記憶を無くした化け猫
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『私達がいるのに、見廻組がそよ姫様の護衛をするの?』
「定定様の事だ我々の事は隠しておきたいのだろう
お前の仕事はいつもと変わらん、定定様の命に従え、朽(きゅう)」
朧にそう言われた朽は長い白髪をまとめ、頭に黒い布を巻いていく
布の間から見えるのが白い肌と二色の瞳だけになったのを見て、朧は部屋を出た
『………見廻組……か』
布越しに発せられたくぐもった声は、誰の耳にも届く事はなかった
「………ここにいるのかしら、朽」
あの日、佐々木異三郎の妻子を暗殺した鴉を引きつけると言って朽が去って行ってから、朽とは一度も会えていない
見廻組として落ち着いてからやっと、異三郎を通して僅かに得た鴉の情報を元に、朽に一度だけ手紙を送ったが、朽からの返事はなく、もちろん読んだのかどうかも分からない
そもそも、生きているのかどうかですら、わからないのだ
ただ、生きている可能性の方が高いのは確かだった
例えそれが、「骸」という私のことを、覚えていない朽だとしても
「信女さん信女さん!こちらで一緒にお茶しませんか?
とびっきりおいしいお茶菓子があるんです!」
命が狙われているというのに、能天気なそよ姫に、信女は少し呆れたような目を向けたものの、大人しくお茶に付き合った
「私、兄様しかいないので、ずっとお姉様が欲しかったんです!信女さんとこうしてると、お姉様が出来たようで嬉しいんです!」
「そう……ですか」
「信女さんは御兄弟がいらっしゃるんですか?」
「……姉が1人」
「信女さんに似てカッコいい女性なんでしょうね!お会いしてみたいです!」
「…………」
そよ姫の言葉に答えることなく、信女はお茶を啜った
「どうやらわしの事を嗅ぎ回っておる輩がいるらしい」
『その者どもを斬れ……と?』
「吉原に出向き、探って参れ」
『………吉原?どこにあるの』
「ん?……あぁ、そうだったな
後ほど地図を渡そう
が、わしを探る人間は斬るな
しばらく泳がせる」
『……は』
朽は短く答えると、夜の闇へと溶け込んで行った
、