鬼と飴
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「月光鬼?なんだそれは?」
口の中でコロコロと飴玉を転がしながら時雨は答えた
昨晩夢で白鬼が言っていた月光鬼というものを時雨は知っているだろうかと沖田が尋ねてみたところ、時雨は何も知らないらしい
「知らないならいいんでさァ気にしねぇでくだせェ」
独自に調べるしかないかと沖田は書類に目を戻す
見ている書類は豊臣派の攘夷志士に関するものだった
月光鬼のことも気になるが、時雨を狙う豊臣派の事も考えなければならない
珍しく真剣に書類に目を通す沖田の耳に、コロコロと飴玉を転がす音が響く
万事屋からの情報もあり、口の中に何か食べ物が入っていればとりあえず時雨がとんでもなく腹をすかすことはないということが分かった
それからというもの時雨は毎日、朝から晩まで食事の時以外はずっと飴玉を舐めている
近藤や土方そして山崎は時雨が腹をすかす事、そして空腹が原因で銀時の腕に噛み付いた事を沖田から聞き、驚いていた
しかし、飴を常に口に含むようになってからというものそんなそぶりは全くなかった
『総悟、お前今外だったよな
時雨の飴がそろそろ切れそうらしいんだよ
帰りに何でもいいから買ってきてやってくれ』
見回り中、土方から入った連絡で大量に飴を買った沖田は両手にパンパンのビニール袋を持って歩く
袋からはみ出る程入っている飴を見て、沖田は考える
銀時に噛み付いた時の時雨はどんな表情だったのだろうか?
お腹が空いて辛いという顔なんだろうか
それともあの夜に見た、冷たい目で牙をギラリと光らせていたのだろうか
何となく、嫌な予感がする
昨晩見た夢で白鬼が言っていた事も気になる
『あの月が、お前を月光鬼にしてしまう』
あの言い方からして月光鬼というのはいいものではないのだろうということは察しがついた
と、目の前を黒髪の男が通り過ぎる
その黒髪の間から見えた瞳は白鬼とはまた違った紅色の瞳だった
男は路地に入る直前、豊臣派の象徴であるあの猿の面をまるで沖田に気付かせるかのように懐から取り出した
沖田はその面を目にした瞬間、男が入って行った路地へと駆け出した
沖田が路地を曲がった瞬間、首元に小刀が当てられた
「……真選組一番隊隊長、沖田総悟だな」
「そちらさんは豊臣の刺客らしいですねィ」
時雨の血を飲んでいないとはいえ、こうも簡単に後ろを取られるとは思っていなかった沖田だが、それを全く相手に悟らせずに飄々と答える
先程見えた紅い瞳から、おそらくこの男は銀時と同じ赤鬼の子孫なのだろう
そして、相手は何者かの鬼の血を飲んでいるらしい
「白姫様から伝言だ」
「なっ、白姫……だと!?」
男から告げられた白姫の名に、沖田は目を見開く
「白姫が生きているのか?それとも俺みたいに生まれ変わりなのか」
「………」
背後にいる男は少し考えているのか、はたまた答える気が無いのか、少し間をおいて口を開いた
「『月光鬼を殺すのはあなたの役目、殺せるのはあなただけ、月光鬼は鬼にとっての破滅の種子
あの緑鬼をどうしても殺せないというのであれば、私が力を貸しましょう』」
男はそれだけ告げると、沖田の懐に何かの紙を入れてあっという間に消えてしまった
「チ、逃げやがった」
沖田は懐に入れられた紙を開く
紙にはかぶき町のはずれにあるビルの住所が書かれ
その紙からは濃い薔薇の香水の匂いが漂っていた
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