黄昏時に
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地面に雨が痛いほど叩きつけている
「暇だな…」
私が戦国の世に来てから半年は経っただろうか。
気づいたから森の中に佇んでいた私は、偶然戦帰りの武田軍に遭遇した。
いきなり何かの術のように女が現れ、しかも面妖な格好をしているときた。間者に間違われても仕方がない。そこから幾度となく命の危機に陥ったが…その話はまた今度にしよう。
今では少し信用してくれたのか、自室を与えられ食事の面倒も見てくれている。恐らく監視の役割も兼ねているのであろう、よく佐助さんと幸村さんが顔を出して話し相手になってくれているので暮らしに特に不自由はしていない。
今日は生憎の雨。佐助さんと幸村さんは忙しいらしくバタバタしており碌に挨拶も出来ていない。
自分は居候の身であるし、勝手に出歩く訳にもいかず。かといってこの時代にはスマホもなければテレビもない。全く時間が進まないのだ。
なにかすることはないかと、畳の上でゴロゴロしながら辺りを見渡すと、机の上に私がこちらの字を覚えるために手習した後の紙が何枚か転がっていた。
「…そうだ」
私はあることを思いつくと、身体を起こし筆を取った。紙に顔を描き、くしゃくしゃっと丸めて紐で縛り、縁側に吊るすと
「できた!」
てるてる坊主の出来上がりである。不恰好ではあるがニコニコ笑顔の顔が中々にかわいい。作るのは小学校以来でなかなか楽しかった。
満足気に眺めていると
「なにしてんの?」
いきなり頭上から声が降ってきて体が震える
「わっえっ!佐助さん!…びっくりした。来たなら教えて下さいよ」
「俺様は何度か呼んだよ?でも全然気づく気配がなかったから」
「それはすみません。えっと、これはてるてる坊主といって雨を止ませる願掛けみたいなものです。できなかったから首をちょんぎるんですよ。」
「え、なにそれ物騒」
若干引きながらも佐助は筆をとり紙に顔を描いていく。
「でーきた」
そういって出来たてるてる坊主を見ると女の顔が描かれていた。心なしか誰かに似ている気がする。
「佐助さんとても上手ですね。誰かを想像して描いたんですか?」
そう問うと佐助はニヤっと笑って
「桜ちゃんだよ」
「え?」
「ほら、大きな瞳に漆黒の髪。なかなかうまく描けたと思うよ。本物はもっと別嬪さんだけど」
そう佐助に言われ顔に熱が集まる
「っ…!からかわないで下さい!!!」
ごめんごめんと悪びれもなく謝る佐助を睨らむ
私が作ったてるてる坊主の横にさっと吊るすと2人で縁側に並んで空を見上げる
「雨、止まないねぇ」
「この雨止まなかったら私の首ちょんぎられちゃうので是非とも止んでほしいですね」
「確かに」
2人して笑う。それから暫くぼーっと眺めていたらバタバタと廊下を走る音が聞こえた
スパーンッと襖が開くと
「遅くなったでござる!!某も混ぜてくだされえ!!!!!」
元気いっぱいな幸村さんがやってきた。
佐助さんが幸村さんにてるてる坊主の事を説明する。何となく違う説明をしていた様に聞こえたがあまり気にしない。
「なんと!てるてる坊主殿はその様な力があるのだな。して、顔は好きな者の顔を描けば良いと。」
「そうそう。ほら、旦那も描いてみなよ」
そう言って幸村さんに筆を渡す
「ふむ…。某が尊敬するのはお館様ただ1人。お館様であればこの雨を分ち直ぐさま晴れ模様にするのは容易いであろう。…この幸村感激致しました!お館さばああああああ!!!!」
あまりの声量に2人して耳を塞ぐ
「ちょ、旦那うるさい!早く描いて!!」
佐助に怒られた幸村はシュンとしたが、筆を受け取るとサラサラと顔を描く
「…出来たでござる!!」
どれどれ…と出来上がったてるてる坊主を見ると、多少独創的であるがモフモフと髭をみるにお館様を描いた様だ。
「幸村さん、お館様を描いたんですね」
「うむ!やはりその様なお力があるのはお館様しかいらっしゃらないでござる」
そういって誇らしげに言うと私たちの吊るしたものの横に同じ様に吊るす
「して、其方らは誰を描いたのだ?」
「私は誰って言うのはなくて笑顔の人を書きました」
「俺様は桜ちゃんかな」
佐助がそう言うと幸村はピシリとかたまる
「な、な、な…佐助、お主!!先程某に好いた者を描けと…!!な、はっはっ破廉恥でござるぁぁぁぁぁ!!!!」
本日2度目の大絶叫だ。また2人して耳を塞ぐ
「もう、佐助さん!あんまりからかい過ぎたら駄目ですよ!」
「ごめんって〜。つい面白くてさ。」
おどけて笑う佐助さんからは全く反省の色は見えない
はぁ…と溜息をつきながら未だに茹で蛸状態の幸村さんに声をかける
「幸村さん、冗談ですから。さ、雨が止むようにお祈りしましょう。晴れなかったらてるてる坊主の首ちょんぱですよ?」
「首を…斬る?」
「え、佐助さん説明してなったんですか?スラスラ言ってたからてっきり言ったのかと」
「あはー。そっちの方が面白いと思って」
「と言うことは晴れねばお館様の首を某が斬る…と?」
ピシリと固まり、どんどん白くなっていく幸村さん
「ゆ、幸村さん戻ってきて下さい!晴れれば大丈夫なんですから」
「ハッ!…そうでござるな。見ていて下されお館様!!この幸村必ずやお館様の窮地を救って見せましょうぞ!!」
そういうと幸村さんは槍を手に取り勢いの強い雨の中華麗に技を決めていく
…木や石が砕けているのは気のせいだろう
「ちょっ旦那!それ以上は屋敷が壊れるって!」
慌てて佐助さんが止めに入るが
「うおおおおおお!!お館様さばああああ!!」
幸村さんはもう何も聞こえていない様で槍を振り回している
「駄目だ聞いちゃいねぇ…。」
ガックリと肩を落とす佐助さんに
「自業自得ですよ。からかったのは佐助さんなんですから」
「ちぇっ。…でも好いてるのはすこ〜しほんとだよ」
「え?」
最後の言葉を囁かれ思わず佐助の顔をみる
何だかとても真剣な顔をしているように見えた
「佐助さ…「やりましたぞお館様あああああ!!!!!!!!!!!」…あ。」
幸村さんの声に2人で空を見上げる。
まだ曇ってはいるが、雲の割れ目から太陽が顔を出していた。
「本当にやっちゃったよ。やれやれ。旦那はなんというか…すげぇや」
「本当ですね」
2人でクスリと笑うと幸村のところへ向かったのだった。