Girl Who Leapt Through Time
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
打ち合いをしてから、井上さんが作った食事を頂いて湯を浴びるとその日は直ぐに疲れて寝てしまった。
しかし、夜中に変な声が聞こえた気がして私は目を開けた。窓から月を見れば大体だが夜中の2時くらいだろうと予測できた。狼や野犬でも飼っているのだろうかと思って少し気になったけれど、あまり私がウロチョロしていても土方さんがまた項垂れるから辞めようと思いそのまま目を閉じようとしたが、ギシギシと廊下を歩く音はこちらに向かって来ていた。それも多分4人は居る。おかしいなと思ったのは歩き方だった。
夜中に廊下を歩く時は軋むから必ず皆起こさない様に配慮して静かに歩いてトイレなどに行っている。此処では厠と呼ぶらしいけど。
その配慮が全く無い様な足音に、私は布団から出て立ち上がった。そして躊躇なく戸を開けると、先の廊下に隊士がみえる。こんな夜中に隊服を着ている事におかしいなと思ったが、もっとおかしいのは隊士達は白髪で目が赤かった事だった。戸の開いた音でこちらを振り返ると私を見て刀を持ち代えてニヤニヤと笑っている。
私が護身用のナイフを構えると、直ぐに全員で一斉に切り掛かって来た。
刃は使わずに全員打撃のみで気絶させてから彼等に近づいて観察する。血が欲しいと小さく寝言のように呟く彼等からは濃い血の匂いがした。どうしようかと迷っていると、ハァハァと息を切らせた平助が廊下を走ってくる。
私を見つけると、怪我は無いか!?と勢い良く聞いてから四人の姿を見て、まぁ。無いよな…。とだけ言って観察している私の隣に立った。
「平ちゃん、この人達何?」
「平ちゃんて…。まぁいいや。こいつらは新撰組の奴だよ。」
「平ちゃんもそうじゃん」
何も言わなくなった彼を見ると、話せないのか複雑な表情をしていたので私ももう聞かなかった。何とか怪我だけでも治そうと思い、紋章を発動させると青く美しい光が周り全てを照らした。
うわぁ綺麗だなぁと平ちゃんが目を輝かせているのを見ていると紋章の力を初めて見た時の自分を思い出した。
異常状態と身体治癒を使って彼等を治療していると、3分も経たないうちに彼等の髪色は黒に戻った。心なしか穏やかな安らぎの寝顔をしている。その時に平ちゃんの走って来た方角から山南さんと土方さんが急足で向かってくる。2人に平ちゃんと一緒に事情を説明すると、見ちまったか。と土方さんはやっぱりまた項垂れていた。
逆に彼等の様子に山南さんはお礼を言ってくれた。興奮状態は収まると思うけれど、血が欲しいとゆう衝動は治した事が無いから治るか分からないと私が言えば、3人は気まずそうな顔をして私から顔を背けていた
言ってはいけない事だったのかなと思ったけれど、知らないフリをして、おやすみなさいとだけ言えば
3人には特にそれから何も言われなかったので素直に部屋に戻り眠る事にした。
朝起きて、身支度を済ませていると部屋の戸の外から名前を呼ばれた。
「雪那ちゃん、起きてる?」
「入って平気だよ」
スッと扉が開くと、薄ら笑いを浮かべる総司が立っていた。
「どしたの?」
「土方さんがこれを渡せってさ」
ハイと笑顔で渡されたのは、男性用の袴だった。ご丁寧に上下セットで髪結いの紐まである。そういえば昨日の夕食の時に風紀が乱れるから格好を変えろと言われたのを思い出した。
いつも着ていた服はユーフォリアから買ってもらった黒の長袖のチャイナ服の様な物だったから、流石に此処では目立ち過ぎるかもしれない。
「着方分からないから総司教えてくれないかな?」
そう私が言えば、何で君に呼び捨てされないといけないのかなぁと嫌な顔をされた。その時、ズキリと小さく傷付いたのが分かって自分でもちょっとビックリしてしまった。
「…じゃあさ、苗字教えてくれないかな?」
「沖田だけど。」
「沖田くん教えてくれない?」
「…総司でいいよ。」
何だこいつと内心思ったけれど、不貞腐れたような顔が少し可愛いかったので何も突っ込まなかった。
着方だけ教えて貰うと、総司は部屋の外に居るから着れたら呼んでとだけ言って出て行った。一応見よう見真似で着てから髪を結うと総司を呼んだ。
「一応着れたけどどうかな?」
「う、うーん。これはどうしよう」
困ったように苦笑いで私を見た総司は、とりあえずちょっと来てと言って私の手を引いた。早歩きで歩く彼について行けば彼はいつも食事をする部屋に入り、座っていた土方さんを呼んだ。
佐之さんや永倉さん、平ちゃんや斉藤さんに近藤さんも居たけれど私の姿を見ると皆微妙な顔をしたのが分かって私は首を傾げた。
「そんなに変ですか?」
「…変とかじゃねぇよ」
そう言った土方さんはまた項垂れていて。私はいつも彼のストレスになってるなぁと思ってしまう
「総司、そんなに私の着方変なの?」
「うーんとゆうか胸かなぁ」
そう言った総司に佐之さんが、胸があり過ぎてそれじゃ男に見えないだろうよと突っ込んできた。
「ノーブラで着る物なの?」
そう言うと、土方さんは私にデコピンをしてから赤い顔で怒った。ケラケラと笑った総司にちゃんと教えろって言っただろうと次は総司が怒られていたけれど
下着の事まで僕は分かりませんよと彼はあっけらかんとしながら言った。
「雪那、さらし巻いてみるか?」
そう言って、私に包帯のような物を渡して来た平ちゃんに、巻き方が分からないから平ちゃん巻いてくれないかな?と言うと真っ赤な顔で出来る訳無いだろ!と怒鳴られてしまった。
そんな私を見て総司は涙を出しながら笑っていた。
反対に斉藤さんは顔を赤らめて最初からずっと下を向いていた。
その後、佐之さんが巻き方を彼の身体で教えてくれたので一度部屋に戻って巻いてみると胸が潰れるような感じでたいそう不快だった。
仕方が無いからそのままで一応戻ると、皆んなからあまり変わって無いと言われて私は不貞腐れる事にしたのだった。
食事が終わってから土方さんに呼ばれた私はまだ不貞腐れてんのかと怒られながらも、ジトリとした目で彼を見つめる。
「男装は必須だ。仕方ねーだろ。」
「オッパイが潰れて不快です。しかも巻いても変わって無いとか言われました。」
「たく、お前は女何だから下品な事言うな」
「オッパイは下品じゃないです」
そんなやり取りをしていると、ゲラゲラと大笑いする総司の声と爽やかな近藤さんの笑い声が聞こえてきて土方さんは舌打ちしていた。そんな笑い声に怒りも呆れに変わったように土方さんは溜息をついてから私を見た。
「ここからは真剣な話だ。雪那、昨日4人の隊士がお前を襲ったな。あいつ等は何か言っていたか?」
「直ぐに気絶させちゃったから話してないけど、気絶してから譫言の様に血が欲しいって言ってましたね」
「それで?どうしたんだ?」
「…あまりにも異常だからそれを癒すような力を使いました。後は身体的な怪我や異常も治した。かな?」
「だとよ。山南さん」
そう言うと隣の部屋から山南さんと、昨日の4人の隊士が顔を出した。彼等は顔色も良く普通の人のように笑って、ありがとうございましたと私に頭を下げて来た。特に大した事はしてないですと言うと、山南さんは少しだけ申し訳無さそうな顔でまた次に何かあったら頼らせて欲しいと言って頭を下げて来たので。
もっと気楽にして下さい、頭を上げて下さいとこちらが困ってしまった。
皆がそれぞれ仕事に戻ったので、土方さんに夕食の準備を手伝ってくると言うと。お前はさらしの巻き方を練習して来いと怒られたので部屋に一度戻ってから佐之さんに言われた事を思い出してもう一度巻き直しをした。
最終に巻いた時よりは上手くなった気がして、上機嫌で台所に向かうとまだ誰も来ていなかったので
食材と調味料を確認してから献立を考えていると、面倒そうな顔の総司が台所に入ってきた。
「あれ?雪那ちゃん。どしたの?」
「夕食作りしたいなと思って」
「助かるよ、今日一くんが遅いから僕一人で困ってたんだよね」
そう言って懐っこい表情を見せた総司に、内心いつもこれくらい可愛ければなぁと思いつつ、何が食べたいか聞いてみる事にした。総司はお酒があれば何でも良いと言って特に食に興味は無いみたいなので残っているじゃが芋でコロッケを作る事にした。
電子レンジとフライパンが途中に物凄く恋しくなったけれど、無いなら無いなりでソースもしょうゆベースで作る事にした。揚げたてのコロッケにソースを垂らしてから総司の前に出してみる。
「何この茶色い物体」
「コロッケ。味見してみて」
私がそう言うと、彼は素直にパクリと食いついた。
「…美味しい。」
「でしょ?キャベツの千切りに合うんだよ」
「凄く美味しいよ。今日の夕飯楽しみだなぁ」
「残りさっさと作っちゃうから、総司もこれだけお願い」
そう言ってキャベツの千切りを総司に頼めば、彼は面倒な顔はせずにやってくれた。茄子とししとうの甘辛炒めと漬物と味噌汁を作って完成した物を器によそっていると、井上さんと珍しく山崎さんが配膳を手伝ってくれると言って台所に入ってきた。
その日の夕飯のコロッケは大当たりだったようで。
皆が取り合いをしながら笑顔で食べている所を見て、私も久しぶりに楽しかった。
永倉さんにコロッケを1つ取られて不貞腐れている平ちゃんに私のコロッケを1つあげると、平ちゃんは嬉しそうに平らげていた。
珍しく総司も食事を残さなかったし、斉藤さんは是非作り方を教えてくれと真剣な表情で言ってきたので、次は一緒に作って下さいとお願いすると承知したと言ってくれた。
湯から上がると火照った身体に丁度良いくらいの気持ちが良い風が吹いて来た。永倉さんに貰ったお酒を片手に廊下に座布団を敷いて座ると何とも贅沢な様な感じがした。おちょこに注いでから少しだけ口につける
この時代の酒は辛いなと思い空を見上げると現代より月や星がとても綺麗で美しい。
テレビが無いのが不便だけど、その分虫の声や鳥の声が良く聞こえる気がした。
私の見張りをしている総司は、やる気があるのか無いのか。少し離れた所でゴロリと横になっている。寝ているのかも分からないけれどそっとしておいた。
「雪那ー。何だよ一人で飲んでんのかよ」
「平ちゃん。何持ってるの?」
廊下から顔を出した平助は右手に何かを持ちながら私の隣に座った。さっきの礼だと言って包みを開けると、そこには豆大福が顔を覗かせていて、私は久しぶりに和菓子を見たなと嬉しくなってしまう。
「礼って何?」
「コロッケくれただろ?」
「いいのに。でもありがとう」
久しぶりに和菓子見たよ。と言うと平ちゃんは少しだけ黙ってから遠慮がちに口を開いた。
「なぁ、雪那。お前はどんな所から来たんだ?…言いたく無かったらいいんだけどよ」
そう聞いて来た平ちゃんに、彼なりに私を心配してくれてるのかな?と思うと、余り話したく無い話だが彼には良いかなと何と無く思った。
「私の本当の家は日本だよ、時代はちょっと違うけど
。平和で戦争も無いから住みやすかったな」
「近藤さんの話だと、違う世界にも居たとか聞いたけど。本当なのか?」
「うん、私もどうやったら行けるのかも分からないんだけどね。最初に行った世界は平ちゃんも見た青い光覚えてる?」
「ああ。」
「あんなのが普通の世界で、ここでゆう妖怪みたいなのがウヨウヨしてた。戦争も多くて沢山の人が死んでた。」
「妖怪がウロウロって本当か?」
「正しくは妖怪では無くて、怪物みたいな感じかな?でも2年くらいしか居れなかったし次の世界も2年くらい居て飛ばされたからなぁ。此処も2年したら飛んじゃうのかなって考える時がある」
「雪那、そんなに小さい時から大変な思いしてだんだな」
「小さいって何??」
「年だよ。今から4、5年前には違う世界で大変だったんだろ?」
「平ちゃん、私今27だよ。飛ばされた時は22くらいだったから小さくは無いよ」
そう言った私の言葉に、少し離れた場所に居た総司の吹き出したような音と目とくちが開きっぱなしの平ちゃんに若く見られるのは嬉しいけど、何だか複雑な心境になった。通りでみんな頭を撫でて来たりする筈だと昔を思い返してみると納得がいった気がした。
それから2日間。土方さんと山南さんが何処かに行っているみたいで、隊士達は夜遅くまで呑みに出たりと自由奔放にしていたが山南さんの重傷を文で聞いてから皆少し大人しくなったような気がしていた。
次の日、朝身支度を終えてから朝食を作り終わると部屋に戻ってから誰も居ない事を確認して屋根に飛び乗った。朝日が気持ち良くて、久しぶりに運動したくなり屋根から屋根へ飛び移り自然の多い所まで来ると深呼吸をして草原にゴロリと寝転んだ。
木の造りの家が並び着物を着た女性達が笑いながら歩いている。写真でしか見た事が無い風景に不思議な気持ちになりながらも、あまり遅いと心配されるのでブラブラと街を歩きながら戻る事にした。
途中で歩いていた女性に、本題の下着屋は無いか聞いてみる事にしたが、聞いた途端に嫌な顔をされながらも場所は教えて貰えた。
感じが悪いなぁと思いながら歩いていると、お兄さんゆで卵いかが?等と売り子さんに言われて自分が今男装している事に気付いてさっきの女性に申し訳なく思った。お金が無い事にも気付いて一度帰ろうと屯所の前まで来ると、怒り顔の土方さんが門に居て、おかえりなさいと走り寄るとゲンコツを食らった。
「良かった無事でしたか。」そう言って胸を撫で下ろす山崎くんに、首を傾げると居ないので心配しましたと言われて少しだけ泣きそうになってしまった。遠くから私を見るなり走り寄って来る総司を見て、総司も探してくれてたんだと胸が温かくなった気がした。
「お前は何処に行ってたんだ」
土方さんの鬼の様な形相に私はこれは素直に言うしか無いと思い口を開く。
「…下着を買いに…」
そう言った私に山崎さんと土方さんがピシリと固まってしまったのが分かった。1人だけ楽しそうに笑っている総司は、それで下着は買えたの?と聞いて来る。
「お金持って無かった…」
それを聞いてまたゲラゲラと笑い出した総司を叱り、お金をくれる土方さんは何だかんだ優しいなぁと思った。
。
しかし、夜中に変な声が聞こえた気がして私は目を開けた。窓から月を見れば大体だが夜中の2時くらいだろうと予測できた。狼や野犬でも飼っているのだろうかと思って少し気になったけれど、あまり私がウロチョロしていても土方さんがまた項垂れるから辞めようと思いそのまま目を閉じようとしたが、ギシギシと廊下を歩く音はこちらに向かって来ていた。それも多分4人は居る。おかしいなと思ったのは歩き方だった。
夜中に廊下を歩く時は軋むから必ず皆起こさない様に配慮して静かに歩いてトイレなどに行っている。此処では厠と呼ぶらしいけど。
その配慮が全く無い様な足音に、私は布団から出て立ち上がった。そして躊躇なく戸を開けると、先の廊下に隊士がみえる。こんな夜中に隊服を着ている事におかしいなと思ったが、もっとおかしいのは隊士達は白髪で目が赤かった事だった。戸の開いた音でこちらを振り返ると私を見て刀を持ち代えてニヤニヤと笑っている。
私が護身用のナイフを構えると、直ぐに全員で一斉に切り掛かって来た。
刃は使わずに全員打撃のみで気絶させてから彼等に近づいて観察する。血が欲しいと小さく寝言のように呟く彼等からは濃い血の匂いがした。どうしようかと迷っていると、ハァハァと息を切らせた平助が廊下を走ってくる。
私を見つけると、怪我は無いか!?と勢い良く聞いてから四人の姿を見て、まぁ。無いよな…。とだけ言って観察している私の隣に立った。
「平ちゃん、この人達何?」
「平ちゃんて…。まぁいいや。こいつらは新撰組の奴だよ。」
「平ちゃんもそうじゃん」
何も言わなくなった彼を見ると、話せないのか複雑な表情をしていたので私ももう聞かなかった。何とか怪我だけでも治そうと思い、紋章を発動させると青く美しい光が周り全てを照らした。
うわぁ綺麗だなぁと平ちゃんが目を輝かせているのを見ていると紋章の力を初めて見た時の自分を思い出した。
異常状態と身体治癒を使って彼等を治療していると、3分も経たないうちに彼等の髪色は黒に戻った。心なしか穏やかな安らぎの寝顔をしている。その時に平ちゃんの走って来た方角から山南さんと土方さんが急足で向かってくる。2人に平ちゃんと一緒に事情を説明すると、見ちまったか。と土方さんはやっぱりまた項垂れていた。
逆に彼等の様子に山南さんはお礼を言ってくれた。興奮状態は収まると思うけれど、血が欲しいとゆう衝動は治した事が無いから治るか分からないと私が言えば、3人は気まずそうな顔をして私から顔を背けていた
言ってはいけない事だったのかなと思ったけれど、知らないフリをして、おやすみなさいとだけ言えば
3人には特にそれから何も言われなかったので素直に部屋に戻り眠る事にした。
朝起きて、身支度を済ませていると部屋の戸の外から名前を呼ばれた。
「雪那ちゃん、起きてる?」
「入って平気だよ」
スッと扉が開くと、薄ら笑いを浮かべる総司が立っていた。
「どしたの?」
「土方さんがこれを渡せってさ」
ハイと笑顔で渡されたのは、男性用の袴だった。ご丁寧に上下セットで髪結いの紐まである。そういえば昨日の夕食の時に風紀が乱れるから格好を変えろと言われたのを思い出した。
いつも着ていた服はユーフォリアから買ってもらった黒の長袖のチャイナ服の様な物だったから、流石に此処では目立ち過ぎるかもしれない。
「着方分からないから総司教えてくれないかな?」
そう私が言えば、何で君に呼び捨てされないといけないのかなぁと嫌な顔をされた。その時、ズキリと小さく傷付いたのが分かって自分でもちょっとビックリしてしまった。
「…じゃあさ、苗字教えてくれないかな?」
「沖田だけど。」
「沖田くん教えてくれない?」
「…総司でいいよ。」
何だこいつと内心思ったけれど、不貞腐れたような顔が少し可愛いかったので何も突っ込まなかった。
着方だけ教えて貰うと、総司は部屋の外に居るから着れたら呼んでとだけ言って出て行った。一応見よう見真似で着てから髪を結うと総司を呼んだ。
「一応着れたけどどうかな?」
「う、うーん。これはどうしよう」
困ったように苦笑いで私を見た総司は、とりあえずちょっと来てと言って私の手を引いた。早歩きで歩く彼について行けば彼はいつも食事をする部屋に入り、座っていた土方さんを呼んだ。
佐之さんや永倉さん、平ちゃんや斉藤さんに近藤さんも居たけれど私の姿を見ると皆微妙な顔をしたのが分かって私は首を傾げた。
「そんなに変ですか?」
「…変とかじゃねぇよ」
そう言った土方さんはまた項垂れていて。私はいつも彼のストレスになってるなぁと思ってしまう
「総司、そんなに私の着方変なの?」
「うーんとゆうか胸かなぁ」
そう言った総司に佐之さんが、胸があり過ぎてそれじゃ男に見えないだろうよと突っ込んできた。
「ノーブラで着る物なの?」
そう言うと、土方さんは私にデコピンをしてから赤い顔で怒った。ケラケラと笑った総司にちゃんと教えろって言っただろうと次は総司が怒られていたけれど
下着の事まで僕は分かりませんよと彼はあっけらかんとしながら言った。
「雪那、さらし巻いてみるか?」
そう言って、私に包帯のような物を渡して来た平ちゃんに、巻き方が分からないから平ちゃん巻いてくれないかな?と言うと真っ赤な顔で出来る訳無いだろ!と怒鳴られてしまった。
そんな私を見て総司は涙を出しながら笑っていた。
反対に斉藤さんは顔を赤らめて最初からずっと下を向いていた。
その後、佐之さんが巻き方を彼の身体で教えてくれたので一度部屋に戻って巻いてみると胸が潰れるような感じでたいそう不快だった。
仕方が無いからそのままで一応戻ると、皆んなからあまり変わって無いと言われて私は不貞腐れる事にしたのだった。
食事が終わってから土方さんに呼ばれた私はまだ不貞腐れてんのかと怒られながらも、ジトリとした目で彼を見つめる。
「男装は必須だ。仕方ねーだろ。」
「オッパイが潰れて不快です。しかも巻いても変わって無いとか言われました。」
「たく、お前は女何だから下品な事言うな」
「オッパイは下品じゃないです」
そんなやり取りをしていると、ゲラゲラと大笑いする総司の声と爽やかな近藤さんの笑い声が聞こえてきて土方さんは舌打ちしていた。そんな笑い声に怒りも呆れに変わったように土方さんは溜息をついてから私を見た。
「ここからは真剣な話だ。雪那、昨日4人の隊士がお前を襲ったな。あいつ等は何か言っていたか?」
「直ぐに気絶させちゃったから話してないけど、気絶してから譫言の様に血が欲しいって言ってましたね」
「それで?どうしたんだ?」
「…あまりにも異常だからそれを癒すような力を使いました。後は身体的な怪我や異常も治した。かな?」
「だとよ。山南さん」
そう言うと隣の部屋から山南さんと、昨日の4人の隊士が顔を出した。彼等は顔色も良く普通の人のように笑って、ありがとうございましたと私に頭を下げて来た。特に大した事はしてないですと言うと、山南さんは少しだけ申し訳無さそうな顔でまた次に何かあったら頼らせて欲しいと言って頭を下げて来たので。
もっと気楽にして下さい、頭を上げて下さいとこちらが困ってしまった。
皆がそれぞれ仕事に戻ったので、土方さんに夕食の準備を手伝ってくると言うと。お前はさらしの巻き方を練習して来いと怒られたので部屋に一度戻ってから佐之さんに言われた事を思い出してもう一度巻き直しをした。
最終に巻いた時よりは上手くなった気がして、上機嫌で台所に向かうとまだ誰も来ていなかったので
食材と調味料を確認してから献立を考えていると、面倒そうな顔の総司が台所に入ってきた。
「あれ?雪那ちゃん。どしたの?」
「夕食作りしたいなと思って」
「助かるよ、今日一くんが遅いから僕一人で困ってたんだよね」
そう言って懐っこい表情を見せた総司に、内心いつもこれくらい可愛ければなぁと思いつつ、何が食べたいか聞いてみる事にした。総司はお酒があれば何でも良いと言って特に食に興味は無いみたいなので残っているじゃが芋でコロッケを作る事にした。
電子レンジとフライパンが途中に物凄く恋しくなったけれど、無いなら無いなりでソースもしょうゆベースで作る事にした。揚げたてのコロッケにソースを垂らしてから総司の前に出してみる。
「何この茶色い物体」
「コロッケ。味見してみて」
私がそう言うと、彼は素直にパクリと食いついた。
「…美味しい。」
「でしょ?キャベツの千切りに合うんだよ」
「凄く美味しいよ。今日の夕飯楽しみだなぁ」
「残りさっさと作っちゃうから、総司もこれだけお願い」
そう言ってキャベツの千切りを総司に頼めば、彼は面倒な顔はせずにやってくれた。茄子とししとうの甘辛炒めと漬物と味噌汁を作って完成した物を器によそっていると、井上さんと珍しく山崎さんが配膳を手伝ってくれると言って台所に入ってきた。
その日の夕飯のコロッケは大当たりだったようで。
皆が取り合いをしながら笑顔で食べている所を見て、私も久しぶりに楽しかった。
永倉さんにコロッケを1つ取られて不貞腐れている平ちゃんに私のコロッケを1つあげると、平ちゃんは嬉しそうに平らげていた。
珍しく総司も食事を残さなかったし、斉藤さんは是非作り方を教えてくれと真剣な表情で言ってきたので、次は一緒に作って下さいとお願いすると承知したと言ってくれた。
湯から上がると火照った身体に丁度良いくらいの気持ちが良い風が吹いて来た。永倉さんに貰ったお酒を片手に廊下に座布団を敷いて座ると何とも贅沢な様な感じがした。おちょこに注いでから少しだけ口につける
この時代の酒は辛いなと思い空を見上げると現代より月や星がとても綺麗で美しい。
テレビが無いのが不便だけど、その分虫の声や鳥の声が良く聞こえる気がした。
私の見張りをしている総司は、やる気があるのか無いのか。少し離れた所でゴロリと横になっている。寝ているのかも分からないけれどそっとしておいた。
「雪那ー。何だよ一人で飲んでんのかよ」
「平ちゃん。何持ってるの?」
廊下から顔を出した平助は右手に何かを持ちながら私の隣に座った。さっきの礼だと言って包みを開けると、そこには豆大福が顔を覗かせていて、私は久しぶりに和菓子を見たなと嬉しくなってしまう。
「礼って何?」
「コロッケくれただろ?」
「いいのに。でもありがとう」
久しぶりに和菓子見たよ。と言うと平ちゃんは少しだけ黙ってから遠慮がちに口を開いた。
「なぁ、雪那。お前はどんな所から来たんだ?…言いたく無かったらいいんだけどよ」
そう聞いて来た平ちゃんに、彼なりに私を心配してくれてるのかな?と思うと、余り話したく無い話だが彼には良いかなと何と無く思った。
「私の本当の家は日本だよ、時代はちょっと違うけど
。平和で戦争も無いから住みやすかったな」
「近藤さんの話だと、違う世界にも居たとか聞いたけど。本当なのか?」
「うん、私もどうやったら行けるのかも分からないんだけどね。最初に行った世界は平ちゃんも見た青い光覚えてる?」
「ああ。」
「あんなのが普通の世界で、ここでゆう妖怪みたいなのがウヨウヨしてた。戦争も多くて沢山の人が死んでた。」
「妖怪がウロウロって本当か?」
「正しくは妖怪では無くて、怪物みたいな感じかな?でも2年くらいしか居れなかったし次の世界も2年くらい居て飛ばされたからなぁ。此処も2年したら飛んじゃうのかなって考える時がある」
「雪那、そんなに小さい時から大変な思いしてだんだな」
「小さいって何??」
「年だよ。今から4、5年前には違う世界で大変だったんだろ?」
「平ちゃん、私今27だよ。飛ばされた時は22くらいだったから小さくは無いよ」
そう言った私の言葉に、少し離れた場所に居た総司の吹き出したような音と目とくちが開きっぱなしの平ちゃんに若く見られるのは嬉しいけど、何だか複雑な心境になった。通りでみんな頭を撫でて来たりする筈だと昔を思い返してみると納得がいった気がした。
それから2日間。土方さんと山南さんが何処かに行っているみたいで、隊士達は夜遅くまで呑みに出たりと自由奔放にしていたが山南さんの重傷を文で聞いてから皆少し大人しくなったような気がしていた。
次の日、朝身支度を終えてから朝食を作り終わると部屋に戻ってから誰も居ない事を確認して屋根に飛び乗った。朝日が気持ち良くて、久しぶりに運動したくなり屋根から屋根へ飛び移り自然の多い所まで来ると深呼吸をして草原にゴロリと寝転んだ。
木の造りの家が並び着物を着た女性達が笑いながら歩いている。写真でしか見た事が無い風景に不思議な気持ちになりながらも、あまり遅いと心配されるのでブラブラと街を歩きながら戻る事にした。
途中で歩いていた女性に、本題の下着屋は無いか聞いてみる事にしたが、聞いた途端に嫌な顔をされながらも場所は教えて貰えた。
感じが悪いなぁと思いながら歩いていると、お兄さんゆで卵いかが?等と売り子さんに言われて自分が今男装している事に気付いてさっきの女性に申し訳なく思った。お金が無い事にも気付いて一度帰ろうと屯所の前まで来ると、怒り顔の土方さんが門に居て、おかえりなさいと走り寄るとゲンコツを食らった。
「良かった無事でしたか。」そう言って胸を撫で下ろす山崎くんに、首を傾げると居ないので心配しましたと言われて少しだけ泣きそうになってしまった。遠くから私を見るなり走り寄って来る総司を見て、総司も探してくれてたんだと胸が温かくなった気がした。
「お前は何処に行ってたんだ」
土方さんの鬼の様な形相に私はこれは素直に言うしか無いと思い口を開く。
「…下着を買いに…」
そう言った私に山崎さんと土方さんがピシリと固まってしまったのが分かった。1人だけ楽しそうに笑っている総司は、それで下着は買えたの?と聞いて来る。
「お金持って無かった…」
それを聞いてまたゲラゲラと笑い出した総司を叱り、お金をくれる土方さんは何だかんだ優しいなぁと思った。
。