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目覚める血

1
花音と風夜が捕まったのとほぼ同時刻。
刹那と星夢は空夜と風華を連れて光の街へ戻ってきていた。
「あっ、やっと見つけた!」
特に会話もないまま、光輝の屋敷の方へ向かっていると、そんな声がして美咲が走ってくる。
「朝起きたら、四人が何処にもいないから皆で探して……、ってあれ?」
そこまで言って、空夜と風華に気付き、目を丸くする。
「花音達は一緒じゃないのか?」
美咲の後からやってきた凍矢に聞かれ、刹那と星夢が目を逸らす。
代わりに口を開いたのは、風華だった。
「あのね、花音ちゃんと風兄様、捕まっちゃったの。私と空兄様を逃がす為に……」
「その話、詳しく聞いた方がよさそうだな」
「じゃあ、私、まだ街の中を探してる皆を呼んでくる」
そう言って美咲が走り去ると、凍矢は自分についてくるように言って歩き出した。
数十分後、光輝の執務室には、今はいない花音と風夜を除いて、全員が集まっていた。
刹那、星夢から話を聞いた後、暫く静まりかえっていたが、神蘭が口を開く。
「それで窮姫の他に四人の者がいると言っていたな」
「あ、ああ」
「神蘭様、その四人というのはもしかしたら……」
「ああ。間違いない。その四人は、窮姫と同じ上級魔族。……奴等も本気で動き出しているということか」
千歳に頷いて、そう続けた神蘭に、夜天達はギョッと目を見開く。
「上級魔族だって!?」
「ちょっと!そんなのが近くにいたら、早く二人を助けないとまずいんじゃない!」
「花音ちゃんと風兄様を早く助けないといけない理由はそれだけじゃないよ!」
琴音に続けて、風華が声を上げた。
「それだけじゃないっていうのは?」
「……処刑までの時間だ。俺達は二日後に処刑されることになっていた。その日付が変更されてないなら……」
空夜の言葉に、光輝が座っていた椅子から立ち上がった。
「……待て」
それを制するように、神蘭が声を上げる。
「二人を助けるのは、私に任せてくれないか?」
「あんたにか?」
言った神蘭を紫影が見る。
「ああ。上級魔族が相手ではお前達が行ったのでは同じことだ。ただ一晩だけ時間をもらえないか?さすがに私だけでも厳しいから、私の仲間を呼ぶ。その為の時間だ。気になるだろうが、救出は任せてもらって、ここで待っていてくれないか?」
「……わかった。二人のことは任せる」
代表するように答えた夜天に、神蘭は大きく頷くと刹那を見た。
「悪いが、お前には協力してもらう。私と私が呼ぶ五人、千歳、昴、星華を連れて、風の国へ行ってもらうぞ」
「って、多くないか?」
「案ずるな。宝珠の力を使えば、帰りに更に三人増えようが造作もないことだ。千歳、昴、星華、宝珠の使い方を教えてやるといい」
そう言って、神蘭は立ち上がる。
「私は早速連絡をとってくる。私の仲間が着き次第、出発するぞ」
その言葉を最後に神蘭は部屋を出ていった。

「……ん?」
牢の中の硬い質素なベッドの上で花音は目を覚ました。
丸くなって眠っている白亜を起こさないように起き上がる。
昨日に比べて、身体の痛みも少し楽になっていた。
「起きたか……」
「あ、おはよう。風夜、身体はどう?」
「昨日に比べたら、いくらかな」
ベッドが一つしかなかった為、床で横になっていた風夜が身を起こしながら答える。
「ごめんね。ベッド使わせてもらって……」
「いや……」
その時、一人の兵士が牢の目の前に来た。
「食事だ」
そう言って、小さなパンと冷たいスープを入れてすぐに立ち去っていく。
「今のこの国の兵士さんだよね?」
「……今の兵や民にとっては、俺達は罪人で、仕える主は大臣ってことなんだろ」
言いながら、花音の分を渡してくれる。彼に礼を言ってから、花音は味気のないパンを口に運んだ。
味気ない食事を終えてから、どのくらい時間が経ったのか、幾つかの足音が二人の牢の前で止まり、鍵が開けられた。
「出ろ。ついてこい」
現れた兵は五人で、二人を囲むようにして歩き出す。
逆らうに逆らえず、歩いていくと、何故か地下水路へと出る。
それを不思議に思っていると、更に足音がして、驚いたような声も聞こえた。
「風夜!?花音!?」
「王様!?」
「父上!?……一体、これはどういうことだ?」
「どうって決まってるだろ?お前達を助けに来た」
言いながら、顔が見えるようにした神蘭に続いて、全員がその姿をさらしていく。
その中には、見たことのない人物が五人いた。
「えっと……」
「心配ない。右から封魔、龍牙、白鬼、鈴麗、白夜……五人共私の仲間だ」
「それで、助けるのはこの三人でいいんだろ?」
「なら、後は脱出するだけだな」
封魔と龍牙と紹介された二人が言う。
「よし、じゃあ……」
「待ってくれ」
刹那が力を使おうとした時、風夜が声を上げた。
「どうしたの?風夜」
「脱出する前に、宝珠を取りにいったら駄目か?早く脱出しないとい けないのはわかってるが、次にいつこの国に来れるかわからないからな」
「……確かに。で、場所は知ってるのか?」
「ああ、宝珠があるのは、此処から北にある谷だ」
その言葉に神蘭は頷いた。
そして、そのまま地下水路を使って城を脱出すると、街を出て、風夜の言う谷へ向かうことになった。
「「「「「「!!」」」」」」
移動中、何かに気付いた神蘭達が足を止める。
「……気付かれたみたいだな」
「えっ!?」
花音達の前で空間が歪み、そこから窮姫と四人の男女が現れる。
(見付かった……!)
それに警戒した花音と風夜の前に、神蘭、封魔、龍牙、白鬼、鈴麗が立ち塞がる。
「此処は俺達に任せろ」
「あなた達は宝珠の所へ行ってください」
「千歳、昴、星華は花音達についていけ」
「白夜、お前もだ」
封魔、鈴麗、神蘭、白鬼が言って、斬りかかっていく。
「行くぞ」
「えっ、でも」
「大丈夫ですよ。神蘭様達に任せて行きましょう」
戸惑う花音に星華が言う。そのまま、背を押され、花音は歩き出した。
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