short(gnsn)

花翼の集、クク竜
クク竜弟を育てる竜騎士ニキ。

(夢主簡易設定)
ティキ
花翼の集の竜騎士。幼い頃弱っていたクク竜にコンと名付け、弟のように面倒を見る。炎の神の目の持ち主。
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【クク竜・ライジングハート】

「そう気を落とすなよ、兄弟」
「クルル……」
「確かにコヤは勇敢な竜だ。お前が惚れたのも分かる。きっと俺がクク竜でも惚れてた――いやいや例えの話だ。まあつまり、お前の見る目は確かってことだ。そうだろ?」
 誇り高きクク竜。生まれながらに勇敢で、花のような翼に炎を宿し、大空を駆ける。失翼者というのは、部族の間では一般的に夢を諦めた人間を指す言葉だ。いくら個体差があれど、文字通り翼を失わない限り、飛べないクク竜というのは滅多にいない。まして、海に堕ちるなど。
 だが、その竜は今まさに失意の海に沈んでいた。

 事の発端は、この相棒が一頭のクク竜に恋をしたことから始まった。
 同じ世界に存在する命ではあるが、人間と竜は違う生き物だ。少なくとも幼少期を竜と共に過ごしてきたナタ人の一人として声を大にして言える。身体のつくりだけではない。気質、習性や習慣、それに基づいた物事に対する価値観。
 ナタで最も気位の高いとも称されるクク竜、彼らが最も重きを置くものこそが「強さ」である。戦士が集まる《花翼の集》でも強さが求められることはあれど、クク竜が求めるそれとは比べものにならない。クク竜は相棒たる人間を強さで量り、子孫を残すつがいを強さで選ぶ。「強さにも色々ある」「強弱ではかれないものがある」、高尚な人間であればそう説くだろう。だが相手は竜だ。思慮深そうなイクトミ竜なら耳を傾けてくれるだろうが、クク竜相手となるとそうはいかない。教えを説こうとしたところで長い脚で蹴飛ばされるのがオチである。
「恋の病は拗らせると重症――さて、誰の言葉だったか」
「答えるまでもないな」
 いつぞやの竜医の言葉を挙げると、隣にいた女戦士があの時と同じ顔で苦笑した。視線の先には断崖で項垂れる、失恋真っ最中の若竜がいる。
 事は、あの相棒の恋が破れたことで幕引きとなった。
 正確には破れてすらいない。もともと叶わぬ恋だったのだ。相棒が恋をしたクク竜にはすでに番と定めたパートナーがいた。彼が体内の燃素器官を温めている間に、彼女はパートナーとの間に出来た我が子の揺り籠を温めていたのである。
「すまないな。ティキ」
「おいおい。お前が謝る必要はないだろう」
「あれだけ目に見えて落ち込んでいるんだ。たとえ非がなくとも良心が痛むさ。姉さんも、きっと嫌っているわけではないのだろうが」
 隣の女戦士はクク竜を真っ直ぐ見据えていた。言葉を選びながらもその先を言い淀んでいた。
「どちらかというと眼中にないって感じだよな」
「そんなことはないさ。姉さんも彼の存在は認識していた。ただ……」
「ボコボコにして家まで送り届けたと」
 彼女は浅いため息をついて頷く。姉の所業に頭を悩ませる妹の姿は、彼女の人間側の姉妹を彷彿とさせた。

「コン、今日の反省会はここまでだ。訓練に出るぞ」
「クエ!?」
「落ち込むのは太陽があの山から谷の間に入るまでって決めただろ。また将来の嫁さんに逃げられるぞ!」
 物悲しげなクク竜の鳴き声が集落に響く。だが、それを哀れむ者は誰一人としていない。叱咤され無理やり奮い立たされた若者。彼は種族違いの兄に乗られてようやく陸地から足を離す。渋々動かしていた翼は段々と大きく、力強くなっていく。この若き兄弟たちの姿が小さくなるまで、人々は、女戦士もまた空を見上げていた。
 己の翼で飛ぶ限り希望は在り、夢は潰えぬ。花翼の者なら誰もが知っていることだ。
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