鬼と彼が見る夢
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時雨が屯所からいなくなった
正確には、というより俺に言わせれば万事屋の旦那に連れて行かれたという感じだ
時雨が連れて行かれた夜は何かを振り払うようにただがむしゃらに素振りをしていた
次の日の夕方、時雨は今頃万事屋で楽しくやっているのだろうと、
自室で1人、残された時雨の隊服を手に持ちながらため息をつく
左袖の端にはかなりの量の血が染み込んでいたようで、いまはもうすっかり血が固まってしまい、袖が硬くなっている
銀時が言った言葉が、沖田の頭に蘇る
”こいつが、自分自身を傷つける血の力なんて使わずに、俺が俺の力で時雨を守る”
1度目は元々傷があった所から血を飲んだ
だが2度目は俺が時雨を”傷つけて”豊臣派のやつに勝った
結果的に時雨を守っていたとしても、時雨に傷をつけてしまったことに変わりはないということに今頃気づいた自分が嫌になる
沖田は無意識に時雨の血のついた袖に口づけた
もう2度と時雨の血を口にしないと誓うように……
その袖への口づけが、時雨の血を飲んだことになったのかは分からないが、俺は今まで見たことのない夢……
時雨の記憶を見た
これも今回で最後だと思いつつ、いつものように白鬼の視線で夢が進んでいく
が、今回の夢はどうもおかしい
時雨が夢に現れないのだ
時雨の記憶のはずなのに時雨がいない
こんなことは初めてだった
「白鬼様、いい加減お決め下され!
鬼が鬼の血を盗み、力をつけた豊臣に殺され続けている今こそ、白鬼様と白姫様の婚姻によって鬼全体の士気を高めることこそが……」
俺の目線は庭の方へと向かう
遠くにはは洗濯を干している時雨の姿があった
こちらの声は聞こえていないらしい
「白鬼様!いい加減にして下され!!
あんな最下級身分である緑鬼の女にうつつを抜かすなど、鬼の一族の長である白鬼様にあってはならないことです!!
純血種の白鬼である白姫様との婚姻で、後の鬼の一族を率いる子孫を残すのが、白鬼様の務めなのです!」
おそらく白鬼の臣下だと思われる男が俺の目の前で喚いているが、俺の目線は相変わらず時雨へ向いている
そこへ、時雨がこちらの視線に気づいたのか振り返り、少しだけ微笑んでお辞儀をした
そこで、視界が真っ暗になった
次に目を開くと、目を開いたはずなのに真っ暗な所にいて、身動きが出来ないように縛られていた
目の前には白髪の女が立っていた
女は見た目こそ十分美人の部類に入る(あくまで一般論であり、俺は全く惹かれないのだが)が、鼻につくキツイ薔薇の匂いがした
(……?前は匂いなんてしやせんでしたよねィ?)
目の前の女は何故か怒っていて、俺に向けて刀を向けている
女の頭には時雨のようにツノが生えていて、瞳は旦那のように赤かった
……あぁこいつが白姫とかいうやつか
と、ボーッと考える
「白鬼様、貴方はいつまでたってもわたくしとの結婚を考えて下さらない
……だからわたくし、決めましたの」
白姫がそう言いながら顔を上げると、真っ暗だった視界が炎に包まれた
「わたくしが貴方をこの手で殺してしまえば、貴方は一生わたくしのモノになりますわ……
わたくしの血を豊臣に与えることで貴方が追い込まれればわたくしとの結婚も考えてくださると思ったのですが、上手くはいきませんでしたわね……」
「お前が、豊臣に血をやったのか!!?
この同族殺しが!!!」
「わたくしを同族殺しにしたのは貴方ですわ
貴方がわたくしと結婚して下さればこんな事にはならなかったのです
……あの身の程知らずの緑鬼の小娘もその両親も守れたかもしれませんのに……ふふっ……」
その言葉に俺も、白鬼にも身体に力が入る
「なっ!!?時雨に何をした!?お前が時雨の両親を殺したのか!?」
「……あの子娘、最近この城に近づく豊臣様の家来をかなり殺したらしいんですの
それで豊臣様も怒って怒って……
あの子娘を殺せる様にと私の血を沢山与えたんですが、尽く返り討ちに遭って、どうも結果が芳しくないようでしたの
あんな最下級でしかも凶暴な鬼が白鬼様の近くにはびこっているなんて、わたくし考えたくもありませんわ」
「あいつが、豊臣の人間を殺していた……?」
そういえば、チャイナと時雨が初めて出会った時に、チャイナは時雨が”相当殺している”と言っていた
「だからわたくし、今日はわたくしの血と一緒に”あるもの”を豊臣様にお渡ししましたの
白鬼一族に伝わる大罪を犯した鬼を封印する刀……あの刀の呪いは白鬼の血でしか解けませんの
あの刀で擦り傷でもつけることが出来れば、あの子娘はわたくし達の白鬼の血が無い限り、刀に封印されたままになりますわ
それで、貴方とわたくしを遮る邪魔者は完全にいなくなりますわ!!!」
「俺が、あいつを護るといったのに、俺がっ……」
「さぁ、あんな小娘のことは忘れて、わたくしのモノになりなさい!!!」
その言葉と同時に白姫の持っていた刀が俺に向かって振り下ろされた
「鬼は死んでも生まれ変わる……
次は生きて、わたくしと幸せになりましょう……?」
そんな声を遠のく意識の中で聞きながら、俺は意識を手放した
、