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キスガス

 誕生日の数日後、ガストからキースへと飲みの誘いがあった。タワーで他の皆と祝いはしたものの、やはり二人きりで祝いたい気持ちもあるのだろう。恋人のいじらしい一面に口角を上げながら、キースはその誘いに乗った。ちょうど誕生日プレゼントにガストから貰った酒もまだ空けずに手元に残っている。二人で飲めば話のタネになるだろう。キースは上機嫌で外泊許可を取るために司令室へと向かった。
 そして当日。キースの家へと訪れたガストは用意されたグラスと酒を見て嬉しそうに眦を下げた。
「あ、それ、こないだ俺から贈ったやつか?」
「おう。せっかくだから二人で飲みたいだろ?」
「ありがとな……って言っても、弟分から貰った酒だから俺はあまりでかい顔できないんだけど」
「贈ってくれたのはお前だから細かいことはいいんだよ。ほら座った座った」
 苦笑いするガストをソファに座らせる。二つのグラスに酒を注いで乾杯すると、中身を喉に流した。上物の酒らしい豊かな風味に思わず目を細める。
「うまいな、これ」
「割と上物の酒だからな。こんなもん贈られるなんて、随分弟分達から慕われてるもんだ」
「そうだったら嬉しいな……俺は、すげえタイミングよくこれを贈ってくるもんだから、ついにキースとの関係がバレたかとビクビクしたよ」
 ふざけ混じりに呟かれた言葉に思わず酒を吹きそうになる。
「……ちなみにバレたらどうなる?」
「どうなるんだろうな、なんつーか、想像つかないぜ」
 尊敬してやまない兄貴分に恋人ができたとあれば、弟分達は存分に祝福するだろう。しかし、相手が年上の男だと判明した場合はどうだろうか。驚かれるか、(ガストの人望を鑑みてこれはありえないとは思うが)引かれるか、それとも。
「ガストさんと付き合いたいなら俺と勝負しろー!なんて言われたりしてな」
「えっ、流石にそれは……ないとは思うけど」
 ふざけて口に出した言葉に、ガストが真面目に考え込んでしまう。
(おいおいその可能性あんのかよ)
「……まあ、そんなこと言われてかかってこられても、意地でも全勝してやるけどな」
 誰に反対されたとしても、恋人の地位を譲る気はない。言外に告げられた愛に、ガストの頬が薄紅に染まる。
「そ、そんなことになる前に俺が弟分達を説得するから、大丈夫だぞ!」
 照れからか、頓珍漢な返答をしてしまうガスト。その様子を見ながらくつくつと喉元で笑えば、ガストはさらに頬を赤くして酒を煽った。
「わ、笑うなよな……」
「悪い悪い、怒んなよ」
 頭を撫でるついでにちゅ、と額にキスをする。不良達を束ねるビッグブラザーとは思えない可愛らしい姿に、笑みが深くなった。
(悪いな弟分共、お前らの兄貴分、オレが貰うわ)
 独占欲を隠しもしない思考を巡らせながら、キースは酒をまた一口飲んだ。
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