鬼と金色の瞳
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「なぁ、沖田隊長最近めちゃくちゃ強くないか?」
「時雨が帰ってきてからさらに強くなったよな
髪の毛染めてからも一気に強くなってたけど
あ、俺金髪にしてみたんだけどどう?」
最近、真選組の屯所内では、急成長を遂げた沖田へと注目が集まっている
実際は沖田が時雨の血を口にすることで鬼に近づいているため強くなり、その過程で見た目も白鬼に近づいているだけにすぎないのだが、
そんな沖田を見て髪を染めるのが隊士達の間では密かなブームになりつつある
「……でも何より驚いたのは時雨が女だって事だよな」
時雨が沖田と晴れて両想いになった翌日、食堂で時雨に群がる隊士達に、
”時雨は俺の女だから手ェだすんじゃねぇ”
と沖田が言ってしまったのだった
入隊試験の際、余りにも強い時雨に男であることを疑わなかった隊士達は時雨が女であるという沖田の発言に一瞬色めき立ったが、沖田が恋人であるということで一気に冷め、時雨は今は癒し系マスコットのような存在になりつつある
「ったくテメェ総悟、時雨が女だとバラしやがって」
そんな鍛錬の休憩時間に喋る隊士達の声を道場の縁側で聞きながら土方が沖田に文句を言う
「まぁまぁ
第一真選組は女人禁制だなんて土方さんの考えが古いんでさァ
強けりゃいいって考えだけなら隊士達のがよっぽど柔軟でさァ
それに、時雨が女だって分かったところで手なんか出させねェんで」
黒い笑みを浮かべながらそういう沖田に、土方はため息をつく
「にしてもお前が時雨の想い人ならぬ鬼の生まれ変わりだとはな
未だに信じられねぇな」
「俺もそう思いやすけどね
身分違いの恋から生まれ変わりなんざどこぞの恋愛ドラマかと思ってやしたが……」
「当事者になってみりゃってやつか」
「………」
自分から顔をそらした沖田に照れていやがると思った土方はフッと笑うと立ち上がり、ロクに打ち合いもせずいつまでも喋っている隊士達に怒号を飛ばして道場の中へと入って行った
一方の沖田は土方の言葉にむずがゆい気持ちになったのか縁側から見える蟻の行列に目を向けている
あの日、万事屋で豊臣派の男10人に襲われてから3週間が経とうとしているが、あれ以来豊臣派からの襲撃はない
あの10人が最後ならとも思うが、沖田は次の敵の事を考えていた
”鬼は死んでも生まれ変わる……次は生きて、幸せになりましょう?”
あの白姫の言葉から察するに、自分という存在がいるならば白姫の生まれ変わりもいるはずだ
もし、白姫の生まれ変わりが自分の事を認識できているとすれば、豊臣派に血を与えているのは白姫だろう
もしそうじゃないとすれば、あちらには白姫以外の鬼がいるという事だ
どちらにせよ鬼と戦うことになるだろうということは簡単に予想することが出来た
「総悟?何見てるんだ?」
時雨の声に沖田は顔を上げる
陽の光を浴びてキラキラと輝く時雨の金の瞳に、俺はいつもどきりとさせられる
「いや、なんにもありやせん」
「そ、そうか」
時雨は何やら言いたげな様子だが、沖田はあえてそれを聞かない
「じゃ、俺はシャワー浴びてきやすんで」
「あ、あのな総悟」
「ん?」
「あの、そのだな」
時雨はみるみる顔を赤く染めていくが、未だ言いよどんでいるらしい
時雨がこんな様子である原因を沖田は知っている
1週間前、近藤が沖田に
『なぁ総悟、お前初デートは万事屋に取られちまったんだろ?嫌じゃないのか?』
と訪ねているところを時雨は聞いていたらしい
沖田自身、かなり悔しいところはあったが、その後の時雨が可愛かったのでさほど気にしていなかった
が、時雨はどうもそれが気になっているらしく最近デートスポットが載っている雑誌を山崎に借りているところを目撃した
その日から時雨はこうして何か言いたげに沖田に話しかけるようになった
「なんですかィ?」
銀時という大きな敵がいなくなった今、時雨をいじめる余裕の生まれた沖田は何も知らないフリをする
「ぼ、ぼ、僕と、その」
顔を真っ赤にして、あの金色の瞳を若干潤ませながら自分を見る時雨を抱きしめたい気持ちを抑えながら沖田は内心ほくそ笑む
が、
「や、やっぱりなんでもない!ではな!」
「え」
プシューと顔から湯気が出たような様子の時雨はそう言うと廊下を猛スピードで走って去っていった
1人取り残された沖田はしばらくその場から動けずにいた
、