鬼と最期の逢瀬
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「………よし」
以前、沖田に買ってもらった着物を身にまとい、時雨は鏡の前に立つ
今日は新月の前日
空は雲ひとつない快晴で、青空が広がっている
「良い天気だが、やな天気だ」
時雨はそう呟き自嘲気味に笑う
お腹が空きすぎると逆にお腹が空かなくなるのか、今日はどうしようもない喉の渇きを感じない
「悪いな総悟
今日で最後だから許してくれ」
時雨はゆっくりと別れを惜しむように屯所の中を見渡しながら沖田の部屋へ向かった
「総悟ー!準備できたか?」
俺の部屋の障子に時雨の影が浮かぶ
間延びした声で俺を呼ぶ時雨にこのまま引きこもってしまいたいような気持ちになる
いっそ、引き篭もってしまおうか
今日も、明日の夜になってもこのまま部屋で1人、時雨が自分を食べに来るのを待っていようか
「総悟ー!」
「へいへい」
馬鹿な事を考えるなと、自分に言い聞かせる
白鬼にも託されてしまったし、何より、時雨の事を思えば、俺が終わらせてやるのが一番なのだ
いつも通り、いつも通りにしなくては
悲しそうな顔なんてしてはいけない
辛そうな顔なんてしてはいけない
これが最後だと思っている事を気付かれてはいけない
「んで、どこ行くん……でィ」
部屋を出てすぐ、俺のプレゼントした着物を着た時雨の姿にどうしようもなく切ない気持ちになる
時雨はといえば、そんな俺の気持ちも露知らず、ニヤニヤと笑っている
「遊園地だ!」
「前は銀時殿と来たんだが、総悟と一緒なら絶対もっと楽しいと思ったんだ」
「仕方ねェですねィ
んで?何乗るんで?」
チラリと隣に目をやれば遊園地のパンフレットを広げ、見ている
「んんー」
穴が空くほどパンフレットを睨みつける時雨に、沖田はパンフレットを取り上げる
「せっかく朝から来たんでィ全部乗りゃいいだろィ?」
時雨は一瞬キョトンとした顔をした後表情をパッと明るくする
「そうだな!じゃあまずはあれからだ!回転木馬!」
「メリーゴーランドですねィ」
「そうそれだ!めりぃごらんどだ!」
拙い言葉に沖田は口だけで微笑むと時雨の手を引いて歩き出した
、