八戒birthday
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-ある街の宿屋-
八戒以外の4人が集まる一室でバンッと大きな音を立てて立ち上がる。
ベッドで戯れていた悟空と悟浄は動きを止め、悟空はそのままベッドから落ちた。
三蔵は表情こそ変わらないものの、一瞬ビクッとなったのを私は見逃してない。
『ねぇ、今日八戒誕生日だよね?』
「あ?あー…そう言えばそうだっけか」
『なのになんで八戒が買い物行ってんのよ?!』
「ならお前が行けばよかっただろ」
『大した量じゃないからって断られたの!言わせないでよ!』
一応私だって「たまにはゆっくりしてて」って買い物代わろうとしたよ?!
それでもいつもの爽やかな笑顔で断られたらもうなんも言えなくなっちゃったのよ!
プレゼントもギリギリまで悩んだけど、普段のポジションもあってか"肩叩き券"とかしか思い浮かばなかった。
実際そんなのでもないよりマシなんだろうけど、これでは保父さんではなく完全にお母さん扱いだ。
もし喜んでくれたとしても流石にそれはダメでしょ…?
かと言って運転ができる訳でもないので、ここまでの道のりで運転を代わる事も出来なかった。
ご飯を作ることも考えたが、外食一択。
せめてもの救いは八戒を一人部屋にねじ込めた事くらい。
一人部屋となれば、普段なら三蔵が有無を言わさずだったり、紅一点だからという事で私が一人部屋になる事が多いけど、今日くらいは一人部屋を満喫してほしかった。
『八戒っていつも気使ってくれたりして、世話になってる分何か返したいんだよ』
「何かって例えば?」
『それが分かったらここまで悩んでないんだよ、悟空』
未だ転がってる悟空に手を貸して起き上がらせる。
一人部屋にした所で八戒の事だし、寝る前までこっちの部屋に居て皆が散らかした物片付けたり、灰皿の灰片付けたり、お茶入れたり…。
本人は保父さんって言ってるけど、やってる事がお母さんだ。
『兎に角、せめて今日だけでも自分が散らかした物位自分で片付けようよ。それくらい皆子供じゃないから出来るでしょ?』
「おい、茶」
『いや、茶じゃなくて…マイペース過ぎない?』
入れますけどね?
普段頼りっきりでもお茶くらい入れられますよ、えぇ。
三蔵に温かいお茶を入れるついでに自分には冷たいお茶を入れていると、部屋の方から「ただいま戻りました」と八戒の声。
もう帰ってきたのね。
お盆にコップを乗せ、部屋に戻る。
『おかえりなさい。八戒もお茶飲む?』
「えぇ、でも自分で『帰ってきたばっかなんだから少し休みなよ』…そうですか?」
『冷たいのと温かいのどっちがいー?』
「じゃあ冷たいので」
「おっけー」と返事をして三蔵に入れたお茶を渡し、自分のを置いたらまた奥に引っ込む。
もう9月も後半だというのに未だ茹だるような暑さに、秋はどこにいったのやらとため息が出る。
この暑いのに熱いお茶をご所望の三蔵には暑さを認識する機能がないのかと心配になる。
部屋に戻り八戒にお茶を手渡すと、自分も隣に腰掛ける。
八戒は三蔵と次の町までの経路を相談していた。
休むとは…?
普段忙しなく動いてるから、何かしてないと落ち着かないのかしら?
やっぱり肩叩き券最良なのでは…?
「なー、三蔵腹減ったー」
「あ、それでしたら大通りの方に美味しそうなお店ありましたよ。今日はそこにしませんか?」
「小籠包が絶品みたいですよ」とにっこりの八戒。
その言葉に目をキラキラさせ、「そこにしようぜ!」とベッドの上でぴょんぴょんと跳ねる悟空。
同じベッドに腰掛けてた悟浄が呆れ顔で身支度を整えてる。
どうやら今日のご飯が決まった様だ。
----------
八戒の言った通り、今まで食べた小籠包の中で1番なんじゃないかと言うくらい美味しかった。
普段そんなに飲まない八戒も、悟浄に言われてお酒を煽っていた。
と言っても八戒はザルの様で、いくら飲んでも顔色ひとつ変わらなかった。
そう言えば一番長く付き合いのあるらしい悟浄ですら、八戒が酔った所見たことないって言ってたなぁ…。
今は夕飯を済ませ、宿に戻ってきたところだ。
ご飯屋さんで酔い潰れた悟浄と三蔵は悟空が抱えて帰ってきてくれて助かった。
力持ちが居ると本当に助かる。
一瞬本気で三蔵ならギリギリ抱えて帰れるんじゃないかと考えた。
三蔵と悟浄を布団に寝かせ、悟空は満腹でおネムになっていたので八戒の部屋にお邪魔させてもらった。
『お疲れ様ー』
「瑞希もお疲れ様です」
「はいどーぞー」と帰り際買っておいた飲み物のボトルを八戒に手渡して椅子に腰かける。
しばし沈黙…。
そういえば今まで八戒と2人でってあんまなかったかも…。
「ありがとうございます」
『んえ?何が?』
突然のお礼に変な声出た。
何よ、んえ?って。
「今日一日、気を回してくれていたでしょう?」
あ…なんだ、気付かれてたのか。
別に隠してたわけじゃないけど、なんだか気恥しい。
「僕が言う前に悟空達に片付けさせたり、三蔵のお茶入れたり…食事の席でも今日僕何もしませんでしたよ?」
『でもそれを毎回やってくれてたんでしょ?周りを見て、率先して動いて…誰にでも出来る事じゃないもん。今日一日だけでも大変さが身に染みたわ…』
「でもどうして急に?」
『今日、9月21日!八戒の誕生日でしょ?だから少しでも楽してほしいなーって』
「あぁ、もうそんなになりますか…」
忙しない毎日で誕生日すら忘れていた様で、気の抜けた顔で笑っていた。
いつも笑顔で、温かくて、気配り屋さんで…でも怒ると怖くて…。
優しい皆の保父さん。
『いつもありがとう、保父さん』
「いえいえ、これも保父さんの役目ですから」
冗談交じりに笑うと、いつもの笑顔で返してくれる八戒。
この優しい笑顔が大好きだ。
『一応プレゼントも用意しようと思ったんだけど、八戒って何欲しいのか分からなかったからさ…これ………』
そっと差し出される肩叩き券。
「……これは」
『肩叩き券です』
「……」
『お手伝い券もあります』
更に差し出されるお手伝い券。
あ、ヤバい、震え始めた…。
怒らせた?これやばいヤツ…?
『は、八戒…?』
「……ぷっ…あっはははは!」
『そ、そんな笑う事ある?!』
「だってこれ…っ!」
そんな腹抱えて笑わなくても!
涙出てるじゃんか!
こんなに笑ってる八戒はじめてなんですけど?!
「ありがとうございます、瑞希」
私がむーっと少し不貞腐れた様な顔をすると、いつもの柔らかい笑みでお礼を言う八戒。
あぁ、私はつくづくこの笑顔に弱い。
HappyBirthday 八戒
END
八戒以外の4人が集まる一室でバンッと大きな音を立てて立ち上がる。
ベッドで戯れていた悟空と悟浄は動きを止め、悟空はそのままベッドから落ちた。
三蔵は表情こそ変わらないものの、一瞬ビクッとなったのを私は見逃してない。
『ねぇ、今日八戒誕生日だよね?』
「あ?あー…そう言えばそうだっけか」
『なのになんで八戒が買い物行ってんのよ?!』
「ならお前が行けばよかっただろ」
『大した量じゃないからって断られたの!言わせないでよ!』
一応私だって「たまにはゆっくりしてて」って買い物代わろうとしたよ?!
それでもいつもの爽やかな笑顔で断られたらもうなんも言えなくなっちゃったのよ!
プレゼントもギリギリまで悩んだけど、普段のポジションもあってか"肩叩き券"とかしか思い浮かばなかった。
実際そんなのでもないよりマシなんだろうけど、これでは保父さんではなく完全にお母さん扱いだ。
もし喜んでくれたとしても流石にそれはダメでしょ…?
かと言って運転ができる訳でもないので、ここまでの道のりで運転を代わる事も出来なかった。
ご飯を作ることも考えたが、外食一択。
せめてもの救いは八戒を一人部屋にねじ込めた事くらい。
一人部屋となれば、普段なら三蔵が有無を言わさずだったり、紅一点だからという事で私が一人部屋になる事が多いけど、今日くらいは一人部屋を満喫してほしかった。
『八戒っていつも気使ってくれたりして、世話になってる分何か返したいんだよ』
「何かって例えば?」
『それが分かったらここまで悩んでないんだよ、悟空』
未だ転がってる悟空に手を貸して起き上がらせる。
一人部屋にした所で八戒の事だし、寝る前までこっちの部屋に居て皆が散らかした物片付けたり、灰皿の灰片付けたり、お茶入れたり…。
本人は保父さんって言ってるけど、やってる事がお母さんだ。
『兎に角、せめて今日だけでも自分が散らかした物位自分で片付けようよ。それくらい皆子供じゃないから出来るでしょ?』
「おい、茶」
『いや、茶じゃなくて…マイペース過ぎない?』
入れますけどね?
普段頼りっきりでもお茶くらい入れられますよ、えぇ。
三蔵に温かいお茶を入れるついでに自分には冷たいお茶を入れていると、部屋の方から「ただいま戻りました」と八戒の声。
もう帰ってきたのね。
お盆にコップを乗せ、部屋に戻る。
『おかえりなさい。八戒もお茶飲む?』
「えぇ、でも自分で『帰ってきたばっかなんだから少し休みなよ』…そうですか?」
『冷たいのと温かいのどっちがいー?』
「じゃあ冷たいので」
「おっけー」と返事をして三蔵に入れたお茶を渡し、自分のを置いたらまた奥に引っ込む。
もう9月も後半だというのに未だ茹だるような暑さに、秋はどこにいったのやらとため息が出る。
この暑いのに熱いお茶をご所望の三蔵には暑さを認識する機能がないのかと心配になる。
部屋に戻り八戒にお茶を手渡すと、自分も隣に腰掛ける。
八戒は三蔵と次の町までの経路を相談していた。
休むとは…?
普段忙しなく動いてるから、何かしてないと落ち着かないのかしら?
やっぱり肩叩き券最良なのでは…?
「なー、三蔵腹減ったー」
「あ、それでしたら大通りの方に美味しそうなお店ありましたよ。今日はそこにしませんか?」
「小籠包が絶品みたいですよ」とにっこりの八戒。
その言葉に目をキラキラさせ、「そこにしようぜ!」とベッドの上でぴょんぴょんと跳ねる悟空。
同じベッドに腰掛けてた悟浄が呆れ顔で身支度を整えてる。
どうやら今日のご飯が決まった様だ。
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八戒の言った通り、今まで食べた小籠包の中で1番なんじゃないかと言うくらい美味しかった。
普段そんなに飲まない八戒も、悟浄に言われてお酒を煽っていた。
と言っても八戒はザルの様で、いくら飲んでも顔色ひとつ変わらなかった。
そう言えば一番長く付き合いのあるらしい悟浄ですら、八戒が酔った所見たことないって言ってたなぁ…。
今は夕飯を済ませ、宿に戻ってきたところだ。
ご飯屋さんで酔い潰れた悟浄と三蔵は悟空が抱えて帰ってきてくれて助かった。
力持ちが居ると本当に助かる。
一瞬本気で三蔵ならギリギリ抱えて帰れるんじゃないかと考えた。
三蔵と悟浄を布団に寝かせ、悟空は満腹でおネムになっていたので八戒の部屋にお邪魔させてもらった。
『お疲れ様ー』
「瑞希もお疲れ様です」
「はいどーぞー」と帰り際買っておいた飲み物のボトルを八戒に手渡して椅子に腰かける。
しばし沈黙…。
そういえば今まで八戒と2人でってあんまなかったかも…。
「ありがとうございます」
『んえ?何が?』
突然のお礼に変な声出た。
何よ、んえ?って。
「今日一日、気を回してくれていたでしょう?」
あ…なんだ、気付かれてたのか。
別に隠してたわけじゃないけど、なんだか気恥しい。
「僕が言う前に悟空達に片付けさせたり、三蔵のお茶入れたり…食事の席でも今日僕何もしませんでしたよ?」
『でもそれを毎回やってくれてたんでしょ?周りを見て、率先して動いて…誰にでも出来る事じゃないもん。今日一日だけでも大変さが身に染みたわ…』
「でもどうして急に?」
『今日、9月21日!八戒の誕生日でしょ?だから少しでも楽してほしいなーって』
「あぁ、もうそんなになりますか…」
忙しない毎日で誕生日すら忘れていた様で、気の抜けた顔で笑っていた。
いつも笑顔で、温かくて、気配り屋さんで…でも怒ると怖くて…。
優しい皆の保父さん。
『いつもありがとう、保父さん』
「いえいえ、これも保父さんの役目ですから」
冗談交じりに笑うと、いつもの笑顔で返してくれる八戒。
この優しい笑顔が大好きだ。
『一応プレゼントも用意しようと思ったんだけど、八戒って何欲しいのか分からなかったからさ…これ………』
そっと差し出される肩叩き券。
「……これは」
『肩叩き券です』
「……」
『お手伝い券もあります』
更に差し出されるお手伝い券。
あ、ヤバい、震え始めた…。
怒らせた?これやばいヤツ…?
『は、八戒…?』
「……ぷっ…あっはははは!」
『そ、そんな笑う事ある?!』
「だってこれ…っ!」
そんな腹抱えて笑わなくても!
涙出てるじゃんか!
こんなに笑ってる八戒はじめてなんですけど?!
「ありがとうございます、瑞希」
私がむーっと少し不貞腐れた様な顔をすると、いつもの柔らかい笑みでお礼を言う八戒。
あぁ、私はつくづくこの笑顔に弱い。
HappyBirthday 八戒
END