貴方の鼓動
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その日は朝から雲行きが怪しくて、少し道を逸れた所にある村で宿を取った。
部屋は3人部屋と2人部屋。
くじ引きの結果、私は三蔵と2人部屋になった。
夕方になるとポツポツと雨が降り始めた。
雨の日は三蔵の機嫌が良くない。
いつもより二割増に刻まれた眉間のシワが機嫌の悪さを物語っていた。
『三蔵。お茶入れるけど、三蔵も飲む?』
「……あぁ」
普段も饒舌な訳では無いけど、今日は余計に無口な彼。
入れたてのお茶を三蔵に差し出すと、何も言わずに口へ運ぶ。
それを横目に三蔵が座る向かいに座って自らもゆらゆらと湯気のたつお茶に口をつける。
静かな室内で、ただ雨の音だけが響く。
『雨、酷くなってきたね』
「…あぁ」
会話が続かない。
元々今日の三蔵相手に会話が続くとも思ってはいないのだが、これはこれで寂しいものがある。
沈黙が痛い。
こんな事なら部屋決めの時に八戒に代わってもらうんだったな。
…よし、こんな日は早々に寝てしまおう。
それが良い。
『私そろそろ寝るね、三蔵はまだ起きてる?』
「…いや」
湯呑みを置いてベッドに入る三蔵を見届けて、湯呑みを片付ける。
いや、これくらい自分で片付けろよ!なんて思うけど、今の三蔵にそんな事言える程命知らずではない。
私も明日の朝日を拝みたい。
湯呑みを片付けて、一応「おやすみ」と一声かけてから電気を消したが、返事はなかった。
いつもなら「あぁ」とか言ってくれるんだけどなぁ。
まぁ仕方ない、と思い直し空いていた方のベッドに潜り込んだ。
依然止む所か強まる雨足。
雨粒が窓を叩く音がうるさい位だ。
先程から寝ようとはしているものの、静かな部屋に雨音が響いて上手く寝付けずにいた。
-ゴロゴロ… -
!!!
雷…?
え、嘘やだ!雷怖い…!
とはいえこの雨音だ。
音も遠くで聞こえた感じだったし、聞き間違いかもしれない。
きっと雷が苦手過ぎて幻聴でも聞いたに違いない。
-ピカッ……ゴロゴロ…-
幻聴じゃなかった…!
どうしよう…怖い…。
寒くないのに震えてきた…。
取り急ぎ布団に潜って外からの光を遮断し耳を塞ぐ。
と言っても視界が遮られただけで多少音は聞こえるので、あまり意味のある行動とは言えないが、こうする他思いつかなかった。
音がする度にビクリと跳ね上がる。
こうなったら雷が通り過ぎるまで我慢するしかない。
力の限り耳を塞ぎ、怖くない怖くないと自己暗示をかけながら丸くなる。
-ドーーーンッ バリバリバリバリ-
『ヒッ…!』
近くに落ちた?!
もう無理やだ怖い!
目頭が熱くなる。
誰か今ので叫ばなかった私を褒めてほしい。
グズグズと布団の中で震えているとバサりと頭までスッポリと被っていた布団を剥ぎ取られた。
何事かと目を向けるとそこに立っていたのは怪訝そうにこちらを見下ろす本日の同室相手の三蔵。
『さんぞ…?』
「さっきから呼んでんのに返事もしねぇで何やってんだ、お前」
耳を塞ぐのに必死で聞こえてなかったが、どうやら三蔵は私を呼んでいたらしい。
「ごめん」と謝って起き上がる。
「で、何やってんだ」
『あの…雷怖くて… -ゴロゴロ- っ!!!!』
三蔵と話す為に耳から手を離して居た為、雷の音をダイレクトに聞いてしまい飛び上がる。
その拍子に目の前に居た三蔵に抱き着いてしまった。
が、今はそんな事を気にしてられる状態ではない。
「チッ」
頭上から三蔵の舌打ちが聞こえたが、カタカタと震える身体はいうことを聞いてくれなくてそのままの体勢から動けずに居ると、ガシッと肩を掴まれた。
ベリっと引き剥がされて、そのままポイッとベッドに戻される。
何事かと呆気に取られていると、あろう事か私が寝ているベッドに三蔵が入って来た。
「おい、もっとそっち詰めろ」
『え、あ、はい』
言われた通りに三蔵とは逆方向に身体を詰めると、少し強引に抱き締められた。
息苦しさに顔背けると、そのまま三蔵の胸に耳を押し付ける形になった。
ドクンドクンと心地よい鼓動が聞こえる。
「怖ぇなら始めからそう言え」
『ごめんなさい』
「……もう寝ろ」
さりげなく逆側の耳を塞いでくれる三蔵。
三蔵の優しさに感謝しながら鼓動に集中すると、いつの間にか涙も引っ込んで、さっきまで全く無かった眠気に襲われた。
『ありがとう、三蔵…。』
お礼を言えたのは、現実なのか。
はたまたま夢の中なのか。
知っているのきっと三蔵だけ……。
END
部屋は3人部屋と2人部屋。
くじ引きの結果、私は三蔵と2人部屋になった。
夕方になるとポツポツと雨が降り始めた。
雨の日は三蔵の機嫌が良くない。
いつもより二割増に刻まれた眉間のシワが機嫌の悪さを物語っていた。
『三蔵。お茶入れるけど、三蔵も飲む?』
「……あぁ」
普段も饒舌な訳では無いけど、今日は余計に無口な彼。
入れたてのお茶を三蔵に差し出すと、何も言わずに口へ運ぶ。
それを横目に三蔵が座る向かいに座って自らもゆらゆらと湯気のたつお茶に口をつける。
静かな室内で、ただ雨の音だけが響く。
『雨、酷くなってきたね』
「…あぁ」
会話が続かない。
元々今日の三蔵相手に会話が続くとも思ってはいないのだが、これはこれで寂しいものがある。
沈黙が痛い。
こんな事なら部屋決めの時に八戒に代わってもらうんだったな。
…よし、こんな日は早々に寝てしまおう。
それが良い。
『私そろそろ寝るね、三蔵はまだ起きてる?』
「…いや」
湯呑みを置いてベッドに入る三蔵を見届けて、湯呑みを片付ける。
いや、これくらい自分で片付けろよ!なんて思うけど、今の三蔵にそんな事言える程命知らずではない。
私も明日の朝日を拝みたい。
湯呑みを片付けて、一応「おやすみ」と一声かけてから電気を消したが、返事はなかった。
いつもなら「あぁ」とか言ってくれるんだけどなぁ。
まぁ仕方ない、と思い直し空いていた方のベッドに潜り込んだ。
依然止む所か強まる雨足。
雨粒が窓を叩く音がうるさい位だ。
先程から寝ようとはしているものの、静かな部屋に雨音が響いて上手く寝付けずにいた。
-ゴロゴロ… -
!!!
雷…?
え、嘘やだ!雷怖い…!
とはいえこの雨音だ。
音も遠くで聞こえた感じだったし、聞き間違いかもしれない。
きっと雷が苦手過ぎて幻聴でも聞いたに違いない。
-ピカッ……ゴロゴロ…-
幻聴じゃなかった…!
どうしよう…怖い…。
寒くないのに震えてきた…。
取り急ぎ布団に潜って外からの光を遮断し耳を塞ぐ。
と言っても視界が遮られただけで多少音は聞こえるので、あまり意味のある行動とは言えないが、こうする他思いつかなかった。
音がする度にビクリと跳ね上がる。
こうなったら雷が通り過ぎるまで我慢するしかない。
力の限り耳を塞ぎ、怖くない怖くないと自己暗示をかけながら丸くなる。
-ドーーーンッ バリバリバリバリ-
『ヒッ…!』
近くに落ちた?!
もう無理やだ怖い!
目頭が熱くなる。
誰か今ので叫ばなかった私を褒めてほしい。
グズグズと布団の中で震えているとバサりと頭までスッポリと被っていた布団を剥ぎ取られた。
何事かと目を向けるとそこに立っていたのは怪訝そうにこちらを見下ろす本日の同室相手の三蔵。
『さんぞ…?』
「さっきから呼んでんのに返事もしねぇで何やってんだ、お前」
耳を塞ぐのに必死で聞こえてなかったが、どうやら三蔵は私を呼んでいたらしい。
「ごめん」と謝って起き上がる。
「で、何やってんだ」
『あの…雷怖くて… -ゴロゴロ- っ!!!!』
三蔵と話す為に耳から手を離して居た為、雷の音をダイレクトに聞いてしまい飛び上がる。
その拍子に目の前に居た三蔵に抱き着いてしまった。
が、今はそんな事を気にしてられる状態ではない。
「チッ」
頭上から三蔵の舌打ちが聞こえたが、カタカタと震える身体はいうことを聞いてくれなくてそのままの体勢から動けずに居ると、ガシッと肩を掴まれた。
ベリっと引き剥がされて、そのままポイッとベッドに戻される。
何事かと呆気に取られていると、あろう事か私が寝ているベッドに三蔵が入って来た。
「おい、もっとそっち詰めろ」
『え、あ、はい』
言われた通りに三蔵とは逆方向に身体を詰めると、少し強引に抱き締められた。
息苦しさに顔背けると、そのまま三蔵の胸に耳を押し付ける形になった。
ドクンドクンと心地よい鼓動が聞こえる。
「怖ぇなら始めからそう言え」
『ごめんなさい』
「……もう寝ろ」
さりげなく逆側の耳を塞いでくれる三蔵。
三蔵の優しさに感謝しながら鼓動に集中すると、いつの間にか涙も引っ込んで、さっきまで全く無かった眠気に襲われた。
『ありがとう、三蔵…。』
お礼を言えたのは、現実なのか。
はたまたま夢の中なのか。
知っているのきっと三蔵だけ……。
END