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キスガス

「正午のニュースをお伝えします。昨日午後、イエローウエストアイランドにサブスタンスが出現。十三期研修チームのウエストセクター担当ヒーローが回収しました」
 昼休憩で入ったカフェで、聞こえてきたよく知る人物の話題に、ガストは思わず店内のテレビ画面を見上げた。
 おそらく街頭のカメラで撮影されたものだろう。サブスタンスとウエストセクター研修チームとの戦闘が映し出されている。ニュースを読み上げるアナウンサーの声によれば、ヒーロー達に怪我はなかったとのことで、とりあえず安堵の息を吐く。
(怪我が当たり前の仕事とはいえ、心配はするよな)
 研修チームの仲間達も、大切な恋人も、できれば怪我などせずにいてほしい。そんなことを考えながらぼんやりとニュースを見続けていると、不意に映像が切り替わり、キースが画面に大きく映し出された。
(っ!)
 一瞬だけ、射抜くような眼光がガストを捉える。常のだらけた有様とは全く違う、真剣な眼差し。痛いほどに大きく心臓が脈打って、ガストは思わずテーブルに突っ伏した。
(ほんっと、ずるいよな)
 自堕落で、酔っ払いで、ゆるい雰囲気を醸し出しているくせに、時折怖いほど真剣な姿を垣間見せる。そのギャップに、ガストはいつも魅了されてしまうのだ。
(………今夜、空いてるかな)
 あんなにかっこいいところを見せつけられたら、会わずにはいられなくなってしまう。もし会えたら、出会い頭にハグして、「ずるいぞ」って怒ってやろう。そんな八つ当たり気味な思考を働かせながら、ガストはメッセージアプリに文章を打ち込んでいった。
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