黄昏時に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
佐助が去ってから数週間が経ち、首の傷も目立たなくなってきた
愛おしいものに触れるかのように優しく触るとバイトに向かう
今日はバイトが長引いてしまい、ようやく家に着いた時にはもうすぐ日を跨ごうとしていた
「あ゛ー疲れた」
すぐにでも休みたい衝動に駆られるが、一度休んでしまったら風呂にも入らずに寝てしまいそうだ
横になりたいのをぐっと我慢して風呂を済ませる
髪を乾かし、スキンケアを終えてようやくベッドに寝転ぶ
目を瞑るとすぐに疲労感がのしかかる
すぐに私は意識を手放した
瞼に眩しさを感じ朝が来たことを悟る
もう朝か。起きたくない。
そう思い身じろぐと肌にあたる感覚がいつもと違う
フカフカのベッドではなく、肌にチクチクと何かがあたっている
驚いて上半身を起こすと目の前には深い森が広がっていた
「え…ここ、どこ」
驚きのあまり身体を動かす事ができない
辺りは手入れがされていない森のようだった
「夢…だよね?」
そう思い自分のほっぺたを思い切りつねってみる
痛い。残念ながらこれは現実の様だ。
「どうしよう…」
とりあえず状況整理のため歩く事にした
この森を抜け、民家があれば話を聞く事ができるかもしれない
歩く事数十分が経っただろうか
森は拓けるばかりか一層深くなっていた
…なんだか熊が出そうで不気味だ。早くここから抜けたい一心でどんどん進んでいく
ーーーその時
「止まれ」
背中に鋭いなにかが当てられた
ピリピリとした緊張感も伝わってくる
「アンタどこの間者?甲斐になんの用?」
…?なにか聞いたことある声
もしかしてーーー
「…佐助?」
「!なんで俺様の事をって… 桜ちゃん!?どうしてここにいるワケ?」
先程までの緊張感はなくなり、佐助は背中に当てていた苦無を外すと桜を自分のほうに向かせる
「久しぶり。私もなにがなんだかさっぱり。ベッドで寝てて…気づいたら森の中だったの」
見知らぬ場所で知っている人物と出会い思わず安堵のため息を漏らす
「そうなのね。なんか俺様とおんなじ状況って感じだね。…あ、首の傷だいぶ良くなってる。よかった」
私の首元をみて佐助が呟く
「佐助が薬を塗ってくれたおかげだよ。ありがとね」
いや別に、と佐助が返答し辺りが静まる
なんだか照れ臭い
この空気をどうしようかと模索していたら
「…ところで桜ちゃん。今自分の状況わかってる?」
「え?」
そう言われてフリーズする
今の状況?起きたら森で、佐助に会って…あ。
「もしかしてここって戦国時代?」
すると佐助はため息混じりに答えた
「そ。やっと気づいた?で、これからどうするの?」
「…どうしよう」
ここは戦国時代。現代とは訳が違う。以前佐助と会った方があるとはいえほんの数時間の仲だ。
佐助は忍だし、護るべき主もいるだろう
たった数時間共に過ごしただけの私を主の側に近づけるのは良くない
「佐助、どこか住み込みで働けそうなところとかないかな?」
そう尋ねると佐助は目を見開いた
「えっなんで!?」
「だって佐助の時みたいにすぐに帰れるかどうかわからないし、私みたいな人を主に会わせるわけにもいかないでしょ?」
佐助は深くため息をつくと
「あのねぇ、桜ちゃんをお世話しなかったら逆に俺様が叱られるの」
「え、なんで?」
「俺様って実はと〜っても優秀な忍なの。前に桜ちゃんの時代に行った時は任務中だったわけ。途中で神隠しにあって任務ほっぽり出してるわけだから、その間どうしてたのか旦那に聞かれたんだよ。その時桜ちゃんの事を話したんだ。旦那のことだから世話になった御仁を粗末に扱うとは何事か!って絶対怒ると思うんだよね。」
急に饒舌になった佐助に圧倒されたが、右も左も分からない場所で1人でどうにかしていくのはとても不安だったので素直に好意に応えることにした
「…わかった。じゃあ少しの間お世話になります」
そう答えると佐助はニヤっと笑って
「そうと決まれば真田の旦那に挨拶に行かないとね。じゃあ俺様に捕まって?全速力で飛ばすよ」
言われるがまま佐助に捕まると、さっと横抱き…所謂お姫様抱っこをされた
現代でもなかなかいないイケメンの顔がグッと近づき思わず赤面する
「赤くなっちゃってかっわい〜 さ、ここからはしっかり捕まって。舌を噛まない様に気をつけて」
そう佐助が言った瞬間浮遊感に襲われる
「きゃっ!!」
先程まで辺りは森だったのに今は空が広がっている
驚く間もなくビュンビュンと風を切り景色がどんどん変わっていく
真田幸村の待つ上田城に着いた時にはすっかりヘロヘロになってしまった
「さ、着いたよ。休ませてあげたいところだけど先に真田の旦那に挨拶をしてくれる?」
サッと城の廊下らしき所に降りて身体を支えてくれた佐助にお礼を伝える
「連れてきてくれてありがとう。それはもちろん。でも、どんな風に挨拶したらいいのかわかんないや」
「難しく考えなくて大丈夫だって。お心の広い方だからね。じゃ、着いてきて?」
佐助の案内の元、上田城の廊下を右へ左へ何回も曲り、奥の部屋で立ち止まった
「旦那、入るよ」
佐助がそう声かけると部屋の中から元気の良い声が聞こえてきた
「うむ!」
サッと襖を開けるとそこには端正な顔をした若い青年がいた。みた感じ十代だろうか
「旦那、この子が桜ちゃん。俺様がお世話になった人」
「おお!其方が桜殿か。先日は佐助が世話になり申した。某は真田幸村と申しまする。この甲斐の地でごゆるりと過ごして下され!」
ニパッといい笑顔で挨拶をしてくれたこの人があの真田幸村…。この時代の人はイケメンだけなのだろうか
「真田幸村様、ありがとうございます。桜
「某の事はどうぞ幸村と!佐助は某の大切な忍。佐助を助けていただき感謝致す。礼には及ばないでござる!」
「では幸村、さん。ありがとうございます」
流石に一国の主を呼び捨てするわけにはいかない
「さ!旦那、桜ちゃん長旅で疲れてるからもうそろそろ休ませてあげて」
「おお、そうでござった!では桜殿またお会いしましょうぞ」
幸村さんに別れを告げ、佐助に寝所へ案内される
「ここだよ。何かあったら俺様呼んで」
「ありがとう、佐助。あ、でもどうしよう。佐助みたいにいきなり帰っちゃったら」
「その時はその時だよ。俺様も帰る時突然だったし」
「そっか。でもまた佐助に会えてよかったよ」
そう言うと佐助は目をぱちくりとさせた
「会った時に言ったけど、傷の手当。お礼を言わず仕舞いだっから」
「別にいいのに」
「私が気になるの!…ふふっ」
「なにー?」
「ごめんごめん。佐助って会った時はなんて怖い人なんだろうって思ってたけど、本当はすごく優しいよね。」
「…別にそんな事ないし」
佐助はそう呟くとそっぽを向いてしまった
「ごめんごめん。じゃあちょっと休ませてもらおうかな。もし私が帰ってたら幸村さんに説明よろしくね」
「ん、了解。じゃあ俺様そろそろ旦那のところに戻るね」
佐助の言葉に私は頷く
佐助が部屋から出るのを確認すると、敷いてあった布団にごろりと横になる
「ふぅ…」
まさか私が戦国時代に行くなんて思わなかったな
でも佐助のおかげで衣食住はなんとかなりそうでほんとうに感謝でいっぱいだ
少し横になって休んでいると
「桜ちゃん、俺様だけど入ってもいい?」
襖の方から佐助の声がする
了承するとスッと襖が開き佐助が入ってくる
「桜ちゃんお腹空いてない?旦那が一緒に甘味を食べないかって」
そういえばこっちに来てから何も食べていない
この時代に時計はないから正確にはわからないが今は15時ごろなのだろうか
そう思うとさっきまでなんともなかった腹がぐーと音を立てる
「お腹は空いてるみたいだね。じゃあ行こうか」
佐助は私の盛大な腹の音を聞いてくすくす笑った
恥ずかしすぎて思わず赤面する
「旦那〜桜ちゃん連れてきたよ」
佐助の案内の元、今度は縁側の様な所に連れて来られた
「おお、桜殿!ゆるりとお休みできたでしょうか?腹が空いてはよくないと思いお誘いした所存なのだが、…迷惑だったでござるか?」
一瞬幸村さんの顔に犬の耳の幻覚が見えた。しゅんっと垂れ下がり、こちらをうるうると見ている
「い、いえ!そんなことは。丁度お腹が空いていたんです。お誘いいただきありがとうございます」
そう返すと幸村さんは途端に満面の笑みになった
「安心したでござる。さ、これは佐助が作ってくれた特製団子でござるよ。たんと食べて下され!」
幸村さんはドドンっと大量にお皿に乗った団子を差し出す
…多くないかな、これ
「佐助が作ったの?」
「まぁね。旦那がうるさいし」
いただきます、と言って団子に手を伸ばして頬ばる
「…おいしい!」
絶妙な甘さでもちもちとした弾力がたまらない
お店以上の出来栄えだろう
「そうでござろう!佐助の団子は天下一品でござる!」
幸村さんはそう言うとすごいスピードで団子を平らげていく
「…俺様、忍なんだけどね。って旦那!一気に食べ過ぎ!喉詰まっちゃうでしょうが!」
忙しなく幸村さんの世話をやく佐助を見て笑みが溢れる
「なに、桜ちゃん?」
不思議に思ったのか佐助が問いかける
「ふふ、佐助ってお母さんみたい」
「な〝!俺様男なんだけど!!」
「確かに桜殿の言う通り、佐助はまるで母君の様な包容力を待ち合わせているでござる!」
ピキッ
佐助が笑顔のまま数秒固まる
「旦那、団子禁止ね」
そう言うと先程まであった団子がシュッと音を立ててなくなる
「!!…某の団子が!」
「俺様を馬鹿にした罰だよ。ちょっとは反省してよね」
某の団子ぉぉぉぉぉぉ!!と幸村さんの大絶叫が響きわたり思わず耳を塞ぐ
その時フワッと浮遊感に襲われ、見ると佐助にお姫様抱っこされていた
「えっ!?佐助なんで?」
訳も分からず佐助に問いかける
「旦那うるさいからね〜桜ちゃんもゆっくり休めないでしょ。部屋にお団子運んでるからゆっくり食べてよ。」
また思わず佐助の優しさに触れ心が温かくなる
「ありがとう、佐助。」
どーいたしましてと佐助がいうとすとんと部屋に降ろされる。いつの間にか元の部屋に戻ったみたいだ。
「じゃ、桜ちゃんゆっくりしててよ」
佐助が去ろうとするので思わず待って、と引き留める
「どうしたの?」
佐助はじっと私を見つめる
「あの、どうしこんなに親切にしてくれるの?」
素朴な疑問をぶつける
「え?だから世話してもらったし旦那にも怒られちゃうから」
「…勘違いだったら申し訳ないんだけどそれだけじゃない気がする。なんだか、私はほんの少ししか佐助と過ごしてないのに、優しさを貰い過ぎてる様な感じがするの。…ごめんね、変な事言って」
「…なかなか鋭いなぁ、桜ちゃんは。」
そう優しく微笑むと佐助は続ける
「確かに俺様が桜ちゃんと過ごした時間は短いんだけどさ、時代が違うとはいえ所詮男と女。ましてや俺様は武器も持ってるしどうにでも出来るワケ。それなのにどうにか理解して貰おうと、数多さえ俺様の衣食住を面倒みようとするんだもん。純粋に驚いちゃって」
それに、と更に言葉を続ける
「こっちに帰ってからずっと思い出しちゃってさ。傷大丈夫だったかなとか、優しい笑顔とか。…俺様忍なのに可笑しいでしょ?でもこんなの初めてなんだ。」
佐助からの思いがけない告白に驚くが同時に温かい感情にも包まれる
「…私も、佐助が帰ってからずっと気になってたよ。無事に帰れたかなとか、もしかして夢だったんじゃないかって。でもこの首の傷が本当なんだって実感出来て…」
「桜ちゃん。時代も違うし、今日離れ離れになるかもしれない。でも…また会えると思うんだよね。感覚だから絶対とは言えないけど」
だから、そう言って佐助が真っ直ぐに私を見る
「俺様、桜ちゃんが好きだよ。もし桜ちゃんが帰っても次は俺様が会いに行く。こっちに桜ちゃんがいる時は必ず守ってあげる」
「佐助…」
佐助はそっと私の手を握り、片方の手を頬に添える
「嫌だったら、殴ってよね」
そう言うと佐助はゆっくりと顔を近づける
拒否なんてできるわけない
私も目を閉じると唇がゆっくりと重なりあった