るろうに剣心 瀬田宗次郎
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志士雄さん達が出てから2日が経った。バタバタしていたアジト内が静かになって、私は医学書を読み込んで1人食事をして、また読み込んで。晴れた日には薬草を取りに行って宗次郎が怪我をした時の為に薬を作って。と中々久しぶりに1人充実した日々を送っていた。薬と言っても炎症を抑えるような漢方と治癒力を高めるような物だ。出来上がった薬に満足感を感じていると彼の笑った顔がふと頭に浮かんできた。今頃何をしているのだろうか。
宗次郎の事が気がかりなのは確かだけど、絶対的な強さとカリスマ性がある志士雄さんが一緒なら余程の事が無い限り宗次郎が命を落とすなんて事はまず無いと思っている。
ましてや、牛鍋屋で見た彼の剣の才能。私が1番欲しかった物。あの時目で追いきれなかった剣筋を思い出して私は羨ましいと自分自身が内心感じている事を頭で理解した。そして尊敬も。
相手が旦那何て嬉しいじゃないかと前向きに考えたけれど、何だか思い出せば思い出す程、身体を動かしたくなってきて私はアジトの外に出た。
馬小屋を覗くと、ネリーの他には2頭の馬しかおらず、置かれた餌は今にも底をつきそうだったので、新しい藁を持ってきて水も清潔な物に変えた。簡素な作りの馬小屋だけど快適に過ごせるように様々な工夫がしてあるのは方治さん様々だ。それはアジト内部にも言える事だった。手綱を引いてネリーを小屋の外に出すと森まで走らせる。久しぶりに一人で乗馬した事に夢中になってしまって気が付けば森を越えて山を降りてしまっていた。
「あれー?山越えちゃったなぁ」
そう言いながらネリーを撫でると、久しぶりの散歩だったのかネリーは嬉しそうに鼻を鳴らしている。
途中途中休憩を挟みながら走っていると、小さな村に出たので寄らせて貰う事にした。ずっと一緒に居るようになってから宗次郎が出してくれていたのでかなり銭には余裕がある。
もう日が暮れて居たので宿を村人に聞くと、親切に案内までしてくれた。着いた先の宿はかなり小さめで京都と比べてしまった私は、村なら普通こんな物かと昔の自分を思い出した。最近の自分はどうも昔より豪華な生活に慣れてしまっていたから少しだけ違和感を感じてしまったのだろう。
馬を適当に繋いで声を掛けてから宿の中に入ると、気さくな若い男性が出迎えてくれた。食事代と宿代を払うと、ネリーの事も話しておく
「分かりました、後で野菜とお水をあげておきますので、お客様はゆっくりお休み下さい」
そう言ってくれた店主は部屋の奥に入って言った。
廊下の先には2つしか部屋は無かった。指定された方のこじんまりとした部屋に入り荷物を整理していると、部屋の外で焦ったような男女の声が聞こえて来て私はこっそりと戸から廊下を覗いた。
「何かあったんですか?」
「あっ、お客さんすみません。うるさくて」
「いえ、大丈夫ですか?」
「娘が熱を出してしまいまして。この村には医者がおらず日が暮れて呼びに行けないので困ってしまって」
「解熱剤なら持ってますけど。良かったら飲ませましょうか?」
「お医者様ですか?」
何とも嬉しそうな顔をした彼に、いえ違いますよとハッキリ言ってそそくさと荷物から薬を取り出した。
奥の部屋の娘さんの元まで案内された私は、少し苦しそうに肩で息をする女の子の布団の横に座ってから額に手を当てる。自分が思っていたよりも小さくて、5歳くらいだろうか。手に握っている人形が幼さを引き立てていた。
「お医者様が使っているものとは違いますけど、たぶん効果はあります。自分で実験済みですし、副作用もありません」
「ありがとうございます、代金は払いますのでよろしくお願いします」
「でしたら食事を頂いてもよろしいですか?」
そう言った私に嬉しそうにありがとうございますと言ってくれた男性に笑顔で頷いた。少し気になったのは子供の腕にあった湿疹のようなものだった。とりあえず専門家でも無いのでこの間作った解熱剤と栄養価が高い薬草だけ水で口に流し込むと、少し咽せていたが飲んではくれた。
母親がこんな状況で近くに居ないことを不思議に思ったけれど、とりあえず今出来る事をしようと思った。
食事を持ってきてもらった私は、スープだけもう1つ余分に頼んでゆっくりと子供に飲ませる。後少しで効いてくる筈だ。本でも読みながら待っていようと思い一度部屋に戻ってから医学書を取って廊下を歩いていると玄関から店主と女性の声がした。
お客さんかなと思い素通りしようとしたが、店主に呼び止められて振り返る。そこには申し訳なさそうな顔をした店主と具合が悪そうな少しやつれたような女性が立っていて。
私は医者がいない村とは大変なんだなと痛感した。
1人増えたからといって何も変わりはない。その女性は大人なので薬と、同じく栄養価が高い薬草を渡して家で寝ているようにと話をした。明日、熱が下がらなければまた来てほしいと言うと頭を下げて宿を出て行った
店主が、熱を出した娘をお客さんが見てくれていると外で話してしまったら一瞬で広まってしまったと頭を下げて来たので。狭い村だから仕方ないと私は笑って彼の肩を叩くと彼もホッとしたようだった。
子供が寝ている部屋に戻ると、顔の赤みは消えてスヤスヤと整った呼吸をしていたので少し安心した。
その姿を見た店主がお礼を言って湯を進めてくれたので、安心して湯浴みに向かってから部屋に戻り横になると疲れていたのか直ぐに寝てしまった。
翌朝、穴蔵では無いため鳥の声で目が覚めた。なんだか清々しくて私は身支度を整えてから子供が気になったので直ぐに様子を見に行く事にした。
部屋の前で店主を呼ぶと爽やかにおはよう御座いますと言って迎えてくれた。一言店主に断って奥の部屋に入ると娘さんは布団に座っていた。私の顔を見てパッと笑顔になるとお父さんから聞きました。ありがとうございましたと言って頭を下げてくる
「いえいえ、具合はどうかな?」
「もう大丈夫。でもお腹空いたな」
「お腹が空いたなら元気になった証だね」
「お姉ちゃんも一緒に食べよう」
そう言って立ち上がった娘さんはお父さんの手伝いをしてくると走って行った。顔を出した店主は馬を繋いである所の椅子に掛けていてくださいと言ってから、また顔を引っ込めてしまった。
言われたとおりに宿を出て直ぐの庭内にある梅の木の下のベンチの様な椅子に腰掛けていると店主と娘さんは朝食を持って来てくれた。掃除をしてくるので二人でどうぞと言われて遠慮無く食事をしていると、昨日薬を渡した女性がこちらに歩いて来るのが見えた。
私を見つけると笑顔で駆け寄ってくる。その顔で彼女ももう大丈夫なんだなと安心した。
その女性と話をしていると、どうやら旦那さんにも移してしまったと言っていたので一度部屋に戻り薬を持って外に出てくると、男性2人が娘さんと話をしているのが見えた。村の人にしては変わった格好だなと思ったけれど、今は彼女に薬を渡すのが先だ。
「遅くなりすみません。こちらが同じ薬です」
「ありがとうございます、これお礼です」
銭が入った袋を渡された私は、素人のものだからと受け取らずに袋を彼女に返した。それを見ていた娘さんが、おにーちゃんもお姉ちゃんに怪我治してもらいなよと言って私の服を引っ張ってきた。
お辞儀をして去ってゆく女性に軽く頭を下げてから、男性をよく見てみると、遠くから見た時も思ったけれど何とも珍しい髪の色をしていた。
「かすり傷だから大丈夫でござるよ。それより少し休みたいので店主を呼んで欲しいでござるよ。」
「えーでも血が出てるよ」
娘さんが足を指差して、私に目を向けてくる。毛色の珍しい男性の隣に居た背の高い男が決戦前なんだから手当てくらいしとけと言っているのを聞いて少し引っかかった。
「良かったら、簡単な治療くらいならしますよ」
そう言って微笑んだ私に、かたじけないと言って隣に座って来た男性は緋村さんと名乗った。
もう1人は佐之だと言って、気さくな感じでよろしくと握手までしてくれた。
包帯と化膿止め、消毒薬があるのは部屋なので店主に一言伝えてから部屋に入ると直ぐに消毒をさせてもらう。
「お医者ではござらんのか?先程も無料で薬を渡していたが。」
「うーん。只の趣味ですね。」そう言って笑う私に彼等も笑った。
「変わった姉ちゃんだなぁ。なぁ剣心。」
「いや、趣味で作れるなら大したものでござるよ」
どうも、と照れくさくなって化膿止めを塗ってから包帯を巻いていると声かけも無く戸が空いて私達3人はとの方を振り返った。
「ここに居たか。何してるんだ?」
長い刀にハンサムな面長の顔。確かに見た事があった
「斉藤、女性の部屋に入る時くらい声を掛けれないでござるか?」
そう言った緋村さんに斉藤は配慮がたりねぇなと佐之さんが言うと、これは失礼したなと言って斉藤と呼ばれた男が私を見て直ぐに目を見開いたのが分かった。
「お前は…どうしてこいつの怪我を見てるんだ?」
「やっぱり牛鍋屋で会った警官の方ですよね。」
「知り合いでござるか?」
「いえ、一度会った事があるだけです」
はい、終わりました。そう言って包帯を少しキツめに縛ると道具の片付けに入る。
ありがとうと言った緋村さんにあまり無茶しないで下さいねと言うと、斉藤さんは冷たい表情で口を開いた
「何も聞かされてないようだな。緋村の事も知らないのだろう」
「…おい、斉藤」
「この女は瀬田宗次郎の家内だ。」
瞬間、佐之さんと緋村さんが目を丸くして私を見た。
しかし殺気だった目では無くて安心した私はどうしていいか分からずに、2人にそうですとだけ言って頭を下げた。
「宗次郎の…」
「新月村で緋村は宗次郎と戦った。聞いてないか?」
「ああ。お客さんが来てると言ってましたが。名前は聞きませんでした。」
「瀬田とはこの間、戦艦で顔を合わせたばかりだ。しかも俺達は今志士雄のアジトに向かっている所だ。」
そう言って斉藤はタバコに火を付けた。その言葉に多少動揺はしたけれど、私は何も言わずにいた。部屋が静まりかえると、ふと緋村さんが口を開いた。
「えっと、名前を教えて貰っても良いでござるか?」
「レイです。緋村さん」
「…レイ殿、治療ありがとうでござるよ。」
そう言って立ち上がった緋村さんと2人に、私が言う事じゃ無いかもしれないけど怪我をしないで下さいねと言うと、拙者の刀は逆刃刀だから人は切れないと独り言のように呟いた。その言葉は、宗次郎を殺さないから安心しろと言っている様に聞こえた。
「…緋村さん、ありがとうございます。」
そうお礼を言うと、急に窓の外を見ていた斉藤さんは廊下を玄関の方に歩いて行った。佐之さんの、レイは十本刀なのか?とゆう質問に首を横に振っていると玄関先の方から斉藤さんの私を呼ぶ声が聞こえて、私達3人は顔を見合わせてからそちらに向かった。
「探しましたよ、レイ」
「宗次郎」
玄関先に居たのは斉藤と宗次郎で。私が駆け寄ると、私の手を取ってからはぁと盛大にため息をついた。
「探し回っていたら、この村でネリーを見つけましてね。入ろうとしたら斉藤さんが居るし。ビックリしましたよ」
そう言って笑う宗次郎に私は、少し薬草を取りに来てたら日が暮れたからこの宿に泊まっていたと話した。
「レイ、出るなら書き置きくらいして下さいよ。家出かと思いました」
「ごめんごめん。書き置きすら忘れてたよ」
そう言って笑って宗次郎の腕に擦り寄った私に佐之さんが、悪党夫婦には見えねぇなぁと言ったのを聞いてまたちょっと笑ってしまった。
「緋村さん、アジトに向かうなら僕が案内しましょうか?」
緊張感も何も無い宗次郎にそう言われて、3人は微妙な表情をしていたけれど。では頼もうと言ったのは緋村さんだった。
ネリーと宗次郎が乗ってきた馬二頭しか居ないので5人で歩いて向かう事になった。店主に挨拶をすると、宿代と食事代で払った銭を返されて娘さんにもお礼を言われた。
「お姉ちゃんの旦那さんなの?」
「そうですよ、レイがお世話になりました」
「お馬さんで迎えに来てカッコイイね」
そう言われた宗次郎は娘さんの頭を撫でてから優しく微笑むとお菓子を渡していた。
「…お前らは本当に志士雄の側近とは思えねぇな」
アジトに向けて歩き出すと、私達を見て佐之さんが口を開いた。
最後に肩車してと娘さんに言われてしたものの、髪の毛を掴まれて困っている宗次郎の顔を思い出して笑ってしまった。
「全くその通りでござるな。あの女性も子供も皆レイ殿に薬を貰い感謝していた。」
「レイ、そんなに作ったんですか?」
「…宗次郎が怪我したらと思って作ったんだけど、良く考えたらそんだけ強いから怪我しないよね…」
そう言って項垂れた私に4人共私を見て小さく吹き出してしまっていた。
「…ま、まあ宗次郎くらい強いと怪我はしないと思うでござるが。その優しさは伝わるでござるよ。」
なぁ、斉藤と緋村さんに言われた斉藤さんは、何で俺にふるんだとゆう顔をしてから咳払いをすると
「俺にも家内がいるが。そうゆう心配りが出来る女は大事にされる」と、ちょっと恥ずかしがりながら言ってくれた。
宗次郎の事が気がかりなのは確かだけど、絶対的な強さとカリスマ性がある志士雄さんが一緒なら余程の事が無い限り宗次郎が命を落とすなんて事はまず無いと思っている。
ましてや、牛鍋屋で見た彼の剣の才能。私が1番欲しかった物。あの時目で追いきれなかった剣筋を思い出して私は羨ましいと自分自身が内心感じている事を頭で理解した。そして尊敬も。
相手が旦那何て嬉しいじゃないかと前向きに考えたけれど、何だか思い出せば思い出す程、身体を動かしたくなってきて私はアジトの外に出た。
馬小屋を覗くと、ネリーの他には2頭の馬しかおらず、置かれた餌は今にも底をつきそうだったので、新しい藁を持ってきて水も清潔な物に変えた。簡素な作りの馬小屋だけど快適に過ごせるように様々な工夫がしてあるのは方治さん様々だ。それはアジト内部にも言える事だった。手綱を引いてネリーを小屋の外に出すと森まで走らせる。久しぶりに一人で乗馬した事に夢中になってしまって気が付けば森を越えて山を降りてしまっていた。
「あれー?山越えちゃったなぁ」
そう言いながらネリーを撫でると、久しぶりの散歩だったのかネリーは嬉しそうに鼻を鳴らしている。
途中途中休憩を挟みながら走っていると、小さな村に出たので寄らせて貰う事にした。ずっと一緒に居るようになってから宗次郎が出してくれていたのでかなり銭には余裕がある。
もう日が暮れて居たので宿を村人に聞くと、親切に案内までしてくれた。着いた先の宿はかなり小さめで京都と比べてしまった私は、村なら普通こんな物かと昔の自分を思い出した。最近の自分はどうも昔より豪華な生活に慣れてしまっていたから少しだけ違和感を感じてしまったのだろう。
馬を適当に繋いで声を掛けてから宿の中に入ると、気さくな若い男性が出迎えてくれた。食事代と宿代を払うと、ネリーの事も話しておく
「分かりました、後で野菜とお水をあげておきますので、お客様はゆっくりお休み下さい」
そう言ってくれた店主は部屋の奥に入って言った。
廊下の先には2つしか部屋は無かった。指定された方のこじんまりとした部屋に入り荷物を整理していると、部屋の外で焦ったような男女の声が聞こえて来て私はこっそりと戸から廊下を覗いた。
「何かあったんですか?」
「あっ、お客さんすみません。うるさくて」
「いえ、大丈夫ですか?」
「娘が熱を出してしまいまして。この村には医者がおらず日が暮れて呼びに行けないので困ってしまって」
「解熱剤なら持ってますけど。良かったら飲ませましょうか?」
「お医者様ですか?」
何とも嬉しそうな顔をした彼に、いえ違いますよとハッキリ言ってそそくさと荷物から薬を取り出した。
奥の部屋の娘さんの元まで案内された私は、少し苦しそうに肩で息をする女の子の布団の横に座ってから額に手を当てる。自分が思っていたよりも小さくて、5歳くらいだろうか。手に握っている人形が幼さを引き立てていた。
「お医者様が使っているものとは違いますけど、たぶん効果はあります。自分で実験済みですし、副作用もありません」
「ありがとうございます、代金は払いますのでよろしくお願いします」
「でしたら食事を頂いてもよろしいですか?」
そう言った私に嬉しそうにありがとうございますと言ってくれた男性に笑顔で頷いた。少し気になったのは子供の腕にあった湿疹のようなものだった。とりあえず専門家でも無いのでこの間作った解熱剤と栄養価が高い薬草だけ水で口に流し込むと、少し咽せていたが飲んではくれた。
母親がこんな状況で近くに居ないことを不思議に思ったけれど、とりあえず今出来る事をしようと思った。
食事を持ってきてもらった私は、スープだけもう1つ余分に頼んでゆっくりと子供に飲ませる。後少しで効いてくる筈だ。本でも読みながら待っていようと思い一度部屋に戻ってから医学書を取って廊下を歩いていると玄関から店主と女性の声がした。
お客さんかなと思い素通りしようとしたが、店主に呼び止められて振り返る。そこには申し訳なさそうな顔をした店主と具合が悪そうな少しやつれたような女性が立っていて。
私は医者がいない村とは大変なんだなと痛感した。
1人増えたからといって何も変わりはない。その女性は大人なので薬と、同じく栄養価が高い薬草を渡して家で寝ているようにと話をした。明日、熱が下がらなければまた来てほしいと言うと頭を下げて宿を出て行った
店主が、熱を出した娘をお客さんが見てくれていると外で話してしまったら一瞬で広まってしまったと頭を下げて来たので。狭い村だから仕方ないと私は笑って彼の肩を叩くと彼もホッとしたようだった。
子供が寝ている部屋に戻ると、顔の赤みは消えてスヤスヤと整った呼吸をしていたので少し安心した。
その姿を見た店主がお礼を言って湯を進めてくれたので、安心して湯浴みに向かってから部屋に戻り横になると疲れていたのか直ぐに寝てしまった。
翌朝、穴蔵では無いため鳥の声で目が覚めた。なんだか清々しくて私は身支度を整えてから子供が気になったので直ぐに様子を見に行く事にした。
部屋の前で店主を呼ぶと爽やかにおはよう御座いますと言って迎えてくれた。一言店主に断って奥の部屋に入ると娘さんは布団に座っていた。私の顔を見てパッと笑顔になるとお父さんから聞きました。ありがとうございましたと言って頭を下げてくる
「いえいえ、具合はどうかな?」
「もう大丈夫。でもお腹空いたな」
「お腹が空いたなら元気になった証だね」
「お姉ちゃんも一緒に食べよう」
そう言って立ち上がった娘さんはお父さんの手伝いをしてくると走って行った。顔を出した店主は馬を繋いである所の椅子に掛けていてくださいと言ってから、また顔を引っ込めてしまった。
言われたとおりに宿を出て直ぐの庭内にある梅の木の下のベンチの様な椅子に腰掛けていると店主と娘さんは朝食を持って来てくれた。掃除をしてくるので二人でどうぞと言われて遠慮無く食事をしていると、昨日薬を渡した女性がこちらに歩いて来るのが見えた。
私を見つけると笑顔で駆け寄ってくる。その顔で彼女ももう大丈夫なんだなと安心した。
その女性と話をしていると、どうやら旦那さんにも移してしまったと言っていたので一度部屋に戻り薬を持って外に出てくると、男性2人が娘さんと話をしているのが見えた。村の人にしては変わった格好だなと思ったけれど、今は彼女に薬を渡すのが先だ。
「遅くなりすみません。こちらが同じ薬です」
「ありがとうございます、これお礼です」
銭が入った袋を渡された私は、素人のものだからと受け取らずに袋を彼女に返した。それを見ていた娘さんが、おにーちゃんもお姉ちゃんに怪我治してもらいなよと言って私の服を引っ張ってきた。
お辞儀をして去ってゆく女性に軽く頭を下げてから、男性をよく見てみると、遠くから見た時も思ったけれど何とも珍しい髪の色をしていた。
「かすり傷だから大丈夫でござるよ。それより少し休みたいので店主を呼んで欲しいでござるよ。」
「えーでも血が出てるよ」
娘さんが足を指差して、私に目を向けてくる。毛色の珍しい男性の隣に居た背の高い男が決戦前なんだから手当てくらいしとけと言っているのを聞いて少し引っかかった。
「良かったら、簡単な治療くらいならしますよ」
そう言って微笑んだ私に、かたじけないと言って隣に座って来た男性は緋村さんと名乗った。
もう1人は佐之だと言って、気さくな感じでよろしくと握手までしてくれた。
包帯と化膿止め、消毒薬があるのは部屋なので店主に一言伝えてから部屋に入ると直ぐに消毒をさせてもらう。
「お医者ではござらんのか?先程も無料で薬を渡していたが。」
「うーん。只の趣味ですね。」そう言って笑う私に彼等も笑った。
「変わった姉ちゃんだなぁ。なぁ剣心。」
「いや、趣味で作れるなら大したものでござるよ」
どうも、と照れくさくなって化膿止めを塗ってから包帯を巻いていると声かけも無く戸が空いて私達3人はとの方を振り返った。
「ここに居たか。何してるんだ?」
長い刀にハンサムな面長の顔。確かに見た事があった
「斉藤、女性の部屋に入る時くらい声を掛けれないでござるか?」
そう言った緋村さんに斉藤は配慮がたりねぇなと佐之さんが言うと、これは失礼したなと言って斉藤と呼ばれた男が私を見て直ぐに目を見開いたのが分かった。
「お前は…どうしてこいつの怪我を見てるんだ?」
「やっぱり牛鍋屋で会った警官の方ですよね。」
「知り合いでござるか?」
「いえ、一度会った事があるだけです」
はい、終わりました。そう言って包帯を少しキツめに縛ると道具の片付けに入る。
ありがとうと言った緋村さんにあまり無茶しないで下さいねと言うと、斉藤さんは冷たい表情で口を開いた
「何も聞かされてないようだな。緋村の事も知らないのだろう」
「…おい、斉藤」
「この女は瀬田宗次郎の家内だ。」
瞬間、佐之さんと緋村さんが目を丸くして私を見た。
しかし殺気だった目では無くて安心した私はどうしていいか分からずに、2人にそうですとだけ言って頭を下げた。
「宗次郎の…」
「新月村で緋村は宗次郎と戦った。聞いてないか?」
「ああ。お客さんが来てると言ってましたが。名前は聞きませんでした。」
「瀬田とはこの間、戦艦で顔を合わせたばかりだ。しかも俺達は今志士雄のアジトに向かっている所だ。」
そう言って斉藤はタバコに火を付けた。その言葉に多少動揺はしたけれど、私は何も言わずにいた。部屋が静まりかえると、ふと緋村さんが口を開いた。
「えっと、名前を教えて貰っても良いでござるか?」
「レイです。緋村さん」
「…レイ殿、治療ありがとうでござるよ。」
そう言って立ち上がった緋村さんと2人に、私が言う事じゃ無いかもしれないけど怪我をしないで下さいねと言うと、拙者の刀は逆刃刀だから人は切れないと独り言のように呟いた。その言葉は、宗次郎を殺さないから安心しろと言っている様に聞こえた。
「…緋村さん、ありがとうございます。」
そうお礼を言うと、急に窓の外を見ていた斉藤さんは廊下を玄関の方に歩いて行った。佐之さんの、レイは十本刀なのか?とゆう質問に首を横に振っていると玄関先の方から斉藤さんの私を呼ぶ声が聞こえて、私達3人は顔を見合わせてからそちらに向かった。
「探しましたよ、レイ」
「宗次郎」
玄関先に居たのは斉藤と宗次郎で。私が駆け寄ると、私の手を取ってからはぁと盛大にため息をついた。
「探し回っていたら、この村でネリーを見つけましてね。入ろうとしたら斉藤さんが居るし。ビックリしましたよ」
そう言って笑う宗次郎に私は、少し薬草を取りに来てたら日が暮れたからこの宿に泊まっていたと話した。
「レイ、出るなら書き置きくらいして下さいよ。家出かと思いました」
「ごめんごめん。書き置きすら忘れてたよ」
そう言って笑って宗次郎の腕に擦り寄った私に佐之さんが、悪党夫婦には見えねぇなぁと言ったのを聞いてまたちょっと笑ってしまった。
「緋村さん、アジトに向かうなら僕が案内しましょうか?」
緊張感も何も無い宗次郎にそう言われて、3人は微妙な表情をしていたけれど。では頼もうと言ったのは緋村さんだった。
ネリーと宗次郎が乗ってきた馬二頭しか居ないので5人で歩いて向かう事になった。店主に挨拶をすると、宿代と食事代で払った銭を返されて娘さんにもお礼を言われた。
「お姉ちゃんの旦那さんなの?」
「そうですよ、レイがお世話になりました」
「お馬さんで迎えに来てカッコイイね」
そう言われた宗次郎は娘さんの頭を撫でてから優しく微笑むとお菓子を渡していた。
「…お前らは本当に志士雄の側近とは思えねぇな」
アジトに向けて歩き出すと、私達を見て佐之さんが口を開いた。
最後に肩車してと娘さんに言われてしたものの、髪の毛を掴まれて困っている宗次郎の顔を思い出して笑ってしまった。
「全くその通りでござるな。あの女性も子供も皆レイ殿に薬を貰い感謝していた。」
「レイ、そんなに作ったんですか?」
「…宗次郎が怪我したらと思って作ったんだけど、良く考えたらそんだけ強いから怪我しないよね…」
そう言って項垂れた私に4人共私を見て小さく吹き出してしまっていた。
「…ま、まあ宗次郎くらい強いと怪我はしないと思うでござるが。その優しさは伝わるでござるよ。」
なぁ、斉藤と緋村さんに言われた斉藤さんは、何で俺にふるんだとゆう顔をしてから咳払いをすると
「俺にも家内がいるが。そうゆう心配りが出来る女は大事にされる」と、ちょっと恥ずかしがりながら言ってくれた。