pkmnSV
pkmnSV
アカデミー卒業生と主人公(と相棒)。
卒業生は他地方からレホール先生に呼ばれて四災の調査に付き合っている、という設定です。
----------------------------------------------
【さいやくの話】
「災厄の話を聞いたことがあるか」
彼は静かに尋ねた。夜中薄暗い野外に灯されたランタンが、彼のブロンドを暖かく照らしている。アカデミーに詳しい先生がいる、そう答えると「そうか」と彼は僅かに眉間に皺を寄せた。
「器、剣、木簡、勾玉――かつて王はそれらを宝と信じて疑わず、我欲を満たしてくれるものとばかり思っていた。真実は、むしろその逆だったが」
彼の手持ちであるイエッサンが空になったコップを渡すように促してくる。器用にドリンクのおかわりを注ぐと、小さな身体に似合わず危なげない動作で給仕した。続けて自らの主の方へと歩いていき同様の訴えをしたが、彼はイエッサンに手のひらを見せた。まだ彼のコップにはドリンクが残されている。
「一夜にして城が壊された、だっけ」
「ああ、よく覚えているな。大抵この類の話は好き嫌いが分かれる」
繰り返し経験してきたと言わんばかりの彼のその口ぶりは、彼もまたあの知恵の果実を齧った者の証なのだろう。
確かに、歴史学の授業は眠くなる時もある。遥か昔の話をされると、まるで自分の意識も時の彼方へと葬られるように沈みそうになるのだ。
「面白い表現だな。作家に向いてるんじゃないか」
彼の声はどこか上擦っていた。もしかしたら、彼は今笑ったのかもしれない。あまり表情が崩れないひとである上に、今は夜だ。僅かに口角が上がり目元が綻んだ気もするが、事実どうだったのかはわからない。
彼はコップを手に取ると、彼のイエッサンへと渡した。まだコップにはドリンクが残っていたが、手渡されたイエッサンはすぐに彼の意図を理解した。まるで御曹司達の談笑が途切れぬよう働く執事のごとく、それは一切の無駄がなくテキパキと給仕をこなす。
「いつか災厄を鎮めたら本を書けるかな。第二のスカーレットブックみたいに」
「冗談はよしてくれ。オカルト本はあまり読みたくない」
声を上げて笑う。すると彼も、今度こそ、ふと微笑む声が聞こえた。
それまで黙ってサンドウィッチ皿を覗き込んでいた朱色の相棒が、アギャスと一声鳴いた。
アカデミー卒業生と主人公(と相棒)。
卒業生は他地方からレホール先生に呼ばれて四災の調査に付き合っている、という設定です。
----------------------------------------------
【さいやくの話】
「災厄の話を聞いたことがあるか」
彼は静かに尋ねた。夜中薄暗い野外に灯されたランタンが、彼のブロンドを暖かく照らしている。アカデミーに詳しい先生がいる、そう答えると「そうか」と彼は僅かに眉間に皺を寄せた。
「器、剣、木簡、勾玉――かつて王はそれらを宝と信じて疑わず、我欲を満たしてくれるものとばかり思っていた。真実は、むしろその逆だったが」
彼の手持ちであるイエッサンが空になったコップを渡すように促してくる。器用にドリンクのおかわりを注ぐと、小さな身体に似合わず危なげない動作で給仕した。続けて自らの主の方へと歩いていき同様の訴えをしたが、彼はイエッサンに手のひらを見せた。まだ彼のコップにはドリンクが残されている。
「一夜にして城が壊された、だっけ」
「ああ、よく覚えているな。大抵この類の話は好き嫌いが分かれる」
繰り返し経験してきたと言わんばかりの彼のその口ぶりは、彼もまたあの知恵の果実を齧った者の証なのだろう。
確かに、歴史学の授業は眠くなる時もある。遥か昔の話をされると、まるで自分の意識も時の彼方へと葬られるように沈みそうになるのだ。
「面白い表現だな。作家に向いてるんじゃないか」
彼の声はどこか上擦っていた。もしかしたら、彼は今笑ったのかもしれない。あまり表情が崩れないひとである上に、今は夜だ。僅かに口角が上がり目元が綻んだ気もするが、事実どうだったのかはわからない。
彼はコップを手に取ると、彼のイエッサンへと渡した。まだコップにはドリンクが残っていたが、手渡されたイエッサンはすぐに彼の意図を理解した。まるで御曹司達の談笑が途切れぬよう働く執事のごとく、それは一切の無駄がなくテキパキと給仕をこなす。
「いつか災厄を鎮めたら本を書けるかな。第二のスカーレットブックみたいに」
「冗談はよしてくれ。オカルト本はあまり読みたくない」
声を上げて笑う。すると彼も、今度こそ、ふと微笑む声が聞こえた。
それまで黙ってサンドウィッチ皿を覗き込んでいた朱色の相棒が、アギャスと一声鳴いた。
1/2ページ