るろうに剣心 瀬田宗次郎
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あれからまた丸一日経ち、日の出と共に宗次郎達と新月村を出て、志士雄さんのアジトまで半強制的に連れてこられた私は何をするでも無く宗次郎の部屋でのんびりとしていた。
「悪党ってする事無いんだね」
「これからちょっと忙しくなりますけどね。」
「どうして?」
「僕が貴女の側を離れた時があったでしょ?」
「うん。」
「あの時来てたお客さん達とこれから色々あるんですよ。」
内容は言えないの?と聞けば、まあその時が来たら話しますと言われて私は頷いた。
ここでゴロゴロしていても身体が鈍るから狩りに行きたいと言うと、野生的ですねと笑われてからアジトの中を案内されて罠や仕掛けの場所も教えてもらった。
アジトの出口で2人で話をしていると、変わった格好の男性が話しかけてくる。
「宗次郎、その女性は?」
「ああ、方治さん。彼女はレイです。」
「いや、名前を聞いてる訳では無くてだな」
「なんですか?」
「いや、どうしてアジトにいるんだって話だ。」
「僕が連れて来ました。志士雄さんの許可は取ってありますよ」
「まぁ、それならいいのだが…これから大事な時期だとゆうのだけは忘れないでくれよ」
少しだけ困った顔の方治さんに、苦笑いですみませんと言えば、う、うむ。とだけ言ってアジトの内部に入って行った。
「何がいいたいんでしょうね?」
「うーん、大事な時期に急に女を連れてきてどうゆう事だ。気を引き締めろみたいな感じかな?」
「世間知らずのレイからそんな言葉が聞けるなんて」
「これは本で読んだから知ってるんです」
そんなやりとりをして2人で笑っていると、宗次郎はそろそろ出掛けてきますと行って私の頬に触れるだけの口付けをしてから笑顔でその場を去った。
その後ろ姿を見て少しだけ寂しいような切ないような初めての気持ちを感じた。
そんな思いを感じつつ、森に入っていつものように鹿を狙う。おばあちゃんが居なくなってから食事は全部自給自足だった。宗次郎がなるべく早く帰ってきてくれたらいいな何て考えながらだったからか長い時間かけても仕留められたのは1頭だけだった。
日が暮れそうになって来たのでアジトへの道を歩いていると、木の根元に珍しい薬草を見つけてそれを取ってから帰り道を急いだ。アジトの近くまでくると、宗次郎の部下の人がオロオロしながらアジトの周りをウロウロしていて。私を見つけると血相を変えて走ってきた。
「どうしたんですか?」
「レイ様、瀬田様から頼まれていますので、どうかあまり日が暮れてからの外出はお控え下さい」
確かにもう辺りは暗くなっている。彼は私の持っていた鹿を見てからゲンナリとした顔で部屋まで送りますと言ってアジトの中に入って行った。
その後に続いて歩いていると、方治さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「レイは見つかったみたいだな」
「はい!」
「何だその鹿は」
「夕飯にと思って仕留めてきました」
そう言った私に方治さんも一度ゲンナリしたような目で私を見ると、まあ無事なら良かったと言って引き返して行った。
食堂にそのまま案内してもらった私は、料理人の人から道具を借りていつものように血抜きした鹿を調理してゆく。新鮮なので臭みが無く捌いた肉を頂いた野菜と共に炒めていく。最初はよそよそしかった厨房の人達も、料理が出来てから味見してもらうと皆美味いと言ってくれて和やかに話をする事が出来た。
それから薬草を薬にしたいからすり鉢を貸してくれとお願いすると快く貸してもらえたので、それを持って部屋に戻った。
火傷に効く草だって知っていたのも、昔おばあちゃんが作っているのを見ていたからだ。さっそく座り込んでから薬の制作に取り掛かったのだった。
「飯、うめぇじゃねぇか」
「それはレイ様が取って来た物で、彼女が血抜きから調理まで行っておりました」
空いた皿を下げてゆく部下の1人が志士雄に問いかけられてそう答えると、やっぱりアイツは変な女だなぁとだけ言って志士雄は笑った。
一人で出歩いて危ないわと怒る由美に、もう大人なんだから好きにさせろと志士雄は酒を煽る
「坊やはまだ帰って来ないんですか?」
「ああ。少し遠出だからな。安慈達と一緒に近々戻るだろ」
ゆっくりと瞼を開ければ、いつの間にか蝋燭は消えていたらしく部屋が暗くなっていた。
月明かりだけを頼りに立ち上がると蝋燭に火を灯す
ずっと一人でいたからか。何日か居ただけの相手なのに宗次郎がいないのはとても寂しく思えた。
昨日彼に口付けられた時に、身体に電気のようなものが走ったような気がして。あの後もし、彼が強引に私を抱いていたらと考えると頬が熱くなってくるのが分かって無理やり考えるのをやめた。
次の日も次の日も薬を作るだけの日々が続いたけれど
やる事があるだけマシかと思い黙々と続けていた。
毎日由美さんが顔を出してくれて、薬作りの合間に話をしたり食事をするだけが日課になっていた。
何を作っているか聞かれて、志士雄さんに火傷の薬をと言えば、彼女は目を輝かせて喜んでくれた。
姉妹が居なかった私には彼女の存在は日に日に、宗次郎と同じくらいとても大きく感じていた。
それから2日経ち、湯を浴びて部屋に戻ると部屋の中から人の気配を感じた。急いで戸を開ければ優しく微笑む宗次郎が椅子に腰掛けていた。
「ただいまです」
「おかえり」
ゆっくり近づくと手を引かれて腰を抱き締められる。下を向けば彼の頭しか見えないけれど、私は嬉しくて自然に彼の頭を優しく抱き締めていた。
「やっと帰って来れましたよ。疲れたなぁ」
「騒がしいけど誰か来てたの?」
「お客さんが来てるんですよ、暫く滞在するかもしれないんで。」
「どんな人?」
「うーん。背の高い忍者ですね」
「ふーん。忍べてないね」
そんな下らない話をしていると宗次郎は一度あくびをして、疲れているから横になると言って私を抱き締めたまま立ち上がりベッドにダイブする。そのまま私の胸で目を瞑ると数分で寝てしまった。規則正しい寝息が聞こえて来て、彼の頭に口付けると私もそのまま目を瞑った。
暖かくて心地よくて一人で眠るよりもとても幸せに感じた。
どれくらい時間が経ったのか分からないが、廊下をこちらに歩いてくるような足音で目が覚める
起きあがろうとすると、意外にガッチリとした腕にキツく抱き締められていて起き上がれずにそのまま視線だけを戸の方に向けた。
コンコンとノックが聞こえてから、スッと扉が開く。廊下の灯りが部屋に入ってきて眩しくて思わず目を瞑ると、げっと言う男性の声がして私は頭だけを上げてそちらを見つめた。
背が高いとゆうよりも逆立った髪が印象の細めの男性が私と目が合うと何とも微妙な顔をしている。
「あの、宗次郎に用ですか?」
「あ、ああ。戻ったからちょっくら話でもと思ったんだけどよ。お取込み中ならいいわ」
「お取込みはしてませんが、歩き疲れてるみたいで寝ていて起きないんです」
キツく抱き締める腕を力を込めて離すと、ゴロンと仰向けになった宗次郎はそのまま寝息をかいている
「…ホンマ起きないなぁ。相変わらず楽観的な奴だ」
「敵なら起きるんでしょうかね。」
「宗次郎は微妙やな」
私がそうですね、と笑うと張と名乗った男は私を見つめてくる。
「アンタはいつからここに?」
「ああ。私は最近です。」
「ふーん。めっさ珍しいもの見れたのはアンタのおかげやな」
「珍しい?」
「宗次郎が女といるのを初めて見たわ。志士雄さんにしか興味が無いと思ってたけど、やっぱり宗次郎も男なんやなぁ」
そう言ってニカっと笑った張さんは、またなと言って部屋を出て行った。スヤスヤと眠る宗次郎を一度見てから何だったんだろうと思ったが私もそのまま横になりまた眠りについたのだった。
朝日が眩しくて目を覚ますと、目の前には宗次郎の寝顔があった。眩しそうな顔をしている事に気付いてカーテンを閉め、顔を洗い歯を磨きに部屋を出る。何だか兵の人達がバタバタと騒がしくて私はそんな彼等を横目に朝の身支度を済ませていると、いつものお兄さんに声を掛けられる。
「レイ様、瀬田様は?」
「寝てますよ、起こしてきますか?」
「志士雄様がお呼びですとお伝え願えますか?」
「分かりました」
そう言うと回れ右して早足で来た道を戻ってゆく彼の姿を見て、やっぱり何か色々忙しくなるんだな何て考えながら部屋に戻った。部屋に戻ると宗次郎は居なくなっていたので顔でも洗いに行っているのだろうと思い、髪を結ってから着替えをしていると扉の外から瀬田様がお呼びです。と聞こえて昨日夕方に出来上がった薬を手にすぐに部屋を出た。
「レイ。久しぶりだな」
「ご無沙汰してます志士雄さん」
部屋に入ればすぐに声を掛けてくれたのは志士雄さんで、奥に宗次郎と志士雄さんに由美さん。3人は知っているけれど後何人か異様な姿の男性が何人か談笑する訳でも無く佇んでいる。ちょっと気になったが、先に志士雄さんの元まで行って薬を渡そうと彼の元に向かった。
「志士雄さん、これ火傷の薬です。良かったら使って下さい」
「ほぉ、お前は薬師でもやってたのか?」
「まさか。前に作り方を教えて貰ったんですよ。狩の時に丁度薬草を見つけたので」
「ありがとな、後で由美に付けてもらう」
「はい」
返事をしてから宗次郎の隣まで移動すると、ご機嫌そうな宗次郎が珍しく人前で腰に手を回してきた。
どうしたのかと尋ねると、今日から二人で旅行に行けるんですよと笑った。
「旅行?」
「しー。内緒なので皆には内密に」
何処に行くのか聞きたかったけれど、内緒だと言われて私も直ぐに口を閉じた。後ろから急に、仲が良いのぉと聞こえて来て、振り向けば小さなお爺さんが声をかけてきてたので挨拶をすると、そこから長話が始まってしまったのでずっとうんうんと頷いて聞いていた。
それを見ていた宗次郎が楽しそうに笑っていたので、私も何だか笑ってしまった。
少しして、志士雄さんに宗次郎とレイはそろそろ出発しろと言われたので返事をしてから一度二人で部屋に戻った。行き先は京都だと言われて、ちょっと喜んでいる私に宗次郎は遊びに行く訳では無いけど寄り道して観光でもしましょうかと笑った。
軽く荷物をまとめて、二人で外に出ると入り口には馬が用意されていた。普通のありふれた茶色の毛並みが美しい馬だった。宗次郎が乗ってから手を貸してもらい前に乗せてもらうと、夕方までには宿に着けるようにしたいので最初飛ばしますと言って馬の胴を足で軽く蹴飛ばした。
山を越えて馬が疲れて来た所で一度休憩し、また乗ってを繰り返していると夕方前には大きな町に出る事が出来た。馬を休ませて置ける宿を宗次郎は知っていたのか、そこに繋ぐと荷物を持って中に入った。
小太りのおじさんに部屋を案内されて、部屋に入ると、良い部屋をとってくれたのか大きめの座り心地の良さそうなソファが真ん中にドンと置かれていた。
宗次郎はそのソファに座ると、疲れたのかフーと息を吐いてから背もたれにもたれかかった。
「お疲れ様、今お茶いれるね。」
「意外に移動も疲れますね」
宗次郎の前にお茶を出すと、少し眠そうな顔でごくごくと飲み干した。猫舌の私には出来ない芸当だ。
隣に腰掛けた私は少しだけ気恥ずかしかったけれど、自分のドキドキとする心臓の音を聞きながら隣にいる宗次郎の手を握った
「…レイ?」
「連れてきてくれてありがとう」
そう言ってから、彼の腕にしがみつく。
何も言ってこない彼を不思議に思って、少し経ってからチラリと顔を見ると宗次郎は少しだけ困ったような顔をしていた。
初めて見る顔に、私が彼のその表情をずっと見つめてしまっているとハッとしたように笑って私を抱き締めてきた。
「どうしたの?」
「いえ、何だか何てゆうのかな。嬉しいような恥ずかしいような気がしたんですけど。こうゆう時どんな顔していいか分からなくて」
「…そっか。」
それだけ言って、彼を抱き返すとギュウっと息が出来なくなるような強さで私を抱き締めてきた。
「悪党ってする事無いんだね」
「これからちょっと忙しくなりますけどね。」
「どうして?」
「僕が貴女の側を離れた時があったでしょ?」
「うん。」
「あの時来てたお客さん達とこれから色々あるんですよ。」
内容は言えないの?と聞けば、まあその時が来たら話しますと言われて私は頷いた。
ここでゴロゴロしていても身体が鈍るから狩りに行きたいと言うと、野生的ですねと笑われてからアジトの中を案内されて罠や仕掛けの場所も教えてもらった。
アジトの出口で2人で話をしていると、変わった格好の男性が話しかけてくる。
「宗次郎、その女性は?」
「ああ、方治さん。彼女はレイです。」
「いや、名前を聞いてる訳では無くてだな」
「なんですか?」
「いや、どうしてアジトにいるんだって話だ。」
「僕が連れて来ました。志士雄さんの許可は取ってありますよ」
「まぁ、それならいいのだが…これから大事な時期だとゆうのだけは忘れないでくれよ」
少しだけ困った顔の方治さんに、苦笑いですみませんと言えば、う、うむ。とだけ言ってアジトの内部に入って行った。
「何がいいたいんでしょうね?」
「うーん、大事な時期に急に女を連れてきてどうゆう事だ。気を引き締めろみたいな感じかな?」
「世間知らずのレイからそんな言葉が聞けるなんて」
「これは本で読んだから知ってるんです」
そんなやりとりをして2人で笑っていると、宗次郎はそろそろ出掛けてきますと行って私の頬に触れるだけの口付けをしてから笑顔でその場を去った。
その後ろ姿を見て少しだけ寂しいような切ないような初めての気持ちを感じた。
そんな思いを感じつつ、森に入っていつものように鹿を狙う。おばあちゃんが居なくなってから食事は全部自給自足だった。宗次郎がなるべく早く帰ってきてくれたらいいな何て考えながらだったからか長い時間かけても仕留められたのは1頭だけだった。
日が暮れそうになって来たのでアジトへの道を歩いていると、木の根元に珍しい薬草を見つけてそれを取ってから帰り道を急いだ。アジトの近くまでくると、宗次郎の部下の人がオロオロしながらアジトの周りをウロウロしていて。私を見つけると血相を変えて走ってきた。
「どうしたんですか?」
「レイ様、瀬田様から頼まれていますので、どうかあまり日が暮れてからの外出はお控え下さい」
確かにもう辺りは暗くなっている。彼は私の持っていた鹿を見てからゲンナリとした顔で部屋まで送りますと言ってアジトの中に入って行った。
その後に続いて歩いていると、方治さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「レイは見つかったみたいだな」
「はい!」
「何だその鹿は」
「夕飯にと思って仕留めてきました」
そう言った私に方治さんも一度ゲンナリしたような目で私を見ると、まあ無事なら良かったと言って引き返して行った。
食堂にそのまま案内してもらった私は、料理人の人から道具を借りていつものように血抜きした鹿を調理してゆく。新鮮なので臭みが無く捌いた肉を頂いた野菜と共に炒めていく。最初はよそよそしかった厨房の人達も、料理が出来てから味見してもらうと皆美味いと言ってくれて和やかに話をする事が出来た。
それから薬草を薬にしたいからすり鉢を貸してくれとお願いすると快く貸してもらえたので、それを持って部屋に戻った。
火傷に効く草だって知っていたのも、昔おばあちゃんが作っているのを見ていたからだ。さっそく座り込んでから薬の制作に取り掛かったのだった。
「飯、うめぇじゃねぇか」
「それはレイ様が取って来た物で、彼女が血抜きから調理まで行っておりました」
空いた皿を下げてゆく部下の1人が志士雄に問いかけられてそう答えると、やっぱりアイツは変な女だなぁとだけ言って志士雄は笑った。
一人で出歩いて危ないわと怒る由美に、もう大人なんだから好きにさせろと志士雄は酒を煽る
「坊やはまだ帰って来ないんですか?」
「ああ。少し遠出だからな。安慈達と一緒に近々戻るだろ」
ゆっくりと瞼を開ければ、いつの間にか蝋燭は消えていたらしく部屋が暗くなっていた。
月明かりだけを頼りに立ち上がると蝋燭に火を灯す
ずっと一人でいたからか。何日か居ただけの相手なのに宗次郎がいないのはとても寂しく思えた。
昨日彼に口付けられた時に、身体に電気のようなものが走ったような気がして。あの後もし、彼が強引に私を抱いていたらと考えると頬が熱くなってくるのが分かって無理やり考えるのをやめた。
次の日も次の日も薬を作るだけの日々が続いたけれど
やる事があるだけマシかと思い黙々と続けていた。
毎日由美さんが顔を出してくれて、薬作りの合間に話をしたり食事をするだけが日課になっていた。
何を作っているか聞かれて、志士雄さんに火傷の薬をと言えば、彼女は目を輝かせて喜んでくれた。
姉妹が居なかった私には彼女の存在は日に日に、宗次郎と同じくらいとても大きく感じていた。
それから2日経ち、湯を浴びて部屋に戻ると部屋の中から人の気配を感じた。急いで戸を開ければ優しく微笑む宗次郎が椅子に腰掛けていた。
「ただいまです」
「おかえり」
ゆっくり近づくと手を引かれて腰を抱き締められる。下を向けば彼の頭しか見えないけれど、私は嬉しくて自然に彼の頭を優しく抱き締めていた。
「やっと帰って来れましたよ。疲れたなぁ」
「騒がしいけど誰か来てたの?」
「お客さんが来てるんですよ、暫く滞在するかもしれないんで。」
「どんな人?」
「うーん。背の高い忍者ですね」
「ふーん。忍べてないね」
そんな下らない話をしていると宗次郎は一度あくびをして、疲れているから横になると言って私を抱き締めたまま立ち上がりベッドにダイブする。そのまま私の胸で目を瞑ると数分で寝てしまった。規則正しい寝息が聞こえて来て、彼の頭に口付けると私もそのまま目を瞑った。
暖かくて心地よくて一人で眠るよりもとても幸せに感じた。
どれくらい時間が経ったのか分からないが、廊下をこちらに歩いてくるような足音で目が覚める
起きあがろうとすると、意外にガッチリとした腕にキツく抱き締められていて起き上がれずにそのまま視線だけを戸の方に向けた。
コンコンとノックが聞こえてから、スッと扉が開く。廊下の灯りが部屋に入ってきて眩しくて思わず目を瞑ると、げっと言う男性の声がして私は頭だけを上げてそちらを見つめた。
背が高いとゆうよりも逆立った髪が印象の細めの男性が私と目が合うと何とも微妙な顔をしている。
「あの、宗次郎に用ですか?」
「あ、ああ。戻ったからちょっくら話でもと思ったんだけどよ。お取込み中ならいいわ」
「お取込みはしてませんが、歩き疲れてるみたいで寝ていて起きないんです」
キツく抱き締める腕を力を込めて離すと、ゴロンと仰向けになった宗次郎はそのまま寝息をかいている
「…ホンマ起きないなぁ。相変わらず楽観的な奴だ」
「敵なら起きるんでしょうかね。」
「宗次郎は微妙やな」
私がそうですね、と笑うと張と名乗った男は私を見つめてくる。
「アンタはいつからここに?」
「ああ。私は最近です。」
「ふーん。めっさ珍しいもの見れたのはアンタのおかげやな」
「珍しい?」
「宗次郎が女といるのを初めて見たわ。志士雄さんにしか興味が無いと思ってたけど、やっぱり宗次郎も男なんやなぁ」
そう言ってニカっと笑った張さんは、またなと言って部屋を出て行った。スヤスヤと眠る宗次郎を一度見てから何だったんだろうと思ったが私もそのまま横になりまた眠りについたのだった。
朝日が眩しくて目を覚ますと、目の前には宗次郎の寝顔があった。眩しそうな顔をしている事に気付いてカーテンを閉め、顔を洗い歯を磨きに部屋を出る。何だか兵の人達がバタバタと騒がしくて私はそんな彼等を横目に朝の身支度を済ませていると、いつものお兄さんに声を掛けられる。
「レイ様、瀬田様は?」
「寝てますよ、起こしてきますか?」
「志士雄様がお呼びですとお伝え願えますか?」
「分かりました」
そう言うと回れ右して早足で来た道を戻ってゆく彼の姿を見て、やっぱり何か色々忙しくなるんだな何て考えながら部屋に戻った。部屋に戻ると宗次郎は居なくなっていたので顔でも洗いに行っているのだろうと思い、髪を結ってから着替えをしていると扉の外から瀬田様がお呼びです。と聞こえて昨日夕方に出来上がった薬を手にすぐに部屋を出た。
「レイ。久しぶりだな」
「ご無沙汰してます志士雄さん」
部屋に入ればすぐに声を掛けてくれたのは志士雄さんで、奥に宗次郎と志士雄さんに由美さん。3人は知っているけれど後何人か異様な姿の男性が何人か談笑する訳でも無く佇んでいる。ちょっと気になったが、先に志士雄さんの元まで行って薬を渡そうと彼の元に向かった。
「志士雄さん、これ火傷の薬です。良かったら使って下さい」
「ほぉ、お前は薬師でもやってたのか?」
「まさか。前に作り方を教えて貰ったんですよ。狩の時に丁度薬草を見つけたので」
「ありがとな、後で由美に付けてもらう」
「はい」
返事をしてから宗次郎の隣まで移動すると、ご機嫌そうな宗次郎が珍しく人前で腰に手を回してきた。
どうしたのかと尋ねると、今日から二人で旅行に行けるんですよと笑った。
「旅行?」
「しー。内緒なので皆には内密に」
何処に行くのか聞きたかったけれど、内緒だと言われて私も直ぐに口を閉じた。後ろから急に、仲が良いのぉと聞こえて来て、振り向けば小さなお爺さんが声をかけてきてたので挨拶をすると、そこから長話が始まってしまったのでずっとうんうんと頷いて聞いていた。
それを見ていた宗次郎が楽しそうに笑っていたので、私も何だか笑ってしまった。
少しして、志士雄さんに宗次郎とレイはそろそろ出発しろと言われたので返事をしてから一度二人で部屋に戻った。行き先は京都だと言われて、ちょっと喜んでいる私に宗次郎は遊びに行く訳では無いけど寄り道して観光でもしましょうかと笑った。
軽く荷物をまとめて、二人で外に出ると入り口には馬が用意されていた。普通のありふれた茶色の毛並みが美しい馬だった。宗次郎が乗ってから手を貸してもらい前に乗せてもらうと、夕方までには宿に着けるようにしたいので最初飛ばしますと言って馬の胴を足で軽く蹴飛ばした。
山を越えて馬が疲れて来た所で一度休憩し、また乗ってを繰り返していると夕方前には大きな町に出る事が出来た。馬を休ませて置ける宿を宗次郎は知っていたのか、そこに繋ぐと荷物を持って中に入った。
小太りのおじさんに部屋を案内されて、部屋に入ると、良い部屋をとってくれたのか大きめの座り心地の良さそうなソファが真ん中にドンと置かれていた。
宗次郎はそのソファに座ると、疲れたのかフーと息を吐いてから背もたれにもたれかかった。
「お疲れ様、今お茶いれるね。」
「意外に移動も疲れますね」
宗次郎の前にお茶を出すと、少し眠そうな顔でごくごくと飲み干した。猫舌の私には出来ない芸当だ。
隣に腰掛けた私は少しだけ気恥ずかしかったけれど、自分のドキドキとする心臓の音を聞きながら隣にいる宗次郎の手を握った
「…レイ?」
「連れてきてくれてありがとう」
そう言ってから、彼の腕にしがみつく。
何も言ってこない彼を不思議に思って、少し経ってからチラリと顔を見ると宗次郎は少しだけ困ったような顔をしていた。
初めて見る顔に、私が彼のその表情をずっと見つめてしまっているとハッとしたように笑って私を抱き締めてきた。
「どうしたの?」
「いえ、何だか何てゆうのかな。嬉しいような恥ずかしいような気がしたんですけど。こうゆう時どんな顔していいか分からなくて」
「…そっか。」
それだけ言って、彼を抱き返すとギュウっと息が出来なくなるような強さで私を抱き締めてきた。