猫が紡ぐ希望
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江戸に戻ってからの真選組は忙しかった
黒縄島に置いて来てしまった仲間たちの弔いもろくにできぬまま、天導衆の傀儡と化した幕府を倒すべく、新たな道を進むための準備に勤しんでいた
黒縄島で近藤に助けられた見廻組の一部はそのまま真選組に入隊し、佐々木も参謀として加わることになり、信女もそれに着いてくる形となった
真選組が仮の隠れ家としている屋敷の一室で仕事をする土方の灰皿は少し前のように吸い殻で溢れ返る生活に逆戻りになってしまった
「土方さん、ヒデェ隈でさァ、ちゃんと寝てくだせェよ」
「……あぁ」
「そういや、ハクの奴はアンタの羽織り抱き枕にして寝てやしたね、アンタもそうすりゃ寝れんじゃねぇんですかィ?」
冗談めかして言う沖田だが、彼自身も覇気がなく、ただやらなければいけないことを淡々とこなしているだけだった
土方もそれが分かっているので、地雷になりかねないその冗談を聞き流すことが出来ていた
そんな生活をしているある日、小銭形とハジがやって来た
「これ、ハクさんと副長の部屋の荷物でやんす」
そう言ってハジが土方に手渡したのは自分と、ハクの僅かな荷物
「悪いな」
そう言って力なく笑う土方の顔をハジは心配そうに見つめる
「副長、大丈夫でやんすか?」
「……仲間が死ぬのは……何回経験しても慣れないもんだな」
「………副長」
ただの仲間なんかじゃないでしょうと、ハジは言いたかったが、そんなことは土方自身が1番分かっているだろうとその先の言葉を紡ぐことは出来なかった
土方は自室にしている部屋に戻りハクの荷物を見る
ハクの服といえば隊服に女中の服、沖田のお下がりの袴に僅かな寝巻き、そして抱き枕がわりの土方の羽織り
こんなタバコ臭いものをよく欲しがったものだと、改めて羽織の匂いを嗅ぐと、相変わらず染み付いた俺のタバコの匂いと共に、僅かにハク自身の甘い香り
「変態か俺は」
あまりにも少ないソレに着物を買ってやるべきだったと今更どうしようもない後悔が浮かぶ
そのままハクの荷物を見ていると、あの宝石店の紙袋がシワひとつない状態で入っていた
袋の中の箱を開けると、そこには土方が半ば無理矢理プレゼントした、“泡沫石”のイヤリング
「……ん?」
しかし、箱の中に入っているのは片方だけだった
「もう一つは……もしかしてハクが……?」
ハクはイヤリングを着けてやった直後も、すぐに外して箱に戻していた
傷がついたら困るからと
それでも、あの場に持って行ったのだと思うと、嬉しいような、胸が締め付けられるような、どちらにせよ苦しい感情が土方を襲う
「……ハァ」
自分はこんなにも涙脆かっただろうかとため息と同時に滲んだ視界に呆れる
土方はイヤリングを箱にしまい、それをお守りにするように着物の裾に突っ込んだ
するとドタドタと廊下を走ってくる音がする
「副長副長!大変です!!」
「うるせぇぞ山崎、なんだ」
「こ、黒縄島で、間に合わなかった奴らが、帰って来たんです!!」
山崎の言葉に、土方は足がもつれそうになりながらも屋敷の入り口に向かった
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