ただいまもドーナツ
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それから2日、ハクの足の裏の怪我はすっかり良くなり、頭の精密検査も特に異常なしということで退院が決まった
荒屋に置いたままだったハクの荷物を持って病院まで迎えに行こうと準備をしていると、ハクが持っていた刀が目に入る
手入れ不足で少し抜きにくい刀を鞘から抜くと、よくこれで戦っていたなと思うほどの刃こぼれと少しの錆
「………綺麗だな」
それはきっと、自分の刀がその状態であった場合、きっと出なかったであろう感想
ハクが俺達や仲間達を護る為に戦い、その為についた傷
そう思うと不思議と刃こぼれや錆の中、刀特有の鈍い鋼の輝きを未だ放つその様子にハクが重なり、『綺麗だ』という感想が自然と溢れた
病院を後にし、京へと向かう俺とハクの足取りは軽く、予定よりもかなり早く京での拠点としている寺の近くまでやって来た
途中にあったミスドーナツで店のショーウィンドウが空っぽになるほど大量のドーナツを買い、俺もハクも甘い香りの詰まった箱を両手一杯に持ち、拠点への道を歩く
ドーナツを買う金は俺が出すと言ったのだが、ハクは頑として『私が払う』と譲らず、いつか俺に差し出してきたあの通帳から下ろした金でドーナツを買っていた
真選組に来たばかりの頃からは想像もつかないが、今のハクらしい使い方に俺の口元も緩む
拠点の寺まであと少しというところで、ハクの足がピタリと止まる
「?どうしたハク」
『信女』
ハクの視線の先には今井信女がいた
彼女もこちらに気づいたらしく、驚いた顔のまま立ち尽くしている
ドサドサッと大量のドーナツが入った箱が落ちる音と共に、ハクが今井信女の元へと駆け出し、今井信女に思い切り抱きついた
『ただいま、信女』
「………ふっ、うっ……ハク……ハク!!」
大粒の涙を流しながらハクの背に手を回す今井信女、その2人の様子に、俺も鼻の奥がツンとする
ハクが真選組にきて間もない頃、今井信女に抱きしめられた時、過去のハクを知る彼女と記憶のない自分との気持ちの差に辛いと溢したハクの姿
ハクと今井信女、2人が今同じ気持ちで抱き合っていることが自分のことのように嬉しく感じられた
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