あの時 赤×紫
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勇気を出して告白してくれたあなた
勇気を出せなかった私
「いきなりごめんね。」
ちょっと話したいことあるから新幹線の時間までいいかな?と言われ、なんとなくこの後なにを言われるのか分かってた。
分かった。と素直に高城の後に着いていく。
高城が私のことを好きなのは日頃の嫉妬から感じてた。よく耳にする「愛が重い」と言われるほどの嫉妬に他のメンバー、スタッフの人から哀れみの目で見られる。
人前では嫌そうに振舞っているが実際はそんなに嫌というわけでもない。
最近はあーりんがお気に入りらしくよく二人でベタベタしている。そんな二人を見て嫉妬し私だけを見てればいいと思うあたり高城と同じだ。
だからといって高城のように素直にそれを表には絶対出さない
なんで?って、
女同士なんて、ありえない
新幹線の駅構内のお店に入り、遅めの夕食をとる。
「うわぁお腹空いた!何にしようかなー。決めた?」
「早いよ!w」
「最近リハ続きで夏菜子だけ先帰るからなんかこう一緒に夜ご飯食べるの久しぶりだね。」
「そだね。」
なんだろ、皆といる時は夏菜子ちゃんなのに二人きりになるとたまに夏菜子と呼び捨てにされる、そんな些細なことでもドキッとしてしまう。
メニュー選びに必死なフリをして動揺を隠す。
「じゃー、私これ! すいませーん!」
「ちょっと、私まだ!」
「あ、ごめんw」
仕方ないかられにと同じものを頼む。
「で?話したいことって?」
「い、今!?」
「タイミングなんてあんの?」
「まぁ…。」
悪いことしたかな。
いざ言葉にされたらなんて返したらいいか分からないくせに言って欲しい気持ちと、言われたら後には引けない恐怖が私を攻める。だったらこのまま曖昧な関係がちょうど良いと思ってしまうのは逃げ道が欲しいから。
「そう、まぁいいや。」
結局この後は普段と変わらないくだらない話で笑い、楽しくご飯を終えた。
「そろそろ新幹線の時間?」
「ん?あぁそうだね。」
「行こっか。」
「うん。」
ちょっとの拍子抜けと大半の安堵を抱えてお店をあとにする。
「明日は一日オフだー。何か計画してる?」
「あーりんと遊ぶんだ♪珍しくない?私とあーりんだよ?面白そうw」
「二人だけ?」
「そうだよ、当たり前じゃん。」
「そっかー。」
そう言いながら俯きながら歩くれに
本当分かりやすい。素直というか思ったことを言葉や態度に示せるのが羨ましい。
その後は特に話すこともなく沈黙のまま改札まで行く。
終電間近の駅構内は昼間の活気に満ちた空気とは一転、別れを惜しむカップルや出張帰りのサラリーマンがいたりと少し落ち着いた時間が流れている。
無事切符も買い、れにの元へ戻る。
さっきの発言が影響したのか少しテンションが下がっている。
「お待たせ。」
「…やっぱさ、明日二人で遊ぶのやめないよね?」
気まずそうに話してくるれに。
「そりゃあ前から約束してるし、ないでしょ。」
「だよね。」
少しの沈黙のあと
一つため息をついて意を決したようにこちらを見てくる。
駄目、言わないで
「あのさ、薄々気付いてるとは思うんだけどー、私 夏菜子のこと 好きなんだよね。」
あぁ
ストレートに言ってくれたれに。
凄くうれしい けど…
これでOKしたら周りの人はどう思うの?
れには気にしないと言ってくれると思う。
ならその言葉を信じればいいだけのこと
でも 私には出来なかった
気付かないうちに頬を涙が伝っていたらしい。
「ごめん!泣かすつもりは。」
慌ててバックの中を漁るもなかなか目的のものが出てこない。
「いいよwありがとw」
自分のバックからハンカチを取り出す。
「普段は持ってるんだけどね。」
「うそつけww」
少し?大分かな?抜けてるところも愛おしい。
「すぐに返事が欲しいとは言わない。けど私が夏菜子のこと好きだということは知っていて欲しい。」
「そろそろ新幹線でるよ。じゃあね。」
結局一言も発さないまま私はれにに背を向け歩き出す。
ほんとずるいやつだ
以来私たちはあの夜のことには触れていない。
現に今れにの隣には詩織がいる。
あの日あの時もっと素直に行動していたらどうなっていたんだろう。
私の人生は大きく変わっていたかもしれない。
あの時から私は動けなくなって、先を行くれにの背中を見つめるだけ。
いつかまた振る向いてくれるんじゃないかと淡い期待を抱きながら。