[夢]光
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≪side.紫≫
「可愛い」
ソファの反対側からぽつりと聞こえた恋人の声に反応して携帯から視線をはずして名前の方を見ると何やら雑誌を見ていた
体を起こしてその雑誌を覗きこめば私たちのインタビュー記事だった
感心しないのは開かれたページが夏菜子のソロカットだったこと
『へぇ』
「可愛いしカッコイイし本当完璧!」
私の不機嫌は伝わっていないらしく目を輝かせながら言う
『今度会わせてあげようか』
「嫌だ」
『なんで?』
「そんなのファンがすることじゃない。プライベートにまで入り込む気はないの」
『…生で見たらテンパって何にも言えなくなるからじゃなくて?』
「…それもある。だって!あんなステージでキラキラしてるのを遠くから見ても眩しいのに間近で見たら私どうなると思う!?」
『死んじゃうね』
「でしょ!?」
まくしたてるように一息に言ってきたかと思えば想像したのか少し顔を赤らめて両手で顔を覆う
『私もメンバーなんだけど』
「まぁそうなんだけどね」
へへと笑う名前は可愛いけど顔を赤らめる相手は夏菜子じゃなく私だけでいい
膝の上にある雑誌を取り上げてテーブルに放ると不満そうに再び取ろうと立ちあがる名前のお腹を捕まえる
『あーダメダメ』
そのまま引き寄せてソファに押し倒して覆いかぶさる
「まだ読み途中だったのに」
『私を不機嫌にした罰』
「いつ?」
『自分で考えようね』
推しと好きな人は違うと前に名前は言ってくれて理解はしたけど納得はしてないからさ
顔を近付けてちょっと真剣な眼差しで見つめるだけでさっきの不満はどこへやら恥ずかしそうに顔を赤らめて目を逸らされる
『私のこと好きすぎでしょ』
「きらい」
『ほんとかなー?』
「そういうとこがきらい」
顔をグイっと押しのけられて苦しげな声が漏れる
「変な声」
私の下で楽しそうに笑う名前の笑顔につられて私も笑ってしまう
『明日は?』
「先輩と朝から会うんだった」
『そっか』
「ちょっと!朝早いんだって」
『ふーん』
私は有無を言わさず服に手を掛けた
≪side.主人公≫
久しぶりにお互いの休みが重なる日曜日
行きたいお店があると言われ待ち合わせの場所に行くとすでにれにはいて私に気が付くと満面の笑みで手を振ってくれた
「ごめん、お待たせ」
『ううん全然』
「行きたいとこって?」
『内緒』
「え、怖いんだけど」
『怖くないってw美味しいパフェがあるお店』
「パフェ!」
『好きでしょ?』
「大好き!嬉しいー」
連れて来てくれたお店はネットで見かけたこともないこじんまりとした店構えだった
「ここ?」
『そう、前に連れてきてもらってね。美味しかったんだ』
「楽しみ♪」
ワクワクしながられにの後ろに着いていくと『お待たせ』と言って先客がいるテーブルの前で立ち止まった
「―ぇ、なんで」
『こちら前に話した名前ね』
目の前には私の推しの夏菜子ちゃんが座っていた。
≪side.赤≫
待ち合わせより早めに行くと案の定一番乗りだった
先に席に座って二人が来るのを待った
れにから会わせたい人がいると言われた。
大切な子で名前は名前ということ。
ありがたいことに私のことが推しらしい。
本人は会いたがってはいないんだけどと言われた時は、なら会わない方がいいんじゃないかと言ったけど、夏菜子には紹介したいと言われて素直に嬉しかった。
事前に写メは見せてもらっていた
とても可愛らしくてお似合いだなって。
「名前ちゃんか。嫌われないようにしなきゃ」
どんなことを話そうかと考えているうちにれにが来た
『お待たせ、待った?』
「ううん来たばっか」
『良かった。こちら前に話した名前ね』
れにに促され隣に立った彼女は真顔で今の状況を全然飲み込めていない
その姿に私とれには二人して爆笑してしまった
『とりあえず座ろっか』
正面に座った彼女は全然私を見てくれないwまぁしょうがないとは思うけど
主『ぁ、はじめまして…名前です』
「…どっかで会ってない?」
主『…ライブには何回も』
「そうだよね!なんか見覚えあったんだよね」
一人納得していると名前ちゃんはれにの方を見つめながら目を潤ませた
良かったねと頭を撫でられている名前ちゃんは小動物みたいで可愛い
「私のこと推し、なんですよね?」
主『はい!最初から』
「ありがとうございます」
主『こちらこそいつもありがとうございます』
お互いお辞儀をしているとれにに笑われて私たちは同時にれにを見つめた
『なんか似た者同士だね。仲良くなれるんじゃない?』
主『そんな!恐れ多い!』
名前ちゃんはそう言ったけど私も仲良くなれそうな気がしていた。というか会った瞬間に名前ちゃんに興味が湧いていた。
『なんか頼もうよ、ここのパフェ美味しいんだよ。』
「そうなんだ」
『名前パフェ好きだからこのお店にしたんだ』
『そうなんだ。なんかTHE女の子って感じだね、可愛いー』
『ちょっと、さりげなく可愛いとか言わないでよ。既に推しポイント入ってるんだから』
『「推しポイントってw」』
同時に発した言葉に思わず見つめ合えばあっさり目を逸らされてしまった。
それからは出会ったきっかけとかいろいろ話しながら名前ちゃんのことも少しずつ聞けた
注文したものが来たときの彼女は目を輝かせながら写メを撮って、友達に見せよーと言った表情は今日一の可愛さだった。
帰り際、半ば無理矢理に連絡先を聞いた
れにには少し怪しまれたけど「れにの仕事中の様子写メで送ってあげるよ」と言えば名前ちゃんは嬉しそうにするかられにも嫌とは言えない
その日の夜、今日はありがとうございました。から始まった丁寧なメールが来た
そこからちょこちょこ連絡を取るようにして。
なんとなく喋れるようになってきて
…好きだなぁって確信するようになった。
―――苦しめたかったわけじゃない、
ただ、この気持ちを知ってほしくて、想いを遂げたかっただけ。
≪side.主人公≫
「えっ」
『ん?どした?』
「いや…んー、実は」
少し渋る私の様子に違和感を感じたのか訝しがるように携帯を見つめる私の顔を覗きこむれに
「何?なんかヤバいことあった?」
『そういうわけじゃないんだけど…実は、夏菜子ちゃんとちょこちょこ連絡をとってて』
「え、ずっと?」
『ま、毎日じゃないよ!』
「夏菜子全然そんな感じ出してなかった。で?」
『今度私の家でタコパしよって』
「そんなに仲良くなってたの?」
『いやっ!気を遣ってくれてるだけだと思う。どうしよ』
「どうしよって…楽しそうじゃん。やろう♪」
『ここに夏菜子ちゃんが来るの!?ダメダメ』
「もうメールまでしてる仲なんだから~」
『それは!違うんだってばぁ』
「なにが?喜んで交換してたくせにー」
『だってれにの写メくれるって言うから』
「可愛い~、はい携帯貸して」
あっという間に手元の携帯を取り上げられて夏菜子ちゃんに「やる!れにより」と返信をしてしまった
『あぁ~』
≪side.赤≫
れにの仕事が夕方まである日を敢えて選んだ。
あらかじめ教えてもらった住所を手掛かりに家電を手に昼過ぎに名前の家に向かう
久しぶりの感覚に家に近づくにつれ緊張してきた
インタホーンを押して『早く来すぎた?』と言えばこれまた緊張した面持ちで扉を開けてくれた
「ぃ、いらっしゃいませ」
ガチガチの笑顔のおかげで私の緊張はほぐれた
『ごめん、連絡すればよかったね』
「大丈夫です、材料もさっき買ってきたんで」
『そっか良かった』
リビングに入ると自然とキョロキョロ部屋の中を見まわしてしまう
「あんまり見ないで下さい」
『あ、ごめんごめんwこれプレートね』
「ありがとうごさいます!家でタコ焼きって初めて、楽しみですね♪」
初めて会ったあの日以来に見た笑顔はやっぱり可愛かった
『先に材料準備しちゃおうよ』
「はい、でも夏菜子ちゃん…料理しないですよね?」
そうだ、この子ファンだった
『盛り付けぐらいは出来るし』
「あはは、じゃあ私切っていくのでお皿の盛りつけお願いします」
『了解』
笑い方がれにと似ていた
『れにはよくここに来てるの?』
「んー、そんなに来ないですよ。れに、家族大好きじゃないですか。だから休みの日があっても会わないこと多いですし」
『意外、もっとラブラブしてるのかと思ってた』
「ラブラブってw意外とドライですよ。」
『それでいいの?』
「いいのって言われても…慣れました」
そう呟く名前の横顔を見ているとなんとも言えない気持ちになる。
―きっと今名前は幸せじゃない
それは、付け入る隙になった。
『慰めてあげようか』
「え?…」
『寂しいでしょ』
卑怯、狡さ―
知っていてあのタイミングを狙った
今しかないと思ったから。
名前を寂しさから救ってあげたいと思ったのは事実。
「いや、私はっ」
手にしている包丁を取りあげてシンクに置く
後ろから抱き締めれば体が緊張しているのが伝わった。
『…好きになっちゃったんだけど』
「…」
首筋に顔を埋めてキスをすれば案の定名前に抵抗された
『暴れないで』
「っ、や…やめてください」
体を回転させて向き合うと名前は涙目で―もう後戻りはできないと思った
名前の顔を両手で包みこんで引き寄せて唇を奪った。
深く記憶に刻み込むように
「待って…」
『…暴れたら痕付けるよ』
必死に顔を背けて抵抗する名前に冷たく言い放てば少し力が緩む
その隙に首筋に唇を這わす
名前の体が震えて固まる。
これ以上逃げない確信はあった
れにのことが好きなら、逃げられるはずない。
シャツの裾から手を入れる
「待って下さい!私っ」
『本当に好きだから』
この想いは、言葉は嘘じゃないって伝わるようにしっかり目を見ると怯えていた名前の眸は困ったものへと変わるのが分かった。
「…夏菜子ちゃん、」
『れににはバレないようにする』
「そういう問題じゃ!」
『私なら名前の寂しさ埋めてあげられるから』
「別に寂しいなんて」
『嘘だよ』
言葉で追いつめて優しく抱きしめる
『大丈夫、優しくする』
体を離して手を引くとまだ少し抵抗される
『罪悪感あるなら無理矢理されたって思えばいいから。……事実だし』
始り方なんてどうでもよかった、
純粋に好きという気持でも卑怯な手を使ってでも
―とにかく私たちは、始まった
≪side.主人公≫
心の中でたくさんの言い訳をした。
自分に対して、れにに対して、夏菜子ちゃんに対して―
最初の抵抗は本物だったはずなのに
目を見て好きと言ってくれた夏菜子ちゃんは行動とは裏腹に純粋で、少しずつ自分の心が揺れるのが分かった。
…夏菜子ちゃんは何度も好きだと言ってくれた
それが伝わるような優しい指先と眸
―れにが好きなはずなのに。
夏菜子ちゃんの想いが波のように私の中に流れてきて、愛いされる喜びを感じてしまっていた。
『ただいまー』
「『おかえり』」
『おぉ準備万端!お腹空いたぁ、着替えてくるね』
主『うん』
きっと、ばれてない
私も夏菜ちゃんもいつも通り、三人で楽しい時間を過ごせたはず
夏菜子ちゃんが帰るのを見送ったあと私たちは残りの洗い物をした
『楽しかったね、定期的にやろうよ』
「…うん」
『どうした?疲れた?今度はちゃんと夏菜子にも片づけしてもらおう』
洗い物を済ませ手を拭くとれには私を後ろから抱きしめた
駄目だと分かっていても体は強張る
―私は数時間前まで他の人に触れられていた。
『ん?大丈夫?』
「…なにが?」
『いや、なんか緊張してる?』
「してないよ」
無理矢理笑ってみせ、なんでもないように振る舞う
逃げるようにリビングへ行きソファに腰をおろせばれにも私の後について距離を詰めて隣に座ってくる
甘えるように頬にキスをしてきて、今度は唇にくるというところで反射的に避けてしまった
『名前?』
「ご、ごめん。ちょっと疲れちゃって」
『…大丈夫、キスするだけ』
そういって優しく唇、頬にキスを落としていく
あの人はれにとは違って自分の感情を全力でぶつけてきているようだった
そう比較してしまう私は、最低だ
「っ、ちょっと今日は本当」
『ごめん、もうちょっと』
れにの唇は次第に首筋へと降りていく
―その時、れにの動きが止まった
至近距離で目が合う
「な、なに」
『……ううん』
さっきとはまるで違う熱を持って唇を塞がれる
罪悪感があるだけに不安になる。
苦しくなって肩を押すと今度は首筋に顔を埋めてきてチリっと痛みを感じた
その行為に益々不安は濃くなる
もっと拒絶すれば良かった
れにのために、夏菜子ちゃんのために。
その場の空気に流されただけなんて言い訳は許されない
≪side.紫≫
いつもと違う反応に違和感を感じながら名前の言うとおり、疲れてるだけなのかもと思いながら久しぶりに会った欲望に勝てずに名前に触れる
首筋に唇を寄せた時、名前とは違う匂いがした
それはいつも一緒にいるから分かる
あの子のものととても似ていた
確かめるように名前の眸を覗きこめば不安そうに揺れている。
何があったかは分からないけどあの子は確実に名前の心に入った
それを追い出すように深く口付けをする
こんなことで解決するとは思わないけど少しでも自分を安心させたかった
≪side.主人公≫
翌朝、私より早く起きていたれにの様子はいつもと変わらなかった
『おはよ』
「おはよ」
『来週来ていい?ちょっと仕事終わりで遅くなっちゃうと思うけど』
「次の日お休み?」
『いや、お昼頃に出てくけど』
休みの日しか来たことがなかったからこんな事言うなんて…
今までなら素直に喜んでいた。
なんで今こんなこと言うんだろう
『なんか予定あった?』
「ううん、でもなんか、珍しいなって思って」
『たしかに』
ふわっと笑って少し空気が柔らかくなる
『なんとなくね、そういう気分なだけ』
「そっか、待ってるね」
『うん』
チャイムが鳴って玄関まで迎えに行く
主「おかえ、り」
れにの後ろには夏菜子ちゃんもいた
『ただいま』
「お邪魔します」
れにの表情を窺うも上手く読み取れない
とりあえず部屋に通してから私はお茶を用意しようとキッチンへ向かう
キッチンから見える二人はいつもと変わらないように見えた
ぼーっとお湯が沸くのを眺めて待っていたら後ろかられにに抱きつかれる
主「っ、びっくりした。ちょっと、見られる」
『いいじゃん、夏菜子うちらのこと知ってるし。』
主「そういう問題じゃないでしょ」
普段はあまりスキンシップが多いとも思ってなかったからまさかこんなに大胆なことをしてくるとは思わなかった。
タイミング良くお湯が沸き、れにの腕の中から抜け出す
ポットにお湯を注ぎながらチラッと夏菜子ちゃんを盗み見れば強い視線と絡み合う
少し眉間に皺をよせ、私を非難するような目だった
心が大きく波打つ
「ほら、これ持って。行こ」
『うん』
リビングに戻るも私の心の波は落ち着かない
きっとれにも私の変化に気付いてるはず、だからいつもより少しテンション高く会話を作ってくれた
『……善は急げって言うのかな。というか私嘘付けないからさ』
少し会話が途切れたあと、れにはそう話を切りだした
『ごめんね、ちょっと鎌かけるようなことして』
れには優しく私の手を取って見据える
昨日の夜感じた違和感は間違いじゃなかった。
『あのさ、人の恋人に手出すのやめてくれない?』
そう言って視線を夏菜子ちゃんへと向けるれにの声はびっくりするくらい冷たいものだった。
だけど夏菜子ちゃんは臆することなく見つめ返している
『何を思って名前に手出してんのか分かんないけどさ、』
「名前のことが好き」
決定的な一言を夏菜子ちゃんが言うとれには一つ溜め息をついた
『だから?もう名前に近づかないで』
「それは…」
『引き合わせた私も悪かったと思う。こんなことになってるのも私が名前との時間をなかなか作らなかったからだよね』
主「そんなこと!」
『そんなことあるの。夏菜子のことを拒否しきれなかったってことは夏菜子は名前のことを揺らせてる証拠なんだから』
言い訳出来ない自分がいた。
現にさっき夏菜子ちゃんの眼差しに罪悪感を感じてしまっていたから
『名前は悪くないよ』
涙のせいで声が出せず首を横に振ることしか出来ない
私の過ちだけでなく寂しさにもちゃんと気付いていた
―私はどれだけれにを傷つけてきたんだろう
「ごめんなさい…私…」
『今何言われても私、名前と別れる気ないから。もっとちゃんと伝えてれば良かったって思ってる。』
れにがこんなに私のことを思ってくれていたなんて
私は今までれにの何を見てきたんだろう―
いくら償っても償いきれないだろう罪に言葉を失う
「いきなり良い恋人に戻るなんてずるいよ」
『…』
「名前はずっと寂しかったんだよ」
『…』
「れにはそれに気付かなかった。」
「別れるつもりはないって言われてもまた名前を傷つけるんじゃない?私なら」
『でも無理』
「は?」
呆れたように笑う声に空気が少し柔らかくなる
『子供かよって思うかもしれないけど、私が名前から離れるなんて無理なの』
「さっきから無理しか言ってないじゃん」
『私が言いたいことはそれだけだから』
「……なんでもっと早く…。れには狡い、私が勝てるとこなんてれにが気付かなかった寂しさを埋めてあげることだけなのに。もう勝ち目ないじゃん」
冗談ぽく言ってはいるけどその目は赤かった
『夏菜子がいなかったら名前を辛い思いさせてるなんて気付かなかった…だからありがと』
夏菜子ちゃんの眸が揺れる
「…余計なことしたなぁ」
微笑みながらついにはその頬に涙が伝う
「名前はれにのこと本当に好きだよ。だから寂しかったんだから。そこに私が勝手に付け込んだけ」
『分かってる』
最後まで私を責めることをしなかった二人
その優しさにまた視界が滲む
「れにが名前を手放せないのと同じように私だってそう簡単に諦められないから」
『…』
「また一から頑張るよ。ま、れには名前が他の人に目移りしないようにせいぜい頑張って」
夏菜子ちゃんはニヤっとれにを一瞥して立ちあがると玄関へと足を進める
『確認だけど…推しポイントってまだ残ってる?―わけないか』
冗談めかしていてもその眸は不安そうだった
主「夏菜子ちゃんのパフォーマンス好きです」
『…ありがと。じゃね、お邪魔しました』
「あの、れに」
『もうこの話終わりにしようよ』
「でも…」
『言いたいこと言ったし、名前はちゃんとここにいるし』
満足そうに笑われても私は自分のしたことを考えれば一緒になんて笑えない
『名前が笑ってくれなきゃまた夏菜子に隙与えることになっちゃう』
「そんな」
れには悪戯っぽく笑うと今度は優しく抱きしめてきた
『名前はちゃんと私に今何を感じてるか教えて。なんでも受け止める、好きだから』
「…うん」
こんなに弱い私でもまだ好きだと言ってくれるんだ
「ねぇ、れに」
『なに?』
「私…幸せ」
パッと体が離れて目が合えば、それは私の大好きな笑顔だった
『私も今すっごい幸せ!』
頬を両手で包みこまれて優しくキスをされる
―犯した罪の償いは謝罪や行動ではなく、れにの隣で幸せになることだと言われてるようだった
自分の気持ちが迷子になりそうなときはすぐ傍にある光を目指せばいい
そこに幸せはある