第壱話
夢小説設定
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ある昼下がり教室で机に頬杖を付き、黒板を眺める少女。
彼女の名前は本城 瑞希。
人生に退屈を感じている女子高生。
昼食を食べ終えた後の丁度良い満腹感と暖かな日差しが差し込むと、当然の様に睡魔にも襲われる訳で…。
教室の窓際に位置する彼女の髪を開けられた窓から吹き込む風が揺らすと、睡魔に抗う事を諦めた彼女は眠りに着こうと机に伏せた。
伏せてから数分も経たないうちに彼女からは静かな寝息が聞こえ始めた。
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夢見るは何処までも続く真っ白な世界。
そこには瑞希と、艶やかな黒髪のやけに露出度の高い服の女性の2人。
現実離れしたその状況に、瑞希がこれは夢だと気付くのにそう時間はかからなかった。
『…誰?』
「俺は観世音菩薩だ」
『その菩薩様が私に何か用?』
またも瑞希は自分の疑問を投げ掛ける。
その疑問を聞いた観世音菩薩は何か企んでいるかの様に、ニヤリと口端を上げた。
「お前、この世界を退屈に感じてんだろ?だから来てやったんだよ」
『私はそんな事頼んでない』
「頼んでなくても来んだよ」
『強引過ぎてちょっと引いてる。…で?退屈を感じてる私になんかしてくれるの?』
「お前を必要としてる世界に連れてってやる」
『そんな世界有る訳ないでしょ』
「有るから来たんだろ、バーカ」
『バッ!』
何故初対面の奴に馬鹿呼ばわりされなければならないのかと思いながら、瑞希は観世音菩薩を睨んだ。
そんな瑞希を見て懐かしむかの様に微笑む観世音菩薩。
「まぁそう睨むなよ。俺がちゃんとお前を必要としてる世界に連れてってやる」
そう言ってそっと瑞希の頭を撫でると、どこか懐かしく、暖かいその手に驚くと同時に、初めて会った人に容易に触れられる程自分の警戒心がない訳でもないはずなのに、嫌悪どころか心地良さすら感じている自分に驚き瑞希は一瞬目を見開く。
『ねぇ、その世界って楽しい?』
「スリル感じたくねぇか?お前の世界には到底ない様なスリルを」
『スリルねぇ…面白そう。連れてってよ、その私を必要としてる世界に』
初めて会ったはずの観世音菩薩の手に懐かしさを覚えたからなのか、案外あっさりと受け入れている瑞希。
所詮は夢と鷹を括っているのだろう。
夢の中なら何を言ったところで現実になんの影響もないのだから。
『でもどうやって行くの?確か私今授業中に寝てるはずなんだけど…』
「いや、寝んなよ…。ま、この俺様が直々に迎えに行ってやるよ、朱衣。いや、今は瑞希だったな」
呆れた様にそう言い残すと、観世音菩薩は神々しい光と共に消えていく。
完全に消えるより先に瑞希の視界は歪み、徐々に暗闇へと落ちるように手放しそうになる意識を必死でつなぎ止めながら「なんだよそれ…」と呟くと、そこで瑞希の意識は途絶えてしまった。