侵食 黄×紫
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「高城、今度プライベートでぶらりしようよ♪」
オフの計画を立てようと高城の椅子に後ろから無理矢理入り込んで抱きつく
いつものこと
でもいつもと違った
「あれ?なんか匂いが違う」
首筋に顔をうずめて思いっきり息を吸う
「え?」
「香水変えた?」
「あーちょっと気分変えてみた!」
おかしい
他の誰かの香水が移ってた
視線を感じてパッと顔を上げるとなんとも言えない表情の杏果と一瞬目が合った
彼女はすぐ携帯に視線を戻したけど
勘の良い私は気づくよ
「そうなんだ…なんかこの香りヤダ。似合わないよ」
「そお?私好きだけどなー」
「じゃあ…」
杏果が好きなの?
思わず零れそうになる言葉を溜飲する
「じゃあ…何?」
「ううん」
「この香水くれたりして?」
「誰があげるか!」
頭をはたく
「いたっ!なんでいきなり不機嫌になってんの?」
高城のお腹をホールドしていた腕を掴まれ身体を左右にゆらゆらと
まるで小さい子をあやすような行動
―ムカつく
上手く手のひらで転がされてる気分
「で、どこ行く?」
「考えとく」
「なんでいきなりテンション下がってんのー?」
「高城のせい」
「高城?なんか言ったっけ?」
「言った」
あの子と同じ香りがしただけで嫉妬する私はおかしい?
当日まで何も決まらず結局ウィンドウショッピングすることにした
「あ、このお店見よ♪」
「うん」
北欧雑貨のお店の中は可愛らしい食器や小物で溢れていてワクワクした
それぞれ好きな物を見たくて店内をばらばらで物色する
「―あ」
ふらふらと歩いているとルームフレグランスのコーナーが目に入る
この前の香りがフラッシュバックした
何の気なしに近づきお気に入りの香りがあるかなーと試供品に手を伸ばす
「あ、これいい匂い♪」
「どれ?」
タイミングよくれにちゃんが合流してきた
「これ」
「あ~玉さん好きそう」
「え、ダメ?」
「ダメなんて言ってないよw良い匂いだね」
「―じゃあ、お揃いで買おう?」
何を張り合ってんのか
「ん~」
「これじゃなくてもいいよ」
「え?だってこの香りが好きなんじゃないの?」
「いいの。れにちゃんはどれがいい?」
こんなに必死な自分を笑う余裕すら今はない
「私かぁ~」
いろんな香りを試してお気に入りの香りを見つけた
「玉さん、自分の好きなの買えばよかったのに」
「いいの!この香りも好きだったし!」
「私滅多にこういうのやらないから帰ってからやるの楽しみだな♪」
「私もやる♪」
お揃いのものが一つ増えたのが嬉しくて買った袋を見て口元が緩むのを感じた
歩き疲れた私たちはお茶をするためお店に入った
「はぁ~温まる~」
「結局これしか買ってないや」
「あんなに見たのにねw」
「いろいろ見て回ると迷っちゃって買えなくなるよね」
「分かるー。でも玉さんは私以上だからね!」
「優柔不断治したーい」
「無理だねw」
「なんだよぉ」
お互い飲み物を手にして会話のキャッチボールが止まる
「この前さ、」
「うん?」
「香水変えたって言ってたじゃん?」
「あーうん」
「あれってさ、杏果が着けてるのと一緒だよね」
「そう、だっけ?」
「杏果と―その、なんか。お揃いにしたの?」
「いや、そういうつもりは」
―じゃあなんなの?
「そっか。―まさか香水が着いちゃうようなことしたんじゃないの?w」
「…」
待ってよ
その沈黙はダメでしょ
「ま、どうでもいいけど」
さすがにこれ以上傷付きたくなくて話題を終わらせたかった
「なんか疲れちゃった。今日はもう帰ろっか」
「あ?うん」
「それちゃんと今日帰ったら使ってね?私もやるから」
「分かったよ」
杏果はれにちゃんのことが好き
だからあの日れにちゃんを呼び出して―
だかられにちゃんから杏果の香りがしたんだ
れにちゃんが杏果のことを好きというわけじゃない
傍から見ればなんて都合の良い考えなんだと笑うかもしれない
私だって恋愛にこんなに必死になるなんて思わなかった
でも今は身勝手でもあの二人の中に私の存在を焼き付けたかった
明日、れにちゃんは私と同じ香りを身に纏ってくるだろう
それが私から彼女への挑戦状になる