土方十四郎を名乗る者
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その日の夕方、面倒臭がるハクを無理矢理引きずって連れてきたのはドーナツの店
『なんでドーナツなんだよ』
「好きだろ、お前」
『はぁ!?』
店内に無理矢理引きずってショーケースの前にハクを連れてくれば、ハクはパチパチと目を瞬かせた後、真選組に来た時、初めて行った時と同じドーナツを指差したのだった
店を出た後、堤防の上から夕日の輝く海を見ながら、ハクはドーナツを食べた
「それは、ハクが好きだったもんだ、美味いだろ」
『へぇ………』
「お前が選んだのも、アイツが好きだったドーナツと同じだ」
ハクは何も答えずに最後の一口を食べ終えた
荒屋に戻ると、ハクがちらりとこちらを見る
『泊まるのは勝手だが、布団はねぇからな』
ハクはそう言うと真選組に来たばかりの頃と同じように、刀を持ったまま柱にもたれるようにして座った
「ハク、お前まさかそのまま寝る気か!?」
『………だったら悪いのか』
「布団で寝てたろ、お前……」
『へぇ……そうなのか、記憶をなくす前の俺は随分マヌケなんだな』
「寝れるようになったんだよ、普通に、布団で」
『どうやって?』
「どう………や……って………って………」
ハクが初めて布団で眠ったのは俺が無理矢理布団で寝させようとしてそのまま寝落ちしてしまったのが始まりで、それ以降は俺の着流しを抱き枕に………
『オイ、顔赤いぞ』
「へぁ!!?」
『んで?俺はどうやったら普通に寝たんだよ』
「それは……その……」
ハクは持っている刀に頭をもたれさせるようにしながら、俺の答えを待っている
「俺とその……そ……ね……」
『あ?』
「………添い寝」
『…………ぷっ、ふはははははは!冗談だろ?
………ってオイ!?』
心底可笑そうに笑うハクに無性に腹が立った俺は、
笑うハクをそのまま腕の中に閉じ込め、硬い床板の上にゴロンと寝転がった
『なにしやがるクソ、離せ!!』
「暴れんなじっとしてろ!」
『ックソ……こんなんで寝れる訳ねぇだろ』
「じっとしてりゃ眠くなる」
俺が離す気がないと分かったのか、諦めたらしいハクは呆れたようにため息をついて身体の力を抜いた
『………オイ』
「なんだよ」
『本気でこれで、俺は、寝……て…………』
「……ハク?………マジか」
まるで催眠術にでもかかったようにあっさり眠りについてしまったハクに、顔がニヤけてしまう
すやすやと寝息を立てるハクの眉間からはシワがなくなり、見覚えのあるハクの寝顔だった
選んだドーナツと、こうして記憶がないにも関わらず、俺の腕の中で無防備に寝るハクの様子に、記憶はきっと戻るという確信が持てる
「さっさと思い出せよ、ハク」
眠るハクの頭を撫でながら、俺も眠る為に目を閉じる
枕も敷布団もなく身体に直接触れる硬い床に、荒屋が風で軋む音
寝る環境としては決していいとはいえないはずなのに、腕の中にある体温がじんわりと俺を眠りへと誘う
こんなに心地よい眠気に襲われるのは、果たして何日、いや、何週間ぶりだろうか
日が昇るまで俺もハクも目を覚ますことはなかった
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