貴方といれば大丈夫
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目の前にいる男、奈落の首領である虚の姿を捉え、ハクは直様距離を取る
「確か、例の薬で記憶が消されていたのだったな」
『………』
刀を持つハクの手がカタカタと震える
本能的に感じる、目の前にいる相手には勝てないと
すると、瞬きの間に目の前に虚が現れ、ハクの首を掴んで木に押し付ける
『うっ、ぐ……』
「師を忘れ、同胞を忘れ、今は天に弓を引くか
何人もの人間を殺めたお前が日向の道を歩こうと言うのか、朽」
『朽、なん、て、名前……知らな、い
私はハク……だ!』
ハクの返答に虚は懐から液体の入った小瓶を取り出す
「朽でもハクでも無くなったお前が一体何者になるのか、この長い生の暇つぶしくらいにはなるだろう」
虚はハクの顎を押し口を無理矢理開かせ、小瓶の中の液体を口の中に流し込む
抵抗できないハクの喉が動いたのを確認して、虚はハクの首から手を離す
『ッ、ゲホ、ゲホ……っあ、あぁぁぁぁあっ!!!』
頭を抱え、奈落の血で染まった地面をのたうち回るハクを、虚の何の感情もない冷たい瞳が見下ろす
「次はどんな人物になるのか、せいぜい私を楽しませてくれ」
虚はそう呟くと、ハクを置いて去っていった
『……ぐ、………っ……』
頭の中が、ジクジクと痛む
脳内を熱い何かで溶かされているような、凄まじい痛み
ハクとして出会った人々の顔が次々と浮かんでは次々と消えていく
『の……ぶめっ……』
薄れていく意識の中、浮かぶ信女の顔
不思議なことに信女の顔は今より幼い顔もチラつく
『そ、か……信女は、ずっ……と』
うっすらと蘇った記憶ですら、一瞬の間に暗闇の中に消えてしまった
『……と……しろ』
最後に浮かんだのは土方の顔
イヤリングを貰ったあの日、
忘れないでくれと願う土方に、何があっても絶対に忘れないと約束した
ハクはボヤける視界の中、懐から片方だけのイヤリングを取り出し、手拭いに包んだまま、願うように握りしめて額に当てた
『……忘れ、るな……忘れ、るなっ……!』
頭を撫でてくれたあの優しく硬い掌を
抱きしめてくれた時の温もりと、少しの苦しさを
背負ってくれた背中の広さと、安心感を
醜くなんてないと、優しく響く低い声を
慰める為にという口実で触れてしまったタバコの苦味のある唇を
優しく見つめてくれるあの瞳を
『忘れるな……忘れるな、忘れるな!!!』
土方に抱く、この感情を
『忘れ……たく……ないっ………十四郎……』
奈落達の死体が転がる中、ハクは意識を手放した