るろうに剣心 瀬田宗次郎
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宿に滞在して3日目の夜中。コンコンと小さく窓が鳴って、起きていた私は立ち上がると窓辺から外を見渡すが、誰一人歩いていないし見つからない。
私達が滞在している部屋は2階で、足場も何も無いので窓の外に誰かがいる訳が無いのに。何故か近くに人の気配がしていて私は首を傾げた。
ベッドに横になり眠っている宗次郎の元まで行くと彼の身体を少し揺さぶった。案の定起きないので耳元でちょっと大きめな声を出すとビックリしたのか身体をビクっとさせて飛び起きた。
「襲撃ですか?」
「ううん、誰か窓の近くにいるみたいなんだけど」
「…はぁ。何だビックリしたな。」
レイは此処にいて下さいね。と言って傍らに置いてある刀だけ取って窓辺に向かって行く宗次郎をベッドに座って見つめていると、彼は躊躇なく窓を開けて辺りを見渡している。すると、黒い影の様な人影が現れたのがチラリと見えた。
「…ああ。貴方でしたか。ご苦労様です」
「宗次郎殿すみません。女性の方を驚かせてしまった様で。」
「大丈夫ですよ、それより終わりましたか?」
「はい、全て完了しました。では」
人影が消えた事を確認すると窓を閉めて眠そうに瞼を擦りながらこちらに向かってきた宗次郎は味方ですよ。とだけ言ってから刀を置くとパタリと私を抱き込んで他には何も言わずにまたスヤスヤと寝てしまった。準備って何だろうと思ったけれど、話せる時に話してくれるかなと思い私も目を閉じた。
次の日の朝、身支度をしてから荷物をまとめていると先に代金を払いに行った宗次郎が帰ってきて直ぐに私を見つめているような気がして顔を上げた。
「どしたの?」
「簪、似合ってます」
買ってもらった簪を付けていた私は、ありがと。と少し照れながら小さな声で彼にお礼を言ってまた荷物をつめる作業に戻った。ソファで刀の手入れに取り掛かった宗次郎は珍しく真剣な眼差しで刀を見ている様な気がした。
「…ねぇ。昨日もそうだけど、何かこれからあるの?」
「ああ。これからこの町を焼くんですよ」
「えっ?」
「志士雄さんが作らせていた船も完成したので。」
「…京都を燃やしてどうするの?」
「…色々聞きたい事はあると思いますけど、レイは僕が守りますから。今は何も心配しないで下さい」
そう言われて、うん分かったとも言えずに複雑な心境になる。出会いも出会いだったから初めから物騒な奴らだと思っていたけれど。まさかこんなに早く大きな事をするとは夢にも思って無かったから。温泉で政府とぶつかり合っていると聞いていた時は宗次郎の事を何とも思っていなかったから、うんうんと他人事のように聞く事が出来たけれど。今はそうは言えなくなった。
「…宗次郎。死なないでね」
「僕は強いから死にませんよ。これでも一応十本刀最強ですよ」
そう冗談ぽく言って笑った宗次郎の隣に座って肩にもたれかかると、大丈夫ですよ。と言って抱き寄せて優しく口付けしてくれた。私が出来るのはずっと側にいる事だけだ。そう思うと何だか由美さんに無性に会いたくなった。
ネリーに乗った私達は行きの道とは違う道を通りアジトまで戻ってきた。帰りは緩やかな坂道が続いた為、ネリーも楽だったのか休憩は1度で済んだし、時間もかなり短縮できた。
アジトの前迄来ると、鳥居を見ただけで懐かしく感じる。その時いつも話を良くしてくれていた宗次郎の部下の人が青い顔をしながら走り寄って来るのが見えた
「瀬田様おかえりなさいませ」
「馬をお願いします。何かあったんですか?」
「侵入者だと思います、被害は全ては確認出来ていませんが30人以上かと。」
「へぇ。侵入者ですか。分かりました。レイ行きましょう」
早足で駆け出した宗次郎に私も続いて走る。中に入ると血の匂いが濃くなって、所々に死体が見えた。
「やりますねぇ。全員一突きだ。」
笑う宗次郎は志士雄さんが居るであろう部屋の前で立ち止まるとノックもせずに扉を開けた。
「坊や、レイ!帰ってくるのが遅いわよ」
最初に声を荒げた由美さんの声に懐かしさを感じながら、ただいま戻りましたと言って部屋に入った。
入った瞬間、何処からか私を睨む様な視線を感じて、思わずゾッとして辺りを見渡してしまう。そんな私に志士雄さんがククッと笑ったような気がした。
その時、全身に鳥肌が立ち思わず刀を抜いて構えると、キィンと聞き慣れた刃物がぶつかり合った音がしてから宗次郎が持っていた八つ橋の箱が床に転がった。
「…やるねぇ。流石だな」
私の目と鼻の先にある槍の刃は宗次郎の刀によって止められていた。
「…宇水さん。お久しぶりですね。」
そう言った宗次郎は宇水と呼んだ男の槍を刀で弾き飛ばすと、薄く笑いながら刀を鞘に戻した。
「ほぉ。君が怒るなんて珍しいな。」
「彼女に手は出さないで下さい。相手なら僕がしますから」
そう言って箱を拾う宗次郎を、志士雄さんはずっと見つめていたように感じた。この人達にとってはじゃれ合いの様な感じなのかもしれないけど、新月村の時も殺されかけた私としては、もう少し強くならないとなぁ。と、こちらを見てニヤニヤしている宇水とゆう男を見て尚更そう思った。宗次郎が志士雄さんにお土産を渡しに行ったので、私もホッとして由美さんの元まで行ってお土産に買った紅を渡すと彼女は無邪気な笑顔で喜んでくれた。
「レイ、その指の細工品はどうしたの?」
「宗次郎がお揃いで買ってくれました」
「珍しいわね。指にする細工品なんて」
「外国の物らしいです。夫婦になる際に交換する物だと言ってましたけど。私も初めて見ました」
「夫婦?あんた達もう夫婦になったの?」
「あっ、はい。一応宗次郎からも言葉も貰いました」
「へぇ。坊やもやるじゃない、見直したわ」
志士雄様に報告しないとと言って慌てて走ってゆく由美さんの背中を見つめながら、何だか幸せな気分に浸っていると後ろから声をかけられる。
「レイ。今の話は本当か?」
「あっ、方治さん。只今戻りました」
「で?本当なのか?」
「あっ、はい。一応」
そう言うと、方治さんは珍しく笑顔でおめでとうと言ってくれた。フフっと私が笑って初めて笑顔を見ましたと言うと少し照れた様にコホンとワザとらしく咳払いしていた。それから直ぐに志士雄さんの話が始まって一般兵の人達も部屋に入ってくると、広々としていた部屋が人で埋め尽くされていた。
宗次郎の隣で話は聞いて居たけれど、志士雄さんが国取りの話をしている時の全員の興奮度合いに付いていけずに、私は只立ち尽くしているだけだったかもしれない。なるべく近くの森で良い薬草を見つけて薬を作っておこうとか、宇水って人がまた襲ってきた時の為に稽古しておこうとか頭の中はそんな事でいっぱいで、志士雄さんの話が右から左だったと思う。
話が終わった頃、一般兵の人達がゾロゾロと部屋の外に出て行くと大分部屋内も見渡しやすくなる。一般の兵と違う人達の中に可愛い女の子の姿を見つけて私はギョッとした。彼女は私の視線が向けられている事に気付くと重そうな鎌を持ちながら軽やかな足取りでこちらに向かってきた。
「宗ちゃん久しぶり!隣の子紹介してよ」
宗次郎は、鎌足さんお久しぶりですといつもの笑顔になると私の腕を軽く掴んで自身に引き寄せる。
「僕結婚したんですよ、レイ挨拶して」
「初めまして。鎌足さんレイです」
「そ、宗ちゃんが結婚」
少なからずダメージを受けている彼女を見て、宗次郎に、気があったのかな?と少しだけ心配になった。この人が可愛いから余計なのだろうかと思っていると、いつの間にか隣に居た志士雄さんが口を挟む。
「レイ、宗次郎から聞いた。宗次郎は俺が1番古くから可愛がっている側近だ。こいつの事よろしくな」
志士雄さんのその言葉は私よりも宗次郎が嬉しかったのだろう。顔をくしゃっとさせて笑った宗次郎を見て私も頭を深々と下げた。
「私も志士雄様と結婚したいです」
そう言った鎌足さんに私がギョッとしてしまい、つい口に出してしまう。
「えっ?志士雄さんが好きなんですか?宗次郎じゃないんですか?」
「何言ってんのよ。宗ちゃんが結婚したのは確かにショックよ。先を越されたって意味でね、私が好きなのは志士雄様だけ」
「志士雄さんはもてますねぇ」
「まあな。」
そう言った志士雄さんの腕に鎌足さんが絡みついた時、ドスの効いた声が鳴り響き由美さんがこちらに走り寄ってきた。
「このオカマ!志士雄様から離れなさい!」
この言葉が1番衝撃だったかもしれない。国取りよりもこちらにビックリしてしまった私は鎌足さんの全身をつい凝視してしまった。華奢な肩に足首、可愛らしい顔立ちについ首を傾げてしまう。
「失礼ですけど、本当に男性なんですか?」
「違うわ女よ」
「嘘つくな、このオカマの鎌使いが」
このやりとりを笑っているのは志士雄さんと宗次郎だけで、他のメンツは知らぬ顔をしてそっぽを向いている様に思える。
「可愛いくてビックリしました。」
そう言った私にイヤーん分かってるじゃないと言って抱き着いてきた鎌足さんは本当に華奢で、髪から由美さんのような良い香りがする。まるで女の子と戯れている感覚に陥ってしまった。
良く見ると何て可愛いんでしょうと言って頬に口付けされた私は硬直してしまったが、何だか嫌な気持ちもしない自分に不思議な感覚でされるがままになっていた。
「宗ちゃん怒らないのね?怒る所見た事無いけど」
「何だか鎌足さんだと嫌な気がしないんですよね」
「私も、何か分かるかも」
私達の不思議なやりとりを静かに見ていた志士雄さんは、そろそろお開きにするぞと言って由美さんと共に部屋を出て行った。私達も鎌足さんに挨拶をしてからそれにつられるようにして部屋を出ると自室に向かった。
「長旅疲れた?」
「いいえ、楽しかったですよ」
なんだかんだ数えればそんなに長く居た訳では無いけれど、私はこの宗次郎の私室がとても気に入っていた
幹部用なのか狭くもなく、かといって豪華すぎる訳でも無く。シンプルなテーブルと私が薬を作る道具を置きたいが為に作った棚があるだけの部屋。久しぶりに戻って来て寛いでいると何だかとても安心した。
「明日は朝から出発しますので早めに寝ましょうか」
「明日?何処に行くの?」
「今日宿で話した船がある所ですよ」
「うーん。私行かなきゃ駄目?」
「えっ?行かないんですか?」
「明日は薬を作りたいんだよね。ちょっと京で買ってきた医学書も読みたいし」
「…困ったな。」
「そんなに困るなら行くけど…」
「いや、僕が心配なんですよ。明日はここには誰も居なくなりますし。」
「宇水って奴が居ないならそれだけで安心なんだけど。1人のが安心だよ」
確かにそうですけど。と言った宗次郎は椅子から立ち上がると、ベッドに腰掛ける私の隣に座った。
「僕の我儘って分かってるんですけどね。なるべく近くにいて欲しいのは」
そう言って身体を優しく倒してくる宗次郎に早く寝るんじゃないの?と言おうとすると唇を塞がれてしまった。
「…痛くないですか?」
「うん、ん。大丈夫」
もう痛くないし、気持ちが良いけれど恥ずかしくて素直に言えずに口を閉じた。グイグイと中を押されているような感じに私は声を抑えきれなくなる。
「…何?」
視線を感じて目を開けると、何だか嬉しそうに私を見つめていた。宗次郎はその顔凄く良いと言って深く口付けてくる
「…ねぇ、宗次郎は気持ちいいの?」
「え?どうしたんです、急に。」
当たり前じゃないですか。と笑って髪を優しく撫でてくる彼に少し疑問をぶつけてみる事にした
「宗次郎はさ、こうゆう事した事あるの?」
「無いですね。志士雄さんと由美さんが良くしてましたけどまるで興味が無かったんで。」
「宗次郎も初めてなんだ。にして慣れてる感じだからさ」
「好きになると触れたくなるものだって由美さんが言ってたんですけど、その意味が今は良く分かります。経験は全く無いですけどね」
だから慣れては無いですよ、そう言って止めていた腰を打ちつけられるように動かされると嫌でも声が出てしまう。
「…レイが気持ちよくなってくれて良かったです」
「う、うん。宗次郎が経験無くて私も安心した」
「経験あると駄目何ですか?」
そう言うと宗次郎は首を傾げた。
「うーん、じゃあさ。私が何人も色んな人とこうゆう事してたらどう?何か嫌じゃない??」
「まずその男を殺しますね」
「うーん。そうゆう事なのかなぁ?何か違うけどそうなような気もしなくもないけど。」
説明するのが疲れる気がしたので、それ以上何も言わなかったが。他の人としたら殺しちゃいますからねと笑顔で言われて、あんた以外とする訳無いじゃんと私は苦笑いで答えた。
話が逸れた気がするけれど、宗次郎が初めてで良かったなと本心から思った。1人でも居たら妬いてしまいそうで気にしてしまいそうで怖かったからだ。
何だかんだ、もう家族なんだな。って思ったら明日送り出す事さえ躊躇してしまいそうな自分がいた。
私達が滞在している部屋は2階で、足場も何も無いので窓の外に誰かがいる訳が無いのに。何故か近くに人の気配がしていて私は首を傾げた。
ベッドに横になり眠っている宗次郎の元まで行くと彼の身体を少し揺さぶった。案の定起きないので耳元でちょっと大きめな声を出すとビックリしたのか身体をビクっとさせて飛び起きた。
「襲撃ですか?」
「ううん、誰か窓の近くにいるみたいなんだけど」
「…はぁ。何だビックリしたな。」
レイは此処にいて下さいね。と言って傍らに置いてある刀だけ取って窓辺に向かって行く宗次郎をベッドに座って見つめていると、彼は躊躇なく窓を開けて辺りを見渡している。すると、黒い影の様な人影が現れたのがチラリと見えた。
「…ああ。貴方でしたか。ご苦労様です」
「宗次郎殿すみません。女性の方を驚かせてしまった様で。」
「大丈夫ですよ、それより終わりましたか?」
「はい、全て完了しました。では」
人影が消えた事を確認すると窓を閉めて眠そうに瞼を擦りながらこちらに向かってきた宗次郎は味方ですよ。とだけ言ってから刀を置くとパタリと私を抱き込んで他には何も言わずにまたスヤスヤと寝てしまった。準備って何だろうと思ったけれど、話せる時に話してくれるかなと思い私も目を閉じた。
次の日の朝、身支度をしてから荷物をまとめていると先に代金を払いに行った宗次郎が帰ってきて直ぐに私を見つめているような気がして顔を上げた。
「どしたの?」
「簪、似合ってます」
買ってもらった簪を付けていた私は、ありがと。と少し照れながら小さな声で彼にお礼を言ってまた荷物をつめる作業に戻った。ソファで刀の手入れに取り掛かった宗次郎は珍しく真剣な眼差しで刀を見ている様な気がした。
「…ねぇ。昨日もそうだけど、何かこれからあるの?」
「ああ。これからこの町を焼くんですよ」
「えっ?」
「志士雄さんが作らせていた船も完成したので。」
「…京都を燃やしてどうするの?」
「…色々聞きたい事はあると思いますけど、レイは僕が守りますから。今は何も心配しないで下さい」
そう言われて、うん分かったとも言えずに複雑な心境になる。出会いも出会いだったから初めから物騒な奴らだと思っていたけれど。まさかこんなに早く大きな事をするとは夢にも思って無かったから。温泉で政府とぶつかり合っていると聞いていた時は宗次郎の事を何とも思っていなかったから、うんうんと他人事のように聞く事が出来たけれど。今はそうは言えなくなった。
「…宗次郎。死なないでね」
「僕は強いから死にませんよ。これでも一応十本刀最強ですよ」
そう冗談ぽく言って笑った宗次郎の隣に座って肩にもたれかかると、大丈夫ですよ。と言って抱き寄せて優しく口付けしてくれた。私が出来るのはずっと側にいる事だけだ。そう思うと何だか由美さんに無性に会いたくなった。
ネリーに乗った私達は行きの道とは違う道を通りアジトまで戻ってきた。帰りは緩やかな坂道が続いた為、ネリーも楽だったのか休憩は1度で済んだし、時間もかなり短縮できた。
アジトの前迄来ると、鳥居を見ただけで懐かしく感じる。その時いつも話を良くしてくれていた宗次郎の部下の人が青い顔をしながら走り寄って来るのが見えた
「瀬田様おかえりなさいませ」
「馬をお願いします。何かあったんですか?」
「侵入者だと思います、被害は全ては確認出来ていませんが30人以上かと。」
「へぇ。侵入者ですか。分かりました。レイ行きましょう」
早足で駆け出した宗次郎に私も続いて走る。中に入ると血の匂いが濃くなって、所々に死体が見えた。
「やりますねぇ。全員一突きだ。」
笑う宗次郎は志士雄さんが居るであろう部屋の前で立ち止まるとノックもせずに扉を開けた。
「坊や、レイ!帰ってくるのが遅いわよ」
最初に声を荒げた由美さんの声に懐かしさを感じながら、ただいま戻りましたと言って部屋に入った。
入った瞬間、何処からか私を睨む様な視線を感じて、思わずゾッとして辺りを見渡してしまう。そんな私に志士雄さんがククッと笑ったような気がした。
その時、全身に鳥肌が立ち思わず刀を抜いて構えると、キィンと聞き慣れた刃物がぶつかり合った音がしてから宗次郎が持っていた八つ橋の箱が床に転がった。
「…やるねぇ。流石だな」
私の目と鼻の先にある槍の刃は宗次郎の刀によって止められていた。
「…宇水さん。お久しぶりですね。」
そう言った宗次郎は宇水と呼んだ男の槍を刀で弾き飛ばすと、薄く笑いながら刀を鞘に戻した。
「ほぉ。君が怒るなんて珍しいな。」
「彼女に手は出さないで下さい。相手なら僕がしますから」
そう言って箱を拾う宗次郎を、志士雄さんはずっと見つめていたように感じた。この人達にとってはじゃれ合いの様な感じなのかもしれないけど、新月村の時も殺されかけた私としては、もう少し強くならないとなぁ。と、こちらを見てニヤニヤしている宇水とゆう男を見て尚更そう思った。宗次郎が志士雄さんにお土産を渡しに行ったので、私もホッとして由美さんの元まで行ってお土産に買った紅を渡すと彼女は無邪気な笑顔で喜んでくれた。
「レイ、その指の細工品はどうしたの?」
「宗次郎がお揃いで買ってくれました」
「珍しいわね。指にする細工品なんて」
「外国の物らしいです。夫婦になる際に交換する物だと言ってましたけど。私も初めて見ました」
「夫婦?あんた達もう夫婦になったの?」
「あっ、はい。一応宗次郎からも言葉も貰いました」
「へぇ。坊やもやるじゃない、見直したわ」
志士雄様に報告しないとと言って慌てて走ってゆく由美さんの背中を見つめながら、何だか幸せな気分に浸っていると後ろから声をかけられる。
「レイ。今の話は本当か?」
「あっ、方治さん。只今戻りました」
「で?本当なのか?」
「あっ、はい。一応」
そう言うと、方治さんは珍しく笑顔でおめでとうと言ってくれた。フフっと私が笑って初めて笑顔を見ましたと言うと少し照れた様にコホンとワザとらしく咳払いしていた。それから直ぐに志士雄さんの話が始まって一般兵の人達も部屋に入ってくると、広々としていた部屋が人で埋め尽くされていた。
宗次郎の隣で話は聞いて居たけれど、志士雄さんが国取りの話をしている時の全員の興奮度合いに付いていけずに、私は只立ち尽くしているだけだったかもしれない。なるべく近くの森で良い薬草を見つけて薬を作っておこうとか、宇水って人がまた襲ってきた時の為に稽古しておこうとか頭の中はそんな事でいっぱいで、志士雄さんの話が右から左だったと思う。
話が終わった頃、一般兵の人達がゾロゾロと部屋の外に出て行くと大分部屋内も見渡しやすくなる。一般の兵と違う人達の中に可愛い女の子の姿を見つけて私はギョッとした。彼女は私の視線が向けられている事に気付くと重そうな鎌を持ちながら軽やかな足取りでこちらに向かってきた。
「宗ちゃん久しぶり!隣の子紹介してよ」
宗次郎は、鎌足さんお久しぶりですといつもの笑顔になると私の腕を軽く掴んで自身に引き寄せる。
「僕結婚したんですよ、レイ挨拶して」
「初めまして。鎌足さんレイです」
「そ、宗ちゃんが結婚」
少なからずダメージを受けている彼女を見て、宗次郎に、気があったのかな?と少しだけ心配になった。この人が可愛いから余計なのだろうかと思っていると、いつの間にか隣に居た志士雄さんが口を挟む。
「レイ、宗次郎から聞いた。宗次郎は俺が1番古くから可愛がっている側近だ。こいつの事よろしくな」
志士雄さんのその言葉は私よりも宗次郎が嬉しかったのだろう。顔をくしゃっとさせて笑った宗次郎を見て私も頭を深々と下げた。
「私も志士雄様と結婚したいです」
そう言った鎌足さんに私がギョッとしてしまい、つい口に出してしまう。
「えっ?志士雄さんが好きなんですか?宗次郎じゃないんですか?」
「何言ってんのよ。宗ちゃんが結婚したのは確かにショックよ。先を越されたって意味でね、私が好きなのは志士雄様だけ」
「志士雄さんはもてますねぇ」
「まあな。」
そう言った志士雄さんの腕に鎌足さんが絡みついた時、ドスの効いた声が鳴り響き由美さんがこちらに走り寄ってきた。
「このオカマ!志士雄様から離れなさい!」
この言葉が1番衝撃だったかもしれない。国取りよりもこちらにビックリしてしまった私は鎌足さんの全身をつい凝視してしまった。華奢な肩に足首、可愛らしい顔立ちについ首を傾げてしまう。
「失礼ですけど、本当に男性なんですか?」
「違うわ女よ」
「嘘つくな、このオカマの鎌使いが」
このやりとりを笑っているのは志士雄さんと宗次郎だけで、他のメンツは知らぬ顔をしてそっぽを向いている様に思える。
「可愛いくてビックリしました。」
そう言った私にイヤーん分かってるじゃないと言って抱き着いてきた鎌足さんは本当に華奢で、髪から由美さんのような良い香りがする。まるで女の子と戯れている感覚に陥ってしまった。
良く見ると何て可愛いんでしょうと言って頬に口付けされた私は硬直してしまったが、何だか嫌な気持ちもしない自分に不思議な感覚でされるがままになっていた。
「宗ちゃん怒らないのね?怒る所見た事無いけど」
「何だか鎌足さんだと嫌な気がしないんですよね」
「私も、何か分かるかも」
私達の不思議なやりとりを静かに見ていた志士雄さんは、そろそろお開きにするぞと言って由美さんと共に部屋を出て行った。私達も鎌足さんに挨拶をしてからそれにつられるようにして部屋を出ると自室に向かった。
「長旅疲れた?」
「いいえ、楽しかったですよ」
なんだかんだ数えればそんなに長く居た訳では無いけれど、私はこの宗次郎の私室がとても気に入っていた
幹部用なのか狭くもなく、かといって豪華すぎる訳でも無く。シンプルなテーブルと私が薬を作る道具を置きたいが為に作った棚があるだけの部屋。久しぶりに戻って来て寛いでいると何だかとても安心した。
「明日は朝から出発しますので早めに寝ましょうか」
「明日?何処に行くの?」
「今日宿で話した船がある所ですよ」
「うーん。私行かなきゃ駄目?」
「えっ?行かないんですか?」
「明日は薬を作りたいんだよね。ちょっと京で買ってきた医学書も読みたいし」
「…困ったな。」
「そんなに困るなら行くけど…」
「いや、僕が心配なんですよ。明日はここには誰も居なくなりますし。」
「宇水って奴が居ないならそれだけで安心なんだけど。1人のが安心だよ」
確かにそうですけど。と言った宗次郎は椅子から立ち上がると、ベッドに腰掛ける私の隣に座った。
「僕の我儘って分かってるんですけどね。なるべく近くにいて欲しいのは」
そう言って身体を優しく倒してくる宗次郎に早く寝るんじゃないの?と言おうとすると唇を塞がれてしまった。
「…痛くないですか?」
「うん、ん。大丈夫」
もう痛くないし、気持ちが良いけれど恥ずかしくて素直に言えずに口を閉じた。グイグイと中を押されているような感じに私は声を抑えきれなくなる。
「…何?」
視線を感じて目を開けると、何だか嬉しそうに私を見つめていた。宗次郎はその顔凄く良いと言って深く口付けてくる
「…ねぇ、宗次郎は気持ちいいの?」
「え?どうしたんです、急に。」
当たり前じゃないですか。と笑って髪を優しく撫でてくる彼に少し疑問をぶつけてみる事にした
「宗次郎はさ、こうゆう事した事あるの?」
「無いですね。志士雄さんと由美さんが良くしてましたけどまるで興味が無かったんで。」
「宗次郎も初めてなんだ。にして慣れてる感じだからさ」
「好きになると触れたくなるものだって由美さんが言ってたんですけど、その意味が今は良く分かります。経験は全く無いですけどね」
だから慣れては無いですよ、そう言って止めていた腰を打ちつけられるように動かされると嫌でも声が出てしまう。
「…レイが気持ちよくなってくれて良かったです」
「う、うん。宗次郎が経験無くて私も安心した」
「経験あると駄目何ですか?」
そう言うと宗次郎は首を傾げた。
「うーん、じゃあさ。私が何人も色んな人とこうゆう事してたらどう?何か嫌じゃない??」
「まずその男を殺しますね」
「うーん。そうゆう事なのかなぁ?何か違うけどそうなような気もしなくもないけど。」
説明するのが疲れる気がしたので、それ以上何も言わなかったが。他の人としたら殺しちゃいますからねと笑顔で言われて、あんた以外とする訳無いじゃんと私は苦笑いで答えた。
話が逸れた気がするけれど、宗次郎が初めてで良かったなと本心から思った。1人でも居たら妬いてしまいそうで気にしてしまいそうで怖かったからだ。
何だかんだ、もう家族なんだな。って思ったら明日送り出す事さえ躊躇してしまいそうな自分がいた。
