試練の刻
1
闇の国で火焔と別れ、夜天を加えた花音達は雷の国の検問所に来ていた。
「やっぱり来たか。そろそろだと思ってたぞ」
「雷牙くん!?」
入る為の手続きをしようとした所でそう声がして、その方向を見ると雷牙がいて駆け寄ってきた。
「どうして、雷牙くんは此処に?」
「ん?ああ。夜天から花音と風夜が闇の国に来たことは聞いていたからな。順番からいって次は此処に来るだろうと思って待ってたんだ」
「待ってたっていつからだよ」
「二日前くらいか」
「……お前な、いくら城に居づらいからって俺達のことを理由にしてないだろうな」
「……」
風夜の言葉に雷牙が視線を逸らせる。
それを見て、風夜と夜天は溜め息をついたが、花音は何のことかわからず、同じ様にわからない光輝と顔を見合わせた。
「と、とにかく王と王妃がお待ちだ。こんなところで話してないで行こう」
そう言い、雷牙が踵を返す。何故だかそれに違和感を覚えた。
「さあ、此処だ。……俺は部屋にいるから、話が終わったら呼んでくれ」
雷牙の案内で城の謁見の間前に来た所で、彼は立ち去っていく。
「えっ?雷牙くん!?」
止めようと花音は声を上げたが、風夜と夜天は構わず謁見の間に入って行ってしまい、花音も慌てて彼等を追いかけ中に入った。
「ところで雷牙の奴も相変わらずのようですね」
話が一段落したところで、風夜がそう口を開く。
それを聞いて目の前の王と王妃が表情を曇らせた。
「ああ。……あれから十年間、ずっとな」
「私達は〈本当〉の息子だと思っているのだけど」
「……どういうことだ?」
王妃の言葉に違和感を感じたらしい光輝が問い掛けると、王が答えた。
「私達と雷牙に血の繋がりはない。……雷牙は城の前に捨てられていた子なのだ」
「「!?」」
それを聞いて花音と光輝は目を見開く。
しかし風夜と夜天は知っていたようで、特に驚いている様子はなかった。
「雷牙くんが捨て子!?」
「ああ。兵士が見付けて保護したんだ。それから両親を探したが、見付からなかった」
「だから、私達は子供もいなかったし、私達の子として育てることにしたの。雷牙も幼い頃は私達のこと、本当の両親だと思ってくれてたんだけど」
そう言って王妃は複雑そうに笑っていた。
2
「ほら」
「ありがとう」
険しい山道の足場が悪い場所を雷牙の手を借りながら進んでいく。
今、花音は雷牙と宝珠があるという山へと来ていた。
花音より少し前を歩く雷牙を見ながら、花音は謁見の間での王妃の言葉を思い出す。
『雷牙には養子だということを隠していたのだけど、十年前メイド達が話していたのを聞いてしまったらしくてそれ以降、よそよそしくなってしまったの』
「あのさ、雷牙くん」
「ん?」
「雷牙くんは王様と王妃様のこと、もう両親だと思ってないの?」
その言葉にピタリと雷牙の足が止まる。
ゆっくりと振り返ったその表情は硬かった。
「……お前、それ」
「ごめん。謁見の間で聞いてから気になってて」
そう答えると雷牙は溜め息をついた。
「……俺は本当の両親を知らない。でも、王族でないのは確かなんだ。……知ってしまった以上、何処の者かもわからない俺が気安く呼ぶことは出来ない」
「でも、雷牙くんは今まで王族として働いてたんでしょ。血の繋がりのないことで何か言う人はいたかもしれないけど、自分のするべきことをきちんとやってきたんだもん。自信を持っていいんだよ」
「花音……」
「血の繋がりも大事かもしれないけど、それだけじゃないと思うよ。何より王様と王妃様は雷牙くんが距離をおいているのが寂しそうだった。きっと小さかった時みたいに親だと呼んでほしいんだよ」
「……」
花音がそう言うと、雷牙は何かを考えているようだった。
「ただいま」
「おかえり、姉上」
「雷牙は?」
宝珠を持って城に戻ると、風夜が聞いてきた。
「雷牙くんは報告しに行ったよ」
「そうか」
「……ふふ」
「何笑ってるんだ?」
「ううん。何でもないよ」
夜天にそう返し、別れ際の雷牙の言葉を思い出す。
『ずっとよそよそしくしてたから今更って気もするけど、もう一度やり直してみるよ。……親子としてな』
その言葉に少しでも何かが変わればいいと思った。
3
「……」
夕食を終え、与えられた部屋へ戻ると花音はベッドで眠りについていた。
「……ん……?」
眠ってどのくらい経ったのか、不意に人の気配を感じて目を覚ます。
「風夜?光輝?夜天くん?雷牙くん?」
ベッド横に立っている人影に夜中に来るとは思えないものの、思い付く名を上げたが返事はない。
それを不思議に思って見上げ、手に何か光る物を持っているのに気付く。
「っ……」
振り下ろされたそれを咄嗟に避ける。
避けたことで枕に突き刺さった物を見ると、それは短剣だった。
突き刺した人物は黒いフード付きのマントを着ていて顔が見えない。
再びその人物が短剣を構えなおしたのを見て、花音は部屋を飛び出した。
「はぁ、はぁ……」
城の中にいてはまずいと思い、外に出る。
何処へ逃げればいいかわからないが、追ってくる者から逃れる為走り出す。
城から出てしまえば、風夜達に助けを求めることも出来ないが、なるべく自分でどうにかしたかった。
何とか追ってくる者を撒けないかと何度か角を曲がる。
だが、広場まで来たところで花音は自分が此処に来るように追い込まれたのだと気付いた。
先は行き止まりでとうとう追い付かれる。
「……悪いな」
「えっ?」
(この声!!)
聞き覚えのある声に気をとられ、迫ってきていた短剣に気付くのが遅れ、痛みに備えて目を閉じる。
「ぐっ……」
だが痛みは訪れず、呻き声と短剣の落ちる音に目を開いた。
何が起きたのかと見れば、襲撃者は電気がまとわりついている手を押さえていた。
「花音!」
「雷牙くん!?」
声がして雷牙が走ってくる。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
雷牙にそう答えると彼はほっと息をついて、襲撃者に向き直った。
「お前、何者だ!?何故こいつを……!!」
そこまで言って、何かに気付いたように花音を突き飛ばし、自分も飛び退く。
一瞬遅れて、地面が割れ、そこから水が吹き上がった。
4
「なっ!?」
「この力……!」
はっとしたように雷牙が視線を前に移す。
その先ではマントを羽織った人物が二人増えていた。
「……やっぱりお前はそっち側か」
「!?その声、まさか……」
それまで手を押さえていた人物が口を開く。
それに雷牙が目を見開いた時、誰かの笑い声が聞こえてきた。
「あはは、あははは」
「聖ちゃん!?」
笑いながら現れたのは聖で、彼女はマントの三人組の近くまできて足を止める。
「ふふ、久し振りですね。……この三人のこと気になります?」
「お前は知ってるんだな」
「ええ。知ってますよ、私も……貴女方も」
その言葉に嫌な予感がした。
「さあ、気になって仕方ないみたいですし、顔を見せてあげたらどうですか?」
「「「……」」」
その言葉に三人の手がフードにかかり、ゆっくりと外されていく。
「……嘘っ……」
「お前ら!?」
フードを外した姿に目を見開く。そこにいたのは、火の国へ戻ったはずの火焔とまだ再会していなかった水蓮と大樹だった。
「どうして……?」
自分を狙ってきたのが彼等とは信じられなかった。
「おい!一体どういうことなんだ?お前ら、何を考えているんだよ!?」
「「「……」」」
声を荒げた雷牙に三人は答えない。
「何で何も言わないんだよ!」
「ふふ、言えるわけないわよね。貴方方は自分達の国が私達に狙われるのが嫌で、私達に協力することにしたんだから」
そう言って、聖は雷牙を見た。
「それで雷の国はどうするのかしら?火・水・地の国と違って返事はまだないのだけど」
「……そんなの決まってるだろ。俺は……、この国はお前達に協力する気はない!」
言いきった雷牙に聖から表情が消える。
「そう……。まあ、いいわ」
そう言って聖が指を鳴らす。
それと同時に陰が雷牙を拘束した。
「雷牙くん!」
「人の心配してる場合?私達の狙いは貴女なのよ」
その声に視線を戻すと、聖の手に陰が集まっていた。
聖だけではない。火焔の手には炎が、水蓮の手には水が集まり、大樹の手は地面に当てられている。
「……悪いな、花音」
「……出来るならこんなことしたくないけど」
「こうしないと私達の国が危ないの。許して……」
「やめろ!」
身動きのとれない雷牙の声に構わず、四つの力が迫ってくる。
それを避けることも防ぐこともしないで立ち尽くしていた花音と迫ってくる力の渦の間に誰かが割ってはいってくるのが見えた。
ドオオンッ
迫ってきた力が壁のようなものにぶつかり散っていく。
「っ!……大丈夫か?」
「風夜……!」
四つの力を受け止めたまま、風夜が肩越しに振り返ってくる。
かと思うと、火焔達の方へ光球と闇の球が飛んでいき彼等が力を使うのを中断させた。
「姉上!」
「二人共、無事か?」
「光輝!夜天くんも!」
駆け寄ってきた二人が聖と共にいる三人を見て目を見開く。
「火焔、水蓮、大樹?一体、これはどういうことなんだ?」
「どうもこうも見たままだよ。あいつらは陰の一族についたんだ」
自由になった雷牙が夜天に言う。
「そうよ。彼等は私達側。ついでに教えておくと、彼等の国ごとね。そして」
聖がそこまで言ったところで少し離れた場所で爆発が起きた。
「な、何?」
「火・水・地、そして我が陰の一族の軍よ。今のは警告。……一時間時間をあげるわ。一時間以内に今まで集めた宝珠とその子を差し出せば見逃してあげる」
「聖ちゃ……」
「行くぞ」
聖の方へ足を踏み出しかけ、風夜に腕を掴まれる。
そのまま城の方へ引っ張られた。
闇の国で火焔と別れ、夜天を加えた花音達は雷の国の検問所に来ていた。
「やっぱり来たか。そろそろだと思ってたぞ」
「雷牙くん!?」
入る為の手続きをしようとした所でそう声がして、その方向を見ると雷牙がいて駆け寄ってきた。
「どうして、雷牙くんは此処に?」
「ん?ああ。夜天から花音と風夜が闇の国に来たことは聞いていたからな。順番からいって次は此処に来るだろうと思って待ってたんだ」
「待ってたっていつからだよ」
「二日前くらいか」
「……お前な、いくら城に居づらいからって俺達のことを理由にしてないだろうな」
「……」
風夜の言葉に雷牙が視線を逸らせる。
それを見て、風夜と夜天は溜め息をついたが、花音は何のことかわからず、同じ様にわからない光輝と顔を見合わせた。
「と、とにかく王と王妃がお待ちだ。こんなところで話してないで行こう」
そう言い、雷牙が踵を返す。何故だかそれに違和感を覚えた。
「さあ、此処だ。……俺は部屋にいるから、話が終わったら呼んでくれ」
雷牙の案内で城の謁見の間前に来た所で、彼は立ち去っていく。
「えっ?雷牙くん!?」
止めようと花音は声を上げたが、風夜と夜天は構わず謁見の間に入って行ってしまい、花音も慌てて彼等を追いかけ中に入った。
「ところで雷牙の奴も相変わらずのようですね」
話が一段落したところで、風夜がそう口を開く。
それを聞いて目の前の王と王妃が表情を曇らせた。
「ああ。……あれから十年間、ずっとな」
「私達は〈本当〉の息子だと思っているのだけど」
「……どういうことだ?」
王妃の言葉に違和感を感じたらしい光輝が問い掛けると、王が答えた。
「私達と雷牙に血の繋がりはない。……雷牙は城の前に捨てられていた子なのだ」
「「!?」」
それを聞いて花音と光輝は目を見開く。
しかし風夜と夜天は知っていたようで、特に驚いている様子はなかった。
「雷牙くんが捨て子!?」
「ああ。兵士が見付けて保護したんだ。それから両親を探したが、見付からなかった」
「だから、私達は子供もいなかったし、私達の子として育てることにしたの。雷牙も幼い頃は私達のこと、本当の両親だと思ってくれてたんだけど」
そう言って王妃は複雑そうに笑っていた。
2
「ほら」
「ありがとう」
険しい山道の足場が悪い場所を雷牙の手を借りながら進んでいく。
今、花音は雷牙と宝珠があるという山へと来ていた。
花音より少し前を歩く雷牙を見ながら、花音は謁見の間での王妃の言葉を思い出す。
『雷牙には養子だということを隠していたのだけど、十年前メイド達が話していたのを聞いてしまったらしくてそれ以降、よそよそしくなってしまったの』
「あのさ、雷牙くん」
「ん?」
「雷牙くんは王様と王妃様のこと、もう両親だと思ってないの?」
その言葉にピタリと雷牙の足が止まる。
ゆっくりと振り返ったその表情は硬かった。
「……お前、それ」
「ごめん。謁見の間で聞いてから気になってて」
そう答えると雷牙は溜め息をついた。
「……俺は本当の両親を知らない。でも、王族でないのは確かなんだ。……知ってしまった以上、何処の者かもわからない俺が気安く呼ぶことは出来ない」
「でも、雷牙くんは今まで王族として働いてたんでしょ。血の繋がりのないことで何か言う人はいたかもしれないけど、自分のするべきことをきちんとやってきたんだもん。自信を持っていいんだよ」
「花音……」
「血の繋がりも大事かもしれないけど、それだけじゃないと思うよ。何より王様と王妃様は雷牙くんが距離をおいているのが寂しそうだった。きっと小さかった時みたいに親だと呼んでほしいんだよ」
「……」
花音がそう言うと、雷牙は何かを考えているようだった。
「ただいま」
「おかえり、姉上」
「雷牙は?」
宝珠を持って城に戻ると、風夜が聞いてきた。
「雷牙くんは報告しに行ったよ」
「そうか」
「……ふふ」
「何笑ってるんだ?」
「ううん。何でもないよ」
夜天にそう返し、別れ際の雷牙の言葉を思い出す。
『ずっとよそよそしくしてたから今更って気もするけど、もう一度やり直してみるよ。……親子としてな』
その言葉に少しでも何かが変わればいいと思った。
3
「……」
夕食を終え、与えられた部屋へ戻ると花音はベッドで眠りについていた。
「……ん……?」
眠ってどのくらい経ったのか、不意に人の気配を感じて目を覚ます。
「風夜?光輝?夜天くん?雷牙くん?」
ベッド横に立っている人影に夜中に来るとは思えないものの、思い付く名を上げたが返事はない。
それを不思議に思って見上げ、手に何か光る物を持っているのに気付く。
「っ……」
振り下ろされたそれを咄嗟に避ける。
避けたことで枕に突き刺さった物を見ると、それは短剣だった。
突き刺した人物は黒いフード付きのマントを着ていて顔が見えない。
再びその人物が短剣を構えなおしたのを見て、花音は部屋を飛び出した。
「はぁ、はぁ……」
城の中にいてはまずいと思い、外に出る。
何処へ逃げればいいかわからないが、追ってくる者から逃れる為走り出す。
城から出てしまえば、風夜達に助けを求めることも出来ないが、なるべく自分でどうにかしたかった。
何とか追ってくる者を撒けないかと何度か角を曲がる。
だが、広場まで来たところで花音は自分が此処に来るように追い込まれたのだと気付いた。
先は行き止まりでとうとう追い付かれる。
「……悪いな」
「えっ?」
(この声!!)
聞き覚えのある声に気をとられ、迫ってきていた短剣に気付くのが遅れ、痛みに備えて目を閉じる。
「ぐっ……」
だが痛みは訪れず、呻き声と短剣の落ちる音に目を開いた。
何が起きたのかと見れば、襲撃者は電気がまとわりついている手を押さえていた。
「花音!」
「雷牙くん!?」
声がして雷牙が走ってくる。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
雷牙にそう答えると彼はほっと息をついて、襲撃者に向き直った。
「お前、何者だ!?何故こいつを……!!」
そこまで言って、何かに気付いたように花音を突き飛ばし、自分も飛び退く。
一瞬遅れて、地面が割れ、そこから水が吹き上がった。
4
「なっ!?」
「この力……!」
はっとしたように雷牙が視線を前に移す。
その先ではマントを羽織った人物が二人増えていた。
「……やっぱりお前はそっち側か」
「!?その声、まさか……」
それまで手を押さえていた人物が口を開く。
それに雷牙が目を見開いた時、誰かの笑い声が聞こえてきた。
「あはは、あははは」
「聖ちゃん!?」
笑いながら現れたのは聖で、彼女はマントの三人組の近くまできて足を止める。
「ふふ、久し振りですね。……この三人のこと気になります?」
「お前は知ってるんだな」
「ええ。知ってますよ、私も……貴女方も」
その言葉に嫌な予感がした。
「さあ、気になって仕方ないみたいですし、顔を見せてあげたらどうですか?」
「「「……」」」
その言葉に三人の手がフードにかかり、ゆっくりと外されていく。
「……嘘っ……」
「お前ら!?」
フードを外した姿に目を見開く。そこにいたのは、火の国へ戻ったはずの火焔とまだ再会していなかった水蓮と大樹だった。
「どうして……?」
自分を狙ってきたのが彼等とは信じられなかった。
「おい!一体どういうことなんだ?お前ら、何を考えているんだよ!?」
「「「……」」」
声を荒げた雷牙に三人は答えない。
「何で何も言わないんだよ!」
「ふふ、言えるわけないわよね。貴方方は自分達の国が私達に狙われるのが嫌で、私達に協力することにしたんだから」
そう言って、聖は雷牙を見た。
「それで雷の国はどうするのかしら?火・水・地の国と違って返事はまだないのだけど」
「……そんなの決まってるだろ。俺は……、この国はお前達に協力する気はない!」
言いきった雷牙に聖から表情が消える。
「そう……。まあ、いいわ」
そう言って聖が指を鳴らす。
それと同時に陰が雷牙を拘束した。
「雷牙くん!」
「人の心配してる場合?私達の狙いは貴女なのよ」
その声に視線を戻すと、聖の手に陰が集まっていた。
聖だけではない。火焔の手には炎が、水蓮の手には水が集まり、大樹の手は地面に当てられている。
「……悪いな、花音」
「……出来るならこんなことしたくないけど」
「こうしないと私達の国が危ないの。許して……」
「やめろ!」
身動きのとれない雷牙の声に構わず、四つの力が迫ってくる。
それを避けることも防ぐこともしないで立ち尽くしていた花音と迫ってくる力の渦の間に誰かが割ってはいってくるのが見えた。
ドオオンッ
迫ってきた力が壁のようなものにぶつかり散っていく。
「っ!……大丈夫か?」
「風夜……!」
四つの力を受け止めたまま、風夜が肩越しに振り返ってくる。
かと思うと、火焔達の方へ光球と闇の球が飛んでいき彼等が力を使うのを中断させた。
「姉上!」
「二人共、無事か?」
「光輝!夜天くんも!」
駆け寄ってきた二人が聖と共にいる三人を見て目を見開く。
「火焔、水蓮、大樹?一体、これはどういうことなんだ?」
「どうもこうも見たままだよ。あいつらは陰の一族についたんだ」
自由になった雷牙が夜天に言う。
「そうよ。彼等は私達側。ついでに教えておくと、彼等の国ごとね。そして」
聖がそこまで言ったところで少し離れた場所で爆発が起きた。
「な、何?」
「火・水・地、そして我が陰の一族の軍よ。今のは警告。……一時間時間をあげるわ。一時間以内に今まで集めた宝珠とその子を差し出せば見逃してあげる」
「聖ちゃ……」
「行くぞ」
聖の方へ足を踏み出しかけ、風夜に腕を掴まれる。
そのまま城の方へ引っ張られた。