眠り姫の微睡み
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「紅葉!紅葉はいねぇか!!」
晴天の昼下がり
土方は大きな声を出して屯所の廊下をドカドカと歩いていた
「あ、副長
紅葉なら ”また上” だと思いますよ」
途中、中庭でバトミントンのラケットを素振りしていた山崎が土方に声をかける
土方は報告書を未提出にもかかわらずミントンをする山崎を一発殴った後、自分の部屋の方へとまたドカドカと進んでいった
土方の隣の部屋の屋根に梯子がかかっているのをみた土方はまたかと呆れる
土方は梯子を登り、上にいるであろう人物に声をかける
「おい紅葉、起きろ!」
「もーうるさいっすよ副長
また近所から苦情がくるじゃないすか
だれが対処するのか考えて欲しいっすね」
屋根の上で仰向けになり、顔にジャンプを開いて乗せたまま寝転んでいた紅葉はうんざりした様子で答える
「おお、わりぃ
……じゃねぇよ!!
お前今日俺と見回りだろうが!さっさと行くぞ!!
あと、局中法度でジャンプは禁止だって何回言わせんだ!!」
紅葉はなおも大きな声で怒鳴る土方に呆れたように起き上がる
「あーもうわかってますって
起きますからほらほら梯子おりてくださいよ
あと、ジャンプは面白いんでやめられません」
顔からジャンプを取った紅葉は屋根の端まで行くと土方がいることなど御構い無しに梯子を降りる
「っと……」
梯子を降り、隣に立つ紅葉を土方は見つめる
紅葉は真選組唯一の女隊士であり、一番隊に所属している
近々、20歳になるが女らしさは全くといっていいほどない
沖田の髪をボサボサにしたような髪型で、そのボサボサの前髪は鼻のあたりまで伸び、目を完全に覆っていて、真選組の誰も顔を見たことがない
「なんすか?自分の顔、なんかついてます?」
「顔も何も鼻と口しか見えねーのに何言ってんだ
……お前スタイルはいいのに残念だなと思ってな」
紅葉は170cmとなかなかの高身長でスレンダーなモデル体型である
しかし、防具ということで胸にサラシを巻いているものだから一見男にしか見えず、街では紅葉は男ということで通っている
実際、真選組がまだ浪士組と呼ばれていた頃に採用試験を受けに来た紅葉はその外見と少し低めの声、口調から土方は女だとは知らずに採用してしまい今に至る
「えーえーどうせ自分は残念な女っすよ
ふぁ……眠……」
もちろん男だからというだけで(紅葉は女だったが)採用される程真選組は甘くない
紅葉は沖田とまではいかないもののかなり腕の立つ剣士で一番隊の副隊長のような立場にいる
眠たそうに欠伸をしながら梯子を屋根から外した紅葉は梯子を自分の部屋にしまう
「さ、じゃあいきますか
見回りっすよね
なんか奢ってくれます?」
「何言ってやがる
んなもんあるわけねーだろ
ってか梯子を私物化してんじゃねェ!物置にしまえ物置に!!」
「いーじゃないすかどうせ誰も使わないんすから」
自室に屯所の備品である梯子を直した紅葉に土方が小言を言っていると後ろから声がかかる
「ちょっと土方さんなに俺の紅葉で遊んでるんでさァ 」
廊下を歩いて来た沖田はそう言いながら自分と身長の変わらない紅葉と肩を組んでくっつく
「沖田隊長、全力で体重かけるのやめてもらません?そんなんじゃ縮まないっすよ?」
「ちっ、採用試験の時から俺と同じように成長しやがって
まぁ俺はまだまだ伸びる予定ですが紅葉が俺と同じってのも気に食わないんでねィ」
「ったく総悟、余計なことしてねぇでさっさと始末書を書け!
おら紅葉も行くぞ!」
「はーい
じゃ、沖田隊長行ってくるんで」
紅葉はそう言うと土方について行こうとする
「ったく、土方さんも紅葉も人が悪いでさァ
この手でどうやって始末書書けってんでィ
俺は土方さんみたく治りが早くねェんでィ」
先日の切り込みで怪我をした沖田は右腕を三角巾で首から吊るしていた
「もう仕方ないっすねー
始末書、どうしても出来そうになかったらまた自分の部屋に置いといて下さい」
紅葉は振り返らずに手を振りながらそう言ってさっさと見回りに行ってしまった
「……一応女のくせに平気で部屋に入れるんじゃねェでさァ」
1人残された沖田はポツリとそう呟く
そして胸ポケットに手を入れ、大量の始末書を取り出すと、いそいそと紅葉の部屋へと入って行った
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