貴方といれば大丈夫
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
島を走り回った後、ハクは数人の怪我人を見つけた
その間もずっと土方の真似をしていたのは、隊士達を元気付けるためでもあり、同時にハク自身の気持ちを奮い立たせる為でもあった
船が最後の一隻になった時、ハクは黒縄島で2度目の朝日を見た
「副長早く!」
先に船に乗せた隊士達が、ハクを呼ぶ
『あぁ』
ハクが船に足をかけた時、背後に今までなかった気配が突然現れたのを感じる
刀に手をかけ振り返るが、そこには誰の姿もないだが、確実に迫ってくる大勢の気配
間違いなく、残党狩りの為に放たれた奈落の刺客達だ
『………先に行け』
「え、でも副長……船はもうこれしか!」
船が最後であることは、ハクも分かっている。だが、追っ手がここへ来てしまえば船に乗る手負いの者たちなどなんの抵抗も出来ずに殺されてしまうのは明らかだった
自分が残れば、少なくとも彼らの乗った船が沖に出る程度の時間は稼ぐことができる筈だ
『行け!』
「でもっ!」
『行けぇぇぇぇえ!!!』
ハクから放たれるビリビリと腹に響くような土方の声に、船に乗った隊士達は弾かれるように船を漕ぎ始める
そしてその声を発したハク自身も、こちらへ向かってくる奈落達の元へと駆け出した
やがて、ハクの目の前に現れたのは20人以上の奈落達
『テメェらの相手はこの俺だ』
多勢に無勢にもかかわらず、土方になりきるハクは咥えタバコのまま不敵な笑みを浮かべた
『……ハァ、ハァ』
最後の船を送り出した時昇り始めていた太陽はすっかり西日となり、ハクとその周りに長い影を落とす
聞こえるのは自身の荒い呼吸音だけで、足元の奈落達はもう音を発することはない
この2日、ろくに食べることも寝ることも出来ていないハクは刀を地面に突き立て、座り込む
刀は激しい戦いのせいでかなり刃こぼれしてしまっていた
ハクはその刀をチラリと見て吐き捨てるように笑う
『………私みたい』
もし、土方が今ここにいたら、なんという言葉を自分にかけたのだろうか
「そんなこと言うな」って、怒るのだろうか
もう一度、会わなければその答え合わせは出来ない
『………すぐ、追いつくから、十四郎』
ハクが刀を杖にし立ちあがろうとすると、すぐそばに先ほどまで無かった長い影が落ちている
今まで、そこには何の気配も無かった筈だ
先程の奈落達のように近づいてくる気配でさえも
ハクがゆっくりと顔を上げると、そこにいたのは濡羽色の服に身を包んだ淡い髪色の長髪の男
「部下がなかなか帰ってこないと思えば……懐かしい顔だ
………朽」