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キスガス

「そういえばキースはピアス穴開けてないんだな」
 隣り合ってソファに座るガストが、そっとキースの耳たぶに触れた。
「ん、まあ開ける機会もなかったしな」
 耳たぶを優しくさする指の感触がくすぐったいが、触れられるのは悪い気分ではない。そう思いながらビールを口に含むと、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「じゃあ、もし今後開けることがあったら、俺がキースのピアス穴開けてもいいか?」
「え?」
 視線を左隣に動かすと、自分を見つめるガストと目が合う。その翠の瞳はきらきらとした期待を宿していて、まるで幼い子供のような色に微笑みが溢れた。
「お前がそんなこと言うなんて珍しいな。オレにピアス開けて欲しいのか?」
「似合うと思うし、それに………」
 ちら、と、僅かな間視線が逸らされる。ほんのりと朱に染まった頬が、ガストの照れを如実に表していた。
「キースもピアス開ければ、揃いでつけられるだろ?」
 告げると同時に、頬がより濃く色づく。普段は大人びた振る舞いをするガスト。そんな恋人のあまりにも可愛いおねだりに、キースはぐしゃぐしゃとキャラメル色の髪を撫で回した。
「わっ」
「今度ピアスとピアッサー買うか」
 髪を乱されて一瞬驚いた表情をしたガストは、しかしキースの言葉で喜色をあらわにする。
(可愛いやつ)
 さて、自分達にはどんなピアスが似合うだろうか。ガストの髪を優しく指で梳きながら、キースはスマートフォンを起動した。
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