pkmnSV

pkmnSV/リップ
ほんのり憧れを抱いている卒業生の話。
※リップさんご本人は出てこないです。
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【きらきらとぎらぎらの話】

 ――ナチュラルに、美しく。

 言葉通りの、シンプルで自然体なデザインの看板。淡い色合いのウェーブに彩られた彼女が宣伝しているのは、彼女自身が手掛けた新作の化粧品である。

 故郷の街も輝いていたが、いつもぎらぎらしていた。繁華街は錆とトタンで形作られ、街の中心地にあるコロシアムでは常に乱闘の馬鹿騒ぎ。新しく建てられた放送局こそ当時の最先端と言うべき設備や流行の発信地であったが、総じて其処は荒地に残された怠惰で欲張りな街だった。コロシアムで勝てば一攫千金、そんな目先の夢に群がるゴロツキ達。危ないから行くなと親には止められていたが、自分は近所の子ども達と何度もコロシアムを訪れた――他の地方に比べて圧倒的に生息が少ないと言われる故郷で、様々な種類のポケモンが見られたからだ。そこは子どもにとって、否、試合を観る大人達にとっても遊園地のような場所だったにちがいない。

『魔法はいつか解けてしまうもの。けどリップは敢えてメイクを魔法と呼ぶわ――シンデレラは魔法が解けたとき、卑しい女性に戻ったかしら? 素顔のあなたを磨くことも大事でしょう』

 化粧にはあまり興味はない。
 しかし彼女には興味があった。彼女が施す魔法というものが一体何をもたらすのか。あの魔法使いが一体何処から来て、何を経験し、どうやって一流に至ったのか。


「リップちゃんにこの間会って」
 後輩からふいに飛び出したその言葉に、思わず手に持っていた資料を落とした。バサバサと音を立てて散らばったそれらを、デンリュウが一枚また一枚と拾う。興味は惹かれるようだが当然内容を理解している様子はなく、ご機嫌に鳴きながらしきりに首を捻っている。
「強かったよ!」
「そ、うか。確かに、宝探しの時期にジム巡りを選ぶ学生は多いからな……」
「先輩は選ばなかったの?」
「当時はあまりポケモンの扱いを知らなかったんだ。故郷には数も種類もいないから」
 今でも知り尽くしたというわけではないのだが。そう言いかけたが自虐が過ぎるかと思い、言葉を飲み込んだ。
 今でも彼女との激闘が蘇るのか、後輩は興奮冷めやらぬ様子だった。彼女のジムがある街は地続きではあるものの、その道のりは予想以上に険しい。足場の悪い岩肌と洞窟には見た目以上にタフな野生ポケモンが生息する。そしてたまに、街についたと誤解しているトレーナーにも遭遇する。それ故に、彼女のジムは後半戦の部類に入るのだ。そこを突破したということは、ポケモンバトルに対する才能が備わっているといえるだろう。……戦いにおけるセンスだけではない。ポケモンと共に歩き、障害を越え、共に成長するというプロセスを経ることができる総合的な才能が。
「ポケモンがあんまりいない地方?」
「とても遠い場所だ。砂地が多くて、火山がある。技術屋と、あとは血の気が多いやんちゃな奴らがたくさんいるところだった」
 話題が彼女から、自分の故郷についてへと逸れていく。自分語りはあまり得意ではないが、今はただひっそりと胸を撫で下ろしていた。

 パルデアのメイクアップアーティスト、そしてベイクジムのジムリーダー・リップ。
 彼女は自分が興味を寄せている人物であり、憧れを抱いている女性であり――そして、その輝き故に直視できないひとでもある。

「ポケモンが出てくるような草むらとかはなかったの?」
「あるにはあるが、今思えば少なかったな。数少ない出現場所のオアシスで専用の餌をおいて数日待つ必要があった。それでも必ずかかるというわけではないし、まったく姿をみせないということも何度もあったよ」
「遠いところって、ここからどのくらい?」
「距離はもちろんのこと、とにかく交通手段がない。モノレールだかエレベーターだかなんだかは建設されているみたいだが、それもここ最近の話なんだ。俺もアカデミーに入るため故郷を出てきてから一度も帰ったことがない」

「先輩が“宝探し”で得た宝は何だった?」
「――きらきらと輝くポケモンと人々だ」
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