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キスガス

「あれ、珍しいもんが置いてあんな」
 パトロール後、ふたりで飲むためにキースの自宅を訪れたガストは、テーブルの上に置いてある小箱を目にとめて呟いた。
「ブルーノースの洋菓子店のチョコだよな?それ」
「知り合いに貰いもんのお裾分けだって渡されたんだけどよ、オレ甘いもんをつまみに酒飲むタイプじゃねえしな。フェイスにでもやるかと思って置いてたのを忘れてたわ。食いたかったら食っていいぞ」
「いいのか?サンキュー」
 いかにも高級そうなダークブラウンの小箱を無造作に渡される。蓋を開けてみれば、ココアパウダーの塗されたトリュフチョコが数個、箱の中に綺麗に収まっていた。ひとつ摘んで、口に放り込む。チョコがほろりと崩れ、広がる上品な甘味とカカオの香りにガストの表情が緩んだ。
「ん、美味い」
「そりゃー何よりだ」
「あんまり甘すぎないから、キースでも食えるかもな」
「そうか?どれどれ……」
 キースが、ガストの手元の箱を覗き込む……と、見せかけて不意に唇を重ねてきた。突然のことに抵抗する間もないまま、キースの舌がねっとりとチョコの味の残る口内を撫でる。固まるガストをよそに唇を離したキースは、ガストの唇を指でなぞりながらにやりと笑みを浮かべる。
「んー、やっぱりこれじゃオレには甘すぎるかもな」
「〜〜〜〜〜!!」
 途端に、ガストの頬が真っ赤に色づく。キースは可愛い恋人の身体を抱きしめて頭を撫でながら、愉快そうにくく、と喉を鳴らして笑った。
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