて言った神麗に、花音は頷く。
「ごめんなさい」
「いいのよ。じゃあ、また後でね」
そう言って、沙羅と神麗は先に行った三人を追っていった。
彼女達を見送った花音の近くに、K-01の攻撃を避けた風夜が着地する。
「やっぱり、一緒に行かなかったか」
「あ、あははっ……」
花音を見て言った風夜に、笑って返す。
「まぁ、いい。残ったなら、協力してもらうぞ」
「うん!」
溜め息をついた風夜に言われ、花音は頷くと、弓を構えた。
2
「ガアアア」
吼えたK-01が床に腕を振り下ろす。
砕けた床が花音達に向かって飛んできたが、風夜が風で吹き飛ばした。
その間に接近してきたK-01が大きく口を開く。
「ちっ……」
K-01の口の中に大量のエネルギーが集まっているのを見た風夜が、舌打ちして結界を張る。
その直後、至近距離から大量のエネルギーがぶつかる。
「っ……!」
その威力と勢いに風夜の身体が後ろに押されるのがわかった。
「いっけぇ……!」
そのまま拮抗状態になってしまったのを見て、花音は弓をK-01のやや上を狙って構えると、光の矢を放つ。
矢は狙った通りに飛んでいき、空中で分裂してK-01に降り注いだ。
「グギャアアァ!」
「っ……、はああっ!!」
矢のダメージを受け、エネルギーを放つのを止めたK-01の腹部に、風夜は魔力で作ったのだろう巨大な球を叩き込む。
それで吹っ飛んだK-01は、壁へとその身体を打ち付けた後、その場に倒れ動かなくなった。
「……やった、のかな?」
「さぁな」
動かなくなったK-01に、花音と風夜は警戒しながらも近付いていく。
その間もK-01が動くことはなかった。
「あ、花音!風夜!」
K-01を倒した花音と風夜が先に進んでくると、それに気付いた瑠璃が飛んできて、その後から沙羅と朔耶がやってくる。
「二人が此処に来たってことは、あの化け物は?」
「とりあえず、倒したらしい」
「ところで、こっちはどうなったの?」
「ふふ、こっちも牢に閉じ込められていた人達は、無事に助け出したわ」
言いながら、沙羅がある方向へ視線を向ける。
そこには黄色い髪の少年に嬉しそうに抱き付いている紅牙と蒼牙の姿があった。
「えっと……彼は?」
二人がくっついているのが誰なのかわからずにいた花音に気付いた紅牙と蒼牙が少年の手を引いてくる。
「花音!風夜!この人が黄兄だよ」
「助け出せたんだ!黄牙兄さんも、皆も!」
嬉しそうに言う二人に、思わず表情が綻ぶ。
「さてと、じゃあ後は此処を脱出すればいいのかしら?」
花音と同じように笑って見ていた神麗が言うと、黄牙と紹介された少年が首を横に振った。
「いや、ただこのまま逃げ出したとしても、また別の人が捕まって、実験が行われるだけだ。あの男とこの施設をどうにかしないと」
「それはいいけど、この人達を連れていく訳にはいかないでしょう」
沙羅が助けた人達を見ながら言うと、黄牙は頷く。
「ああ。今言ったことは、俺が責任持ってやるよ」
「「ええー?」」
それに声を上げたのは、紅牙と蒼牙だった。
「そんなぁ、折角助けたのに……」
「黄兄がそうするなら、俺達だって!」
そう言った二人に、黄牙は鋭い視線を向ける。
「駄目だ!お前達が俺についてきたら、誰が他の人達を……」
「いいじゃない?連れていってあげたら」
「捕まっていた人達は、私達が安全なところへ連れていくから、ね?」
沙羅と神麗に言われ、黄牙は溜め息をついた。
「……わかった。頼むよ」
「花音達はどうする?私達と戻る?」
沙羅に聞かれ、花音は首を横に振る。
そして、黄牙達と残ることにして、沙羅達と別れた。
神麗の家で一日休んだ後、沙羅の家で待っていた朔耶、瑠璃、紅牙、蒼牙と合流し、花音達は再び研究所を訪れていた。
前に来た時と同じように研究所の中を進んでいく。
すると、前に来た時と同じように大広間には、巨大キメラの姿があった。
だが、前回とは異なり、檻に入っていなければ、近くに男の姿もない。
「……どうやら、向こうも少しは改良されているみたいね」
襲いかかってはこないが、その獰猛な目は花音達を見下ろしていた。
「……牢は確かあいつの後ろの扉から行けるんだったな」
「……うん。そうだよ」
小声で問い掛けた風夜に、蒼牙が頷く。
「なら、俺が隙をつくる。その間に行け」
「っていいのかよ?一人だけ残していって」
「ああ……」
そう返した風夜の目が金から紅に変わる。
その直後、そこから風夜の姿は消え、K-01の巨体が地響きを上げて倒れた。
「行けっ!」
風夜の声がして、紅牙と蒼牙が弾かれたように走り出し、朔耶が続く。
花音もその後を追いかけようとして、風夜のことも気になり、すぐに止まる。すると、沙羅に軽く肩を叩かれた。
「残りたかったら、残っててもいいのよ?」
「えっ?」
「ふふ、あの子達のことは、私と沙羅さんに任せて。……一人で残していくのは、気が引けるんでしょ?」
続けて言った神麗に、花音は頷く。
「ごめんなさい」
「いいのよ。じゃあ、また後でね」
そう言って、沙羅と神麗は先に行った三人を追っていった。
彼女達を見送った花音の近くに、K-01の攻撃を避けた風夜が着地する。
「やっぱり、一緒に行かなかったか」
「あ、あははっ……」
花音を見て言った風夜に、笑って返す。
「まぁ、いい。残ったなら、協力してもらうぞ」
「うん!」
溜め息をついた風夜に言われ、花音は頷くと、弓を構えた。
2
「ガアアア」
吼えたK-01が床に腕を振り下ろす。
砕けた床が花音達に向かって飛んできたが、風夜が風で吹き飛ばした。
その間に接近してきたK-01が大きく口を開く。
「ちっ……」
K-01の口の中に大量のエネルギーが集まっているのを見た風夜が、舌打ちして結界を張る。
その直後、至近距離から大量のエネルギーがぶつかる。
「っ……!」
その威力と勢いに風夜の身体が後ろに押されるのがわかった。
「いっけぇ……!」
そのまま拮抗状態になってしまったのを見て、花音は弓をK-01のやや上を狙って構えると、光の矢を放つ。
矢は狙った通りに飛んでいき、空中で分裂してK-01に降り注いだ。
「グギャアアァ!」
「っ……、はああっ!!」
矢のダメージを受け、エネルギーを放つのを止めたK-01の腹部に、風夜は魔力で作ったのだろう巨大な球を叩き込む。
それで吹っ飛んだK-01は、壁へとその身体を打ち付けた後、その場に倒れ動かなくなった。
「……やった、のかな?」
「さぁな」
動かなくなったK-01に、花音と風夜は警戒しながらも近付いていく。
その間もK-01が動くことはなかった。
「あ、花音!風夜!」
K-01を倒した花音と風夜が先に進んでくると、それに気付いた瑠璃が飛んできて、その後から沙羅と朔耶がやってくる。
「二人が此処に来たってことは、あの化け物は?」
「とりあえず、倒したらしい」
「ところで、こっちはどうなったの?」
「ふふ、こっちも牢に閉じ込められていた人達は、無事に助け出したわ」
言いながら、沙羅がある方向へ視線を向ける。
そこには黄色い髪の少年に嬉しそうに抱き付いている紅牙と蒼牙の姿があった。
「えっと……彼は?」
二人がくっついているのが誰なのかわからずにいた花音に気付いた紅牙と蒼牙が少年の手を引いてくる。
「花音!風夜!この人が黄兄だよ」
「助け出せたんだ!黄牙兄さんも、皆も!」
嬉しそうに言う二人に、思わず表情が綻ぶ。
「さてと、じゃあ後は此処を脱出すればいいのかしら?」
花音と同じように笑って見ていた神麗が言うと、黄牙と紹介された少年が首を横に振った。
「いや、ただこのまま逃げ出したとしても、また別の人が捕まって、実験が行われるだけだ。あの男とこの施設をどうにかしないと」
「それはいいけど、この人達を連れていく訳にはいかないでしょう」
沙羅が助けた人達を見ながら言うと、黄牙は頷く。
「ああ。今言ったことは、俺が責任持ってやるよ」
「「ええー?」」
それに声を上げたのは、紅牙と蒼牙だった。
「そんなぁ、折角助けたのに……」
「黄兄がそうするなら、俺達だって!」
そう言った二人に、黄牙は鋭い視線を向ける。
「駄目だ!お前達が俺についてきたら、誰が他の人達を……」
「いいじゃない?連れていってあげたら」
「捕まっていた人達は、私達が安全なところへ連れていくから、ね?」
沙羅と神麗に言われ、黄牙は溜め息をついた。
「……わかった。頼むよ」
「花音達はどうする?私達と戻る?」
沙羅に聞かれ、花音は首を横に振る。
そして、黄牙達と残ることにして、沙羅達と別れた。