ただいまもドーナツ
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俺とハク、今井信女の3人でそれぞれ両手にドーナツの箱を持って拠点としている寺の前までやってきた
門番をしている隊士達は俺たちの姿を見るなり涙を流しながら門を開ける
顔を見て判断するのではなく、ちゃんと身分証なりなんなりを確認してから門を開けろと上司としては言いたい所だが今そんな事を言うのはきっとヤボだ
開いた門の先には俺を送り出してくれた近藤さんに総悟、見知った真選組の面々が出迎えてくれる
「ハクちゃん!トシ!おかえり!!!」
「ただいま、近藤さん」
『ただいま、勲
ドーナツいっぱい買ってきた、みんなで食べよう』
ハクがそう言って自慢げに掲げるドーナツの箱はさっき落としたせいで角が潰れてしまっていたが、その場にいた誰一人、そんなことは気にしていなかった
『信女のはこれね』
「……ありがとう」
寺の縁側に座り、信女の好きなドーナツを差し出したハクが、信女の顔を覗き込む
信女の目は先程ハクと再会した時に散々泣いてしまったせいで、パンパンに腫れて真っ赤になっていた
『信女目が腫れてる、氷貰ってくる』
立ち上がろうとするハクの着物の裾を、信女がぎゅっと掴んで引き止める
「やだ、行かないで、ハクはここにいて」
まるで子供のように駄々をこねる信女に、ハクは柔らかく微笑むと、また信女の隣に腰を下ろした
「おやおやまぁまぁ、元見廻組副長殿がまるでお子ちゃまですねィ」
後ろからやって来た沖田総悟は、信女とは反対側のハクの隣に腰を下ろす
ハクは手元にあるドーナツの箱から総悟の口に合いそうなものを選び、総悟へと差し出す
『総悟、ただいま』
「さっき聞きやしたよ
………よく、帰ってきやした」
ドーナツをひったくるようにしてハクから受け取り、静かにそう言う総悟にハクは満足げに自分の分のドーナツを頬張る
「自分だってお子ちゃま」
「あぁ?」
「何」
ハクを挟んでバチバチと火花を散らす信女と総悟だが、ハクはそんな状況を全く気にせず、幸せそうにドーナツを頬張っている
するとハクの前に、数十人の隊士達がやってくる
「「「「ハクさん!!!」」」」
『あ』
大きな声でハクを呼ぶ隊士達の顔に、ハクは覚えがあった
黒縄島でハクが身を挺して逃した隊士達、その時の傷跡が残っている者も何人かいるが、全員元気そうだ
「黒縄島ではありがとうございました!」
「ハクさんがいなかったら俺達みんな諦めて、あそこで死んでました」
「ハクさんがいたお陰で美味しいドーナツが食べれてます!!」
『みんな元気で良かった、私もみんなとまた会えて嬉しい』
ハクのその一言にハクに助けられた隊士達は一気に涙を流した
ドーナツを手にハクの周りに溢れる人を少し離れた所から近藤と土方は見ていた
「お疲れ様トシ、改めてハクちゃんと一緒に帰ってきてくれてありがとう」
ドーナツのカスを頬につけたままニカッと笑う近藤に、普段は甘いものを好んで食べない土方も、マヨネーズをたっぷり絞ったドーナツを口に運ぶ
「にしてもハクちゃんが初めてウチにきた時からは考えられないよなぁ
あんな風に、優しく笑える子だったんだな」
「………あぁ」
ハクの隣は誰にも譲らないというように腕をぎゅっと抱きしめている信女とそれをからかう総悟、そしてハクに助けられた元真選組、元見廻組の隊士達
ハクはその中で笑い声を上げるわけではないものの、ただただ柔らかく、花開くように微笑んでいた
「お疲れ様でした、土方さん」
後ろから響く声に土方が振り向くと、そこにいたのは元見廻組局長である佐々木異三郎だった
「………あぁ」
「信女さんがあんなに嬉しそうにしているのはやはりハクさんが帰ってきたおかげですね
最も、彼女に助けてもらったお陰で私は今ここにいるわけですが」
「アンタだろ、ハクの居場所を探すように万事屋に頼んだのは」
土方が口元についたマヨネーズを拭ってそう尋ねると、佐々木は少し口角を上げて、懐から紙を取り出す
「依頼料は折半ということでよろしいですか?」
ピラリと土方の目の前に現れたソレは、それなりの額が記された領収書
「アンタ、ぼったくられてるぞ」
「私の方はもう払っておきましたので
土方さんの支払いは江戸に戻った時の出世払いでいいのでは」
土方はその領収書をひったくると、嫌々ながらも自分の懐にしまった
「まぁとにかく、ハクちゃんもトシも無事に元気で帰ってきてくれて良かった!」