鬼の涙を掬う猫
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将軍の国葬
警護を担当することになった真選組のメンバーの中に局長である近藤の姿はない
必死になって守り抜き、京まで送り届けた将軍を次は葬式という最悪の形で守ることになった真選組の隊士達の姿は暗く、覇気がない
そんな中、嫌な予感のしたハクはその場の誰にも告げずに持ち場を離れ、屯所へと走り出していた
屯所の門の前まで来ると、そこにいたのは数人の見廻組隊士と、今井信女、そして手錠をかけられた近藤
「え、ハクちゃん!?どして……」
『………』
ハクは静かに刀を抜くと、それを真っ直ぐ信女に向ける
『信女、勲になにしてるの?』
「……ハク」
『勲を守るのが、私の役目。信女、勲を離して。私は信女を傷付けたくない』
「………真選組は将軍を守り切る事が出来なかった。その責任を真選組の局長が取る。」
信女の言葉を聞いたハクはゆっくりと目を閉じ、またゆっくりと目を開く
その開かれた目は獲物を視界に捉えた獣のそれと同じだった
一瞬の間にハクが信女の前にやって来て、ギチギチと鍔迫り合いが始まる
『………』
「………っ!」
「ハクちゃん!俺はいいから!止めるんだ!」
真選組に、ハクが大切な姉なのだと言ってやって来た信女を知っている近藤は目の前の状況を止めようと必死に説得するが、目の前で刃を合わせる2人の耳には届かない
『信女、引いて』
「……っ、引けない」
鍔迫り合いの最中、余裕があるのは信女ではなく明らかにハクだった
『私は十四郎に、勲を守るように言われてる』
「………っ」
憎み合うどころか、大切に思っている者同士のそんな様子を見て、近藤は銀時にこえをかける
「……すまねぇ、万事屋。あいつらによろしく伝える前に、ハクちゃんのこと頼んでもいいか?」
近藤の言葉に銀時はハクを背後から羽交締めにする
『っ、万事屋?離して、私は勲を!』
流石のハクも単純な力比べでは銀時に敵わず、腕から逃れる事が出来ない
信女はその様子を苦しそうに見つめながらも近藤をパトカーへと乗せる
「ハクちゃん、お願いがあるんだ」
『!』
近藤の口から出た“お願い”という言葉に、ハクは銀時の腕から逃れようとしていた動きを止める
「トシの側にいてやってくれ。お願いだ」
“お願い”は、ハク自身が叶えたいと思わなければ叶えなくてもいいと、そう土方は言っていた
しかし、真選組に来てから土方に受けた“命令”は“近藤さんを守れ”だった
ハクの中で命令と、お願いがせめぎ合う中、近藤を乗せたパトカーは屯所から走り出してしまった
同じ頃、警察庁長官である松平片栗虎も見廻組に逮捕された
真選組は解散を余儀なくされ、隊士のほとんどは事実上の左遷である警察の末端の同心になることになった
しかしその一方で近藤を嵌めた一橋派に反旗を翻そうとする隊士もいたが、近藤はそんな事を望んでいないという土方の言葉で、反発しようとした隊士達は警察から離れるだけに留まっていた
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