猫が紡ぐ希望
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黒縄島から脱出した船には、真選組、見廻組、万事屋の面々がいた
真選組も見廻組も黒縄島で命を落とした者、離陸に間に合わなかった者がいた
ーーハクもその1人である
船の上では近藤に“暗殺剣の使い手”とまで言わしめた実力をもつ今井信女が年相応の少女らしくわんわんと泣きじゃくり、その背中をさする神楽も同じくズルズルと涙と鼻水だらけの汚い顔だった
怪我だらけでボロボロの佐々木は信女の隣に寄り添うように座り、何も言葉を発することは無かった
沖田は重傷にも関わらず、ハクを探してくる、降ろせと暴れ、それを同じくボロボロの隊士達が涙を流しながら止めていた
一方、土方は船が出発してからというものの、甲板から遠ざかっていく黒縄島の方角をタバコを咥えてただぼーっと見ながら座っていた
思い出すのは落ちていく瞬間のハクの姿
一緒にいた筈なのに、また自分の見ていない間に怪我を負ったのか、それとも手当てをしたのか、返り血なのか、あの黒い隊服でも分かるほど血で汚れていて、真っ白な髪と肌は尚更それがよく分かった
そしてなにより、あの表情
「……ふざけんな」
土方は頭をぐしゃぐしゃとかき右手で目元を覆う
「……追いついて来いって、“命令”だって、言っただろうがっ……」
目を覆った右手からこぼれていくソレを、あの夜全て掬い上げてくれたハクは今、土方の近くにいない
「命令違反しやがったくせに、なんであんなっ……あんな良い顔でっ……」
土方の目に最後に映ったハクの表情は、演技でも命令でもない、柔らかく、自然な笑顔だった
土方自身が1番、見たいと願っていた表情
そのはずなのに土方の心は何も満たされず、咥えているタバコと同じように灰になって乾いていくばかりだった
「ふざけんな、クソ、クソ!」
声を押し殺すように泣く土方を、近藤は物陰から見ていたが、声をかけることができず近藤も物陰で息を殺して泣いた
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