HH シャルナーク

夢小説設定

本棚全体の夢小説設定
名前

この小説の夢小説設定
名前

この章の夢小説設定
名前

ビールを片手に寝転がった姿のまま鳴り止まない携帯を手に取った
クロロと表示された画面を見て久しぶりだなと思いつつ通話ボタンを押し携帯を耳に当てた

「もしもし」
「シャルか?久しぶりだな。」
「あーうん。何?」
「新しい団員が入った。名前はレイ、今そちらに向かってる。」
「…ふーん。胸糞悪い名前だね…それで?」
「…なんだ?珍しいな…何か不満か?」
「…別に。新しい団員て事なら部屋を用意しておくけど、世話はやかないからね」
「ああ。いつも通り頼む」

そこで電話は切れた。珍しく感情的になってしまったと少しだけ思い返したけれど
ビールを飲み干してから缶を潰してゴミ箱に投げ捨てる
ゴミ箱の淵に当たった缶はガラガラと音をたてながら転がっていった




クロロに言われた通りの場所まで来たけれど、廃墟のような建物が何棟も立ち尽くしており
本当に此処で合っているのかと少し不安になった

冷静になって、気配を探ってみるとちらほらと人の気配がする事に気付いて私は足を進めた

団員が何人か滞在していると聞いていたから、もう少しまともな棲家かと思っていたけれど。そんな事は無かった

建物の入り口には半分切れている蜘蛛の巣があったので、やはり人は出入りしているようだ
瓦礫の中を進んであるけば内部から足音がこちらに向かってくる
団員には知らせておくと聞いていたので、少し安心しながらその足音に向かって歩いていると
ドアが無い部屋の奥からひょっこりと背の高い金色の髪の青年が顔を出して緑色の瞳と私の瞳がかち合った

その瞬間に身体中が一度少し震えた気がした。私は一瞬で何かを感じたんだと思う
そんな気配を感じさせない様にいつもの振る舞いで笑顔を作って彼をもう一度見つめた


「こんにちは、クロロから言われて来ました」

そう言った私に彼は一瞬凄くビックリした様な表情をした
「…なんのつもり?」
「えっ?…クロロから聞いてませんか?」

その、嫌そうな顔に私は困った様に苦笑いをしながらクロロの名前を出せば、彼は一度首を傾げてから溜息をついた

「…新しい団員だよね、分かったよ。」
私をそれから一度も見ようともせず部屋に通してくれた
何だか嫌われているのかなとすぐに分かったけれど、どうしようも無いので荷物を部屋に置いてから疲れた身体を小汚いベッドに投げ出した

それから少し経って、クロロに聞いたのか何人か一言だけど挨拶をしに来てくれて
同じ女のパクノダとはそれから夕食を一緒に食べて世間話をしたりもした

「もう皆んなと話はした?」
「えーと、金の髪の人とフェイタンとコルトピかな。そういえば金髪の人は名前聞いてないや」

「…ああ、シャルね。…レイは彼をどう思ったか聞いていいかしら?」
「シャルって名前なんだね、…うーん。何か嫌われてるみたいだけど私は彼が素敵に見えたかな」
「何で嫌われてると感じたの?」
「話したくなさそうだったからさ。後あからさまに嫌いだって態度だったから」

そんな話をしていると、私達の横を伸びをしながらシャルが通りかかる
少しだけ気まずそうな顔をしたパクノダに内心疑問を持ったけれど、多少メンバー内の友好関係も大事かなと思い聞いたままだがシャルの名前を呼んだ

「シャル、私レイ。さっきは案内してくれてありがとう。これからよろしくね」
「…その声で俺の名前を呼ばないでくれる?」

差し出した手がパシリと払いのけられて、パクノダと近くに居たフェイタンが少しだけ目を見開いたのが分かった。
冷たく、冷ややかな眼差しで睨まれて私は首を傾げつつも彼の瞳に写る憎悪を感じていた
それなのに、彼に腹が立つ事も無く只感じたのは彼の事を知りたいって気持ちだった

何も言わずに去って行ったシャルを私達三人が背中を見送ると、フェイタンが何やったんだ?とニヤニヤしながら聞いて来たので正直に何もと答えた

「シャルは何もされてないのにあんな態度とらないね。」
「えー、初対面だよ。本当にしてないんだけどな」
「…ごめんなさいね。レイ、何か理由があるんだと思うんだけど」
そこまで言ったパクノダは何か考えているのか私を見ずに黙った
フェイタンに、何か心当たりは無いかと聞けばお前が分からないのに私が分かるわけないね。と鼻で笑われてしまった
あんなに憎悪のある目で見られたのは始めてで…もっと彼の事を知りたいなと言った私にフェイタンはドMだなと嬉しそうに目を細めた



溜息をついていたパクノダに大丈夫だと言って、自室に戻り1人でワインを開け、月を見ながら借りて来たグラスに注ぎ口を付けた
年代物だと笑ったクロロの顔を思い出しながら酒を煽る
彼に会ったのは2か月前の事だった
強そうな人。そう道ですれ違った瞬間に感じ、そのまま口に出していた
私の言葉に振り返り、口元だけニヤりとした彼は私を路地裏に誘った
浮浪者が2人程居たけれど、彼は気にしていない様で
向かい合った瞬間に私の耳を切り落とそうとする勢いで手刀してきた
多少驚いたけれど、掴むのは危険だと思い避けてから思いっきり股間狙いで蹴りを繰り出せば彼は初めて笑った
何分か戦闘を楽しんでいると彼の携帯が鳴り、私達の戦闘は呆気なく幕を閉じた

「中々やるな、久しぶりに汗をかいた」
「お兄さんくらい強い人は久しぶりに見たよ、出身は?」
「内緒」
「ふーん、イタタ。やっぱりまだ痛いな。ちょっと前に首をやっちゃってさ。戦闘した後にアドレナリンがきれると若干痛むんだよね」

そう言って首を抑えた私に彼はフムと一度頷くと良かったらお茶でもと言って少しだけ笑った
戦ってから誘う何て珍しいナンパの仕方だねと言えば、ちょっと気になる事があってねと目を伏せ首を振った

それから好奇心でついていったクロロの棲家で念の話をしたり気分が良くなって来たら自分の話をしたりもした
面倒見が良いのか、紅茶のおかわりを入れてくれたり古傷の箇所を見てから軽いマッサージをして痛みを和らげてくれたりと
随分と目から出る禍々しさとは裏腹に優しい奴なんだなと感じた

「クロロって…介護の仕事とかしてたの?」

その瞬間にブフっと口を付けていたカップから紅茶を吹き出したクロロは、吹き出した紅茶が自身のシャツを濡らした事にげんなりとした表情になった

「初めて言われたな。全く違うが…」
「じゃあ兄弟多い?長男かな?」
「どうしてそうなるんだ?」

ティッシュで軽くシャツを拭いたクロロはそう言って首を傾げると良く分からない奴だと言って目元を緩めた
くだらない話まじりに話し込んでいると時間はあっとゆう間に過ぎていて夕食もご馳走してもらう事になり

結局ワインを飲みながら念の話しに火がついて気がつけば2人でソファで眠りこけていた
そんな1日を迎えた私達は連絡先を交換してからお互いが時間がある時に会い話をする仲になっていった


旅団としてメンバーに誘われたのはそれから少し経ってからだったけれど、彼がリーダーなら手足の役をやっても良いかなと思えるくらいに私の中で彼に対する評価は上がっていた
クロロはそれくらい私からすると面白味のある人間だったのだ


昔を思い返しながら4杯目のワインをグラスに注ぐ
持って来た荷物を綺麗とはいえない引き出しに簡単に入れていると
手元からスルリと小さな箱が落ちた
箱を開けて中に入っている二つのリングを見つめた

少し太いシルバーのリングに細めのゴールドのリング
不思議な事は2つのリングには両方私の誕生日が刻印されている事だった
愛を込めてとのメッセージ付きのこのリング
私が一年程前にヘマをして死に掛けた時、お前が買った物を預かってたと兄から渡された物

闇医者の元で目を覚ました時にはリングの事も最近の事も何も覚えておらず、腕に黒い輪の様なアザが出来ていた
闇医者はそのアザは専門外だと言って私から膨大な金を取るとそのまま去っていった

崖から転落した私を発見して医者に連れて来てくれたの実の兄で、その日は私の誕生日で兄と買い物をしていたと珍らしく涙を浮かべながら話をしてくれた兄に謝ったのを今でも印象が強く覚えていた

ハンターに追いかけられる仕事なんてするなと言われ頷いたのは私なのに
それでも、またそんな仕事をする様になってしまった




兄にこのリングの事を聞いても何も知らないと言われ

このアザとリングだけが私に残っていた

クロロと飲んでいる時にアザの事を聞かれて記憶が無いと話すと、そのアザが記憶を無くさせている可能性は?と自分では考えもしなかった答えをくれた

除念師なんて会えるもんじゃないと私が笑うと、クロロは探してみればいいと言った
このリングは一体何なのか、その辺りの記憶がさっぱり無い事も大事な何かを忘れている気がする事も全部除念師に会えれば解決するのでは無いか

そんな事が頭を過っていると、クロロは少しだけ愉快そうな顔をしてから私に言った
蜘蛛の中にはハンターライセンスを持つ情報収集が得意な奴がいる
お前がメンバーに入るなら、そいつが力を貸してくれるように頼んでやってもいい

その言葉にのって、それを目的に入った私なのだが
先程パクノダからハンターライセンスを持っているのはシャルナークだと聞いた
パクノダだったら頼みやすいのにと思うがこればかりは仕方がない
軽く溜息を吐いてからワインを飲み干してそのまま包まる様にベッドに横になった


眩しい日で目を開けると時刻はもう昼近く太陽は真上にあった
風呂はどこだと本を読んでいたコルトピに聞くと、こっちだよとわざわざ案内してくれた
廃墟の風呂や洗面所が綺麗な訳も無く、気持ち良くは入れなかったがお湯があるだけマシかなと思い風呂掃除もしながら汗を流した

出てから身支度を整えて広間に行けば、笑い声が聞こえてきて私はそっと中を覗く
可愛らしい笑みで声を出して笑うシャルナークにイカつい初めて見る顔のジャージの男性がタバコを吸いながら話をしていた

挨拶しておこうとそのまま広間に入ると、ジャージの男と目が合った

「おー、お前がレイか?」
「うん。始めまして、よろしくね」
ペコッと頭を小さく下げて顔を上げれば、シャルナークの冷ややかな目が私を見つめていた。ニコリと笑うとフイと顔を逸らされてしまう

「じゃあフィンクス、お願いね」
「ん?ああ。分かった」

シャルナークが私達から離れる様にして自室の方へ消えてゆく姿を目で追っていると
何かあったのか?とフィンクスに聞かれて、段々と嫌な気持ちになってきたのが分かった

「んー、挨拶しただけなんだけどな。何か嫌われてるみたいなんだよね」
「ありゃ嫌ってる感じでは無いと思うけどな。」
「あれで?」
「あーゆーシャルは不貞腐れてるに入ると思うぜ。何もねー訳は無いと思うけどよ」
「全然わかんないよ」
「めんどくせーから本人に聞けよ」
「確かに1番早いね」

ありがとうと礼を言って、直ぐにシャルナークの向かった方角に歩き出す
カチカチとパソコンのキーボードを叩く様な音が聞こえてきてシャルナークの気配も感じる
戸が無い部屋が珍しく無いこの建物だからこそ、戸がついている部屋は大体誰かの部屋なんだなと認識した

控えめにノックすると、何?と歓迎されていないような低めの声が聞こえてくる
勿論想定内なので、入るねーとなるべく明るく言いながらドアを開けた

デスクに目を向けたまま眉間に寄った皺を隠さないでそのまま高速でブラインドタッチを繰り出すシャルナークにそこまで私が嫌かよとつっこみたくなるが、まず本題を切り出した

「…シャルさん、忙しいのにごめんね。ちょっと聞きたい事があるんだ」
「…さんはいらない。手短にして」
「ありがとう、実は除念師を探してるんだけど…」
「はっ??除念師?何で?」

くるりと振り向いた彼は私の顔を見た

「いや、実はハンターにやられてから記憶が曖昧なんだよね。覚えているのは家族の事くらいだし…。好きな事や自分の思い出も曖昧でさ。それをクロロに話したら、左腕の消えないアザは念なんじゃ無いかって言われたんだ」

そう言って唇を尖らせた私に何故かシャルナークは少しだけ笑うと、私の前まで歩み寄り左腕のアザの部分に触れた
彼が笑った事に私の心は嬉しさでいっぱいになっていたんだと思う
触れられている箇所が熱くて、つい下を向いてしまう

「…団長が言った線が正しいかも。このアザから念を感じるし、記憶や身体に何か制約をつけられている可能性が高いね」

「…探すのを手伝って欲しいなと思ってるんだけど…」

「…ちょっと聞きたいんだけど、思い出してどうするの?」

「えっ?」

そう言われて、思わず固まると彼はまた椅子に座り直した
「相当な額を支払うかしないと除念は出来ないし、成功するかも分からない。それで思い出したく無い過去だったらどうする?」

「思い出したく無い過去だったとしても把握しておきたいし…そもそもこんな呪いみたいなの嫌だよ。あのハンターの置き土産何て今直ぐに取り除きたい」

「まぁ、確かにそうか」

ブツブツと独り言を呟いているシャルナークに少し違和感を覚えたけれど、時間があったらお願いしたいと言った私に彼は少し考えてから分かったと軽く溜息をついた


それから少しだけシャルナークの態度は変わった
冷たい目では見られなくなったし、普通に会話もしてくれる様になった
旅団の仕事も何度かあって、何度かペアを組んだけど

警備の能力者に囲まれた時に私の戦闘スタイルをカバーする様な無駄の無い動きには思わず惚れてしまった

終わった後に、凄いと目を輝かせた私に珍しく彼も笑ってしまっていた
慣れてるからねと呟いた彼の小さな言葉
その言葉に返す前にスタスタと歩き出した彼を追った

仕事帰り、盗んだセダンに乗り込んだ私達はキラキラと光るネオンの中アジトに向かっていた

「そーいえばさ、恋人とかいるの?」

タバコの煙を吐きながらシャルナークはアクセルを踏み続ける
赤信号なんだけどなとも言えず、後ろから追ってくるサイレンの数が増え続けている

「いないねぇ。でも…荷物の中に指輪があった。もしかしたら昔好きな人が居たのかな?」

「…指輪?」

「うん、あっ!不思議なのがねペアリングなんだけど両方共私の誕生日が刻印されてるの。メッセージも彫ってあってさ…」

180キロオーバーの車は未だにスピードを緩める事なく走り続けている
赤と青の光がくるくると周り、後ろから私達を照らしていた
2本目のタバコに火を付けたシャルナークは私の顔を一度見ると、ちなみにメッセージが聞きたいと小さく言った

「愛を込めてって彫ってあった」

「…はぁ。聞くんじゃなかったよ」

愛を込めてと言った瞬間に彼は大きく溜息を吐いた
げんなりとした顔に、状況が良く分からずに首を傾げていると
シャルナークはアクセルを踏み直した


250キロスピードを出した車は警官とのカーチェイスに勝ち、アジトの近くの田舎道をのんびりと走っていた
あれなら何も言わない彼の横顔を見つめる事もしなくなった私は窓の外を見つめていた

「ねぇ、シャルナーク。タバコ貰っていい?」
「…いいよ。」

私が彼のパーカーに手を伸ばした瞬間に車が止まり、シャルナークの手が私の手をキツく掴んだ
ポカンと口を開けて彼を見ると、何とも言えない様な表情で彼は私を見つめていた

手を急に引かれ、キツく胸の中に抱き寄せられる
ギュゥゥッと効果音が付くんでは無いかってくらい優しくキツイ抱擁に私は愛されていると直感で感じてしまった

「しゃ、る?何で?」
「教えてあげない」
「…どうゆう事?」

何故かそこから何も言わなくなったシャルに私は少し苛立ちを感じ、少しだけ身体を離した
潤んだ綺麗なエメラルドグリーンの瞳と目が合って、私は下を向いてしまう

「不貞腐れてんの?唇を尖らせるのは前からの直らない癖だよね」

ハッとした様な顔で私が顔を上げれば、彼は私の後頭部を大きな手で包んで唇に唇を寄せた
温かくて、彼の香りが酷く懐かしく感じて思わず涙が流れてしまう

「なんで泣くの?」
「分からない。何だか懐かしく感じる」
「…そう。ハンターの念は人間の潜在意識には勝てなかったのかな」
「えっ?」
そう言って、フッと笑ったシャルの優しい顔は私の全てを魅了した

「ヒントをあげるよ。レイと俺の誕生日は一緒なんだ」

そう言ってから、クルマから降りたシャルはそのまま私を置いてアジトへと歩いて行ってしまった
ちょっと待ってよと言いながら私も彼の背中を追った



 



「で?仲直り出来たのか?」

「うん、それからまだ会ってないんだよね。おきたら彼居なかったし…とゆーかクロロ知ってたの?」

「いや、前にパクとシャルの家に行った時にお前にかなり似た女との写真が飾ってあったのを見かけただけだ。俺も半信半疑だったが、シャルに会わせたのは…まあ何か面白そうだなと思っただけだ」

「…面白そうと言われると何だかなぁって感じだけどシャルが私と親しい間柄だったってゆーのは何か感じたよ。後起きたらアザが薄くなってた」

「ふーむ。興味深いな」

「後は何か色々小さな事思い出してきてるから除念師はいらないかも。シャルナークといるだけで徐々に除念出来そうだけどって感じがしてる」

「分かった。また何かあったら報告してくれ」


了解と言って電話を切ってから、薄くなっているアザを撫でた
ふとテーブルに置いてあるリングの箱を開けてゴールドの指輪を左手の薬指嵌めた
サイズがピッタリで何だか少しだけ気恥ずかしい
プレゼントされたのでは無く、自分で買ってる所が何て男前なんだと自身に笑ってしまった

シルバーの指輪を手に取って見つめていると、私と同じ誕生日の刻印に目がいってしまう

ヒントをあげる レイと俺の誕生日は一緒

彼のあの時の声が再生される

いつの間にかニヤニヤとしてしまっていた顔を何度か叩いてからシルバーの指輪だけをそっと箱にしまった



夕方になり、広間でパクノダとフィンクスとビールを呑んでいると、車の音が聞こえて直ぐにシャルが広間に入ってきた
疲れたと言いながらシャルがフィンクスに投げた紙袋からはとても良い香りがした

テーブルに積まれたハンバーガーは100個くらいはあるのでは無いだろうか
そのハンバーガーを片手で2個づつ掴み頬張るウボォーと名乗ったデカい男は、レイです。よろしくと言った私の背中を笑いながら叩き、その衝撃で仲間だからと油断していた私は壁にめり込むハメになった

パクノダのキャアと叫んだ声とシャルの何するんだよウボォーと怒った様な声を聞きながら私の意識は無くなっていった


微かな痛みを感じて目を開ける
霞目でボンヤリと目の前にいるシャルに手を伸ばすと、私の手を取り優しく指輪にキスをしてる彼が居る
 
瞬間、頭が覚醒した様に目がハッキリと覚めて私は目をパチパチと強く瞑っては開けてを繰り返した

レイ、何してんの?」
「あー。うん、何でも無い。ちょっと恥ずかしくなっただけかな」
「痛く無い?身体」
「…ちょっと痛い。今自分で治す」

未だに握られている左手が気恥ずかしいけれど、直ぐに自分に集中して痛む箇所を治療すると簡単に痛みは消えた
ウボォーは力強いねと渇いた様に笑うと、シャルは少し眉を下げてからテーブルまで移動すると置いてあるリングの箱を手に取った

「開けていい?」
「うん…」

パカリと小さく開いた音がした。後ろ姿で表情は見えないけれど指輪を箱から取って手に取り良く見ている様だ

「シャルは…」

そう口を開いた私にシャルは手にシルバーリングを持ったまま振り返ると口を開く

「このブランドは俺が1番好きなブランドだってレイは知ってたんだよ。ちなみに俺のサイズも」

左手の薬指にシルバーリングを嵌めたシャルは優しく笑った

「ピッタリ…。」
「ピッタリじゃなかったら泣くよ、俺…」
「説明してくれないの?」
「して欲しいのは俺の方だったんだよね。でも、もういいよ。念で記憶を弄られたのは本当みたいだし。俺が最初から話せば君は嫌な思いはしなかった。でもどうしても納得出来なくて許せなくて意地が悪かった。ごめん。でもそれは本当に愛していたからだ…」

「…シャル?」

それからシャルは思い出を話してくれた

2年半前にカフェの相席でたまたまだけど誕生日が同じって事で仲良くなった事
旅団の活動が暇だったから個人的な活動でいつも一緒に仕事をしていた事
付き合って少ししてから2人の誕生日の日に私が男と街を歩いているのを見掛けてから連絡がとれなくなった事

シャルはポツリポツリと話してくれた

「君が平気な顔でアジトに入って来た時は神経疑ったよ。俺を知らないフリまでしてってはらわたが煮え繰り返った」

「…私達はちゃんと恋人だったんだね。…シャルには悪い事をしたけど私嬉しいな。ちなみに、誕生日の日に一緒に居たのはお兄ちゃんだよ、崖から落ちた私を医者に連れてってくれたのもお兄ちゃん…」

「…なんだかなぁ」

そう言ってシャルは私の横に溜息を吐きながら横になると、ガバリと抱きしめてきた
バッカみたいだよ、俺。そう言って笑ったシャルに私も少しだけ笑ってしまう
何だか肩の荷が降りたのか…スッキリしたのか分からないけれど私達はそれから2人で抱き合う様にして眠ってしまった




「て、事だったんだよねぇ」

あれから半月が過ぎた
久しぶりに兄に電話をしてリングの詳細やシャルナークの話をした

「…はぁ。やっぱり会っちまったか…」
「はぁ?どうゆう事?」
「お前からシャルナークの話は聞いてたよ。リングもお揃いで買いたいって言ってたから付き合ったんだよ」
「…知らないって言ってなかったっけ?」
「妹が危ない奴と付き合ってるんだぞ。念が何か知らんが覚えてないなら教え無い方が良いと思ったんだよ」
「…知ってたんだ。でも兄ちゃんの気持ちも分かるし今はシャルといれるから責めない」

「はぁ。やっぱり惹かれ合う奴らはどんな風になってもまた会うんだな」

「ふふ。素敵なしめくくりをありがとう。兄ちゃんも奥さん大事にね」

危ない事するなよの返事はせずに、はいはいと言いながら電話を切った

錆びれた廃墟の廊下から足音が近くなって来て私は笑顔で振り返る
ただいまと言って、ギュッと抱き締められ手を握らせる
「誰かと話してた?」
「お兄ちゃんだよ。お兄ちゃんシャルの事私から聞いてたんだって…。教えてくれなかったからさ…」
「まぁ、それは常識的に仕方ないでしょ。それよりも落ち着いたら挨拶いかなきゃなぁ」
「えっ??何で?」
レイの家は兄貴しかいないんだから、結婚するなら兄貴に挨拶しなきゃ駄目だろ。」
「…シャル」

自然と嬉しくて出て来た涙を見てシャルは満足そうに笑うと、涙に口付けしてくれる
愛してるよと言った彼の手をギュッっと握ると2つの指輪が合わさりカチリと小さく音が鳴った




end
1/7ページ