ごめん、
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一日の仕事が終わり帰るだけとなった私たちは部屋に集められた
何かの打ち合わせでもするのかと思っていたら杏果から卒業するという言葉
一瞬にして心臓が速く打つ
もう味わうことはないと思っていた感情が一気に溢れだす。
「なんでこのタイミングで?」「なんで相談してくれなかったの?」「なんで私は気付けなかった?」頭の中は『何故』ばかり浮かんで自分でも感情がよく分からないのに涙は勝手に溢れる。
杏果になんて言えばいいのか、感情にまかせて引き留めたってもう遅いことは目を見れば分かった。
たしかに隣にいるはずの杏果はすでに遠くへ行ってしまっているような感覚に陥る。
私たちはとことん話し合った。気付けば何時間も経っていて私たちの顔はあの頃と同じ涙でぐしょぐしょだった。
ほんの数時間前に聞かされた話をすぐに受け入れることは出来ないけどあの子の人生を潰すことだけはしてはいけない、そう思った。
そしてこれから大きく変わるであろう私たちの関係の不安も同時に感じる。
とりあえず今話さなければいけないことは全て終えてこれからの一カ月強をどうやって過ごすのか、それぞれが頭の中を整理しながら家まで送ってもらうためにマネージャーさんを待っていると杏果に今日は一緒に帰ろうと言われた。
黙って頷くとマネージャーさんに話す事あるからまたあとでと言って去っていく背中を見つめる。
* 夏菜子視点
静かな楽屋でれにと杏果の会話が耳に入る。
そっか、そりゃそうだよね。こんな日は2人一緒にいるよね。
でも杏果の背を見つめるれにの表情が辛そうで居てもたってもいられなかった。
手にしていたバッグを机に置き直してれにの元へ行こうとした時、詩織に腕を掴まれた。
「ん?どうした?」
なんでもないかのように、掴んできた手をそっと離す。
『大丈夫?』
「何が?」
こう聞けば何も言えないって分かってる。
ずるいよね、ごめん
* 詩織視点
杏果に卒業することを伝えられてから数時間。
どうすれば良かったのか、何が正解なのか、答えのない問いがずっと頭の中を支配する。
重苦しい空気の中、杏果とれにちゃんの会話を見つめる夏菜子の表情が辛そうだった。
ももクロのリーダーとしての重圧を感じてるのか…。いつだって夏菜子はその背中で私たちを引っ張ってくれてる。
だから今は私が支えてあげたい。
不意に立ち上がってどこかへ行こうとするから咄嗟にその腕を掴んだ。
「ん?どうした?」
しかし私の手はそっと外された。
『大丈夫?』
「何が?」
『いや、何がってわけじゃないんだけど…』
それ以上何も言えなくて押し黙ったままでいると私に背を向けてれにちゃんの元へ行ってしまった。
* 杏果視点
自分の家に帰ろうとするれにを引き留めてうちに来てもらうよう頼んだ。少し躊躇っているみたいだけど今日言わないともう言えなくなる気がした。
「相談してほしかった」
さっき何度と言われた言葉だけどその真意はメンバーとしてではないというのは目を見れば分かった。
『ごめん』
「いや、ごめん。分かってる、私に相談したところで残るような簡単な意思じゃないって。」
『うん』
「まだ整理出来てないだけだから気にしないで。」
弱々しく笑うれにに心がチクッとする
私は皆と違う新しい世界で生きていくことを望んでしまった。
『あのさ、』
「ん?なに」
『別れよ』
大きく見開かれた眸
『私は…ももクロとして活動してる間だけだって割り切ってた。』
何も発することなく黙りこむれに。その大きな眸に涙がじわじわと溢れだす
このくらい酷いことを言わないとれには自分を責めてしまうから。れには別れを告げる苦しみを味わう必要はないよ。
分かってたよ、夏菜子のこと気になってたの
分かってた、私のことを大切にしてくれてたって
今までありがとうね。
嫌だってれには怒るかな。こんなことで私たちは変わらないって。
それともいつの間にか大人になった私たちは分かったふりをして笑顔で別れるのだろうか。
俯いてしまったれにからはその表情が読みとれない。
微かに震える肩が涙を堪えてるのだけは伝わった。その肩を抱き寄せることは簡単だけど、触れてはいけないと思った。
『わがままばっか言ってごめん』
喧嘩もたくさんしてもう別れようと話し合ったこともあったね。そんなことも今となっては愛おしい思い出に変わっていて時が経ったことを実感する。
あなたの隣にいると、とても温かくて心地よっかった。
お願いだから、引き留めないで
嘘だよ、ごめんって言いたくなる
『今までありがとう。』
夏菜子へ、最後のお願い聞いてくれる?
れにをよろしくね
* れに視点
『今までありがとう』
その言葉でついに耐えていた涙が床に落ちる。
別れたい理由が本心でないことなんて百も承知だ。そしてそれが私のために言ってくれたということも。
だから嫌だなんてとても言えなくて、杏果の優しさを踏みにじることはしたくなかった。
「一緒に寝てくれる?最後に」
『うん』
「ありがと」
いつものように一つのベッドに2人向かい合って横になれば何を喋るでもなく時間が流れる。
だんだんと体が暖かくなってきて夜闇に目が慣れカーテンの隙間からの月明かりで輪郭が分かるようになってきた頃、れにが私の手を取ってそのまま自分の頬に当てた。
「あったかい」
親指の腹で頬を撫でるとスリスリとすり寄ってきた。
『猫みたい』
「明日からは野良猫だけどねー」
『誰か拾ってくれるよ…たぶん』
「ちょっとー」
良かった、無理矢理にでも冗談が言えるなら大丈夫
れには強いよ。